第57話 急襲の病院 ①

 その夜、マリアンヌの病室では、またもフーコが寝泊まりしているようだった。


 時刻は夜中の一時を回っている。


 病院内もこの時間になると静かなもので、受付とごく少数の看護師と看護婦、そして緊急事態に備えた医者が休憩室で寝転がっているというぐらいだ。


 その他では、定期的にロボットが病院周りを見て回っている。


「ぐっすりと眠っているようだな。では、睡眠ガスを噴射する。」


 No.4はNo.6と合流した後、ターゲットが完全に寝付くのを待ってから事を起こした。


 ガスは無色無臭であるが、変圧モニターでガスの四散状況がチェックできる。数分もしないうちに部屋中にガスは満ちたようだ。


「よし、それではこれより作戦行動を開始する。先ずは変装をして病院へ潜入。潜入ルートは事前に送っておいたが、ちゃんと頭に入っているな。」


「…問題ない。」


「このルートにある監視カメラは全て映像に切り替えるが、極力短い時間で済ませるべきだ。そして見回りロボットは15分毎に同じルートを通る。なので、15分以内に全てのことを済ませて病院を出るぞ。」


「…ああ、変装は必要か?」


「念の為だ。滅多にないことではあるが、急患が入ったりした場合、変装していれば、自然に病院から抜け出しやすいだろう。」


「…クックック、流石No.4さん。臆病で、か弱い身体をズル賢さで埋め合わせるっと。女らしいね…」


 No.4は後ろを向いているので表情は読めなかったが、一瞬身体が強張ったのをNo.6は見逃さなかった。


「…今は任務に集中しろ。余計な気を起こすなよ。」


「おお、冷静だ。昨日とは違うんだね〜。」


 舐めるような口調でNo.6はさらに挑発したが、No.4はこれを無視した。


(ったくよ〜、なんで俺がこんな女の下なんだよ。戦っても大して強くねえくせに。まあ、俺が上になった時には、こいつの身体は好きにさせてもらうか。)


 No.6は舌なめずりをした。


「…時間だ。No.6、任務前に一言言っておく。組織での評価というのは、単純な戦闘能力ではない。いかに与えられたミッションを完璧にこなすのかにかかっている。少なくとも、ボスは今回のミッションで、お前にその能力があるのかを測ろうとしている。一時の不注意や感情の起伏でそれを台無しにするな…先輩からのアドバイスだ。」


「お、おおぉぉ…ありがたーい、先輩からのアドバイス。あざ〜〜っす。」


 No.6はニヤニヤして顔を近づけてくる。


「先輩の仕事っぷり、近くで…ちか〜〜くで、観察させていただきますね。」


 No.4はこれを無視し、「これより、潜入を開始する」と言って、足早にルートを辿り始める。


 No.6は、ッチと舌を鳴らしてNo.4についていく。






 第58話『急襲の病院 ②』へと続く


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