第27話 CFA密会 ①

 前回の『ライフ』回収作戦から2年の月日が流れようとしていた。


 オムニ・ジェネシスでは2年前に回収した大量の『ライフ』とカオスファイター増産のおかげでかつてないほど経済活動が盛んになっていた。


 しかし、もっとも大きく世間を変えたのは軍であろう。


 たった1日の戦闘で数億オムニドルを稼いだ英雄たちの噂がカオスファイターラッシュを生み出していた。


 一年前にダテ・メンデスの指示で新設されたカオスファイティングアカデミー、通称CFAの合格倍率は50倍を超えんとする勢いだ。


「新校舎を併設して、10万人を受け入れられるようにしたのに、まだこんなに志願者が余ってるってすごいわね・・・」


 ダテ・メンデスを訪れていたグラシリアは腕を組みながら窓から見える入学希望者の列を眺めていた。


 ゲーム・オブ・ライフ公式大会である「ブラックワーム・アタック・チャンピオンシップ」第二回大会も盛況で、ゲームは前回の『ライフ』争奪の戦い以降一部改変されたがトップチームの実力は健在で<チーム・アスファルト・クラッシャーズ>が二連覇を果たした。


 ところが、二位にこのダテ・メンデスが創設した新設アカデミーのトップチーム<CFAトップチーム>が入り、世間はCFAの実力を知るところとなる。


 3位、4位にはそれぞれ<チーム・マルクス>、<チーム・エリア40>が入った。


 このようなこともあり、一攫千金を夢見てか、はたまたセカンドライフ、サードライフの生きがいとするつもりか、多くの者たちがCFAへと集まった。


 そして、コズモ船長の指揮の元、カオスファイター10万機製造の納入もそろそろという時期であった。


 10万機のカオスファイターをフル稼働する場合、当然パイロットも10万人必要となり、長期戦が見込まれるならば交代要員さえ必要となる。人数は不足しているぐらいだ。


 CFAは早くも絶頂期を迎えた。


 そんな最中で、あるにより1人の生徒が死亡した件に関して、第一区の代表者であるグラシリアが、第二区代表であるダテを訪れていた。


 ____「それで、プライベートで話したいことっていうのは、なんだ?」


 ダテが取り巻きたちを部屋から出した後、ソファに座ったグラシリアに目を向ける。


「チャーン・スグル、の件についてよ。」


 グラシリアが出した名前に、ダテは眉を細める。


「…あれは大変不幸な事故であった。アカデミーとしても対応に追われて、最近やっと落ち着いてきたところだ。でもそれがどうしたんだ。別にお前が関わるようなことでもないし、今更蒸し返すようなことでもなかろう。」


黒血ブラックブラッドが関わっているとしても?」


「!!」


 ダテは一瞬ゾッとする。


「どういう意味だ?あんなのは都市伝説じゃないのか。」


「オー、カモン!大地区を束ねるダテ・メンデスが、まさか本気でただの都市伝説だと思っているんじゃないでしょうね。」


「……」


 ダテは沈黙する。無理もない。本当に情報がない組織なのだ。20年ほど前に(コールドスリープ時を除く)噂になった程度の組織の名前を、まさかこんなところで聞くとは思わなかった。


「俺をかつごうとしている、という雰囲気ではないな?」


「私がそんなくだらないことをしたことがある?」


 いや、しょっちゅうしているだろ!とダテはツッコミを入れたかったが、大抵の場合は罪のない嘘で少しハラッとさせられて、それを見たグラシリアがゲラゲラ笑う程度の話だ。


「まて、色々と整理させろ。要するに、お前は黒血ブラックブラッドの存在に確証を持っていて、そいつらが今回のに関わっていると睨んでいて、そういうことを言うだけの根拠がある、ということなんだな。」


「話が早くて助かるわ。」


 グラシリアが真剣な顔でダテを見据える。その目はいつものギラつきを取り戻していた。


「___そうか。だがしかし、おいそれ分かった、とはならんぞ。詳しく聞かせてもらおうか。」


「当然だ。」


 グラシリアは立ち上がり、ダテに手書きの資料を渡す。


「今のご時世、紙とは、随分と周りくどいやり方をするな。」


「通信じゃ危ないかもしれないんだよ。この資料は。」


 ダテの目にも鷹を射抜く弓者のような鋭い眼差しが宿り始めていた。





 第28話 『CFA密会 ②』に続く


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