第22話 ライフ争奪戦 ①

 ゲーム・オブ・ライフ大会が終了し、500人の精鋭部隊が発足し、500機のカオスファイターが新たに生産された。


 一機生産するだけでも数億オムニドルすると言われているカオスファイターを500機である。だが、この政府の判断に反対する者はいなかった。


 宇宙戦争なんぞ空想の産物でしかなかったものが、現実味を帯びているのである。敗北はそのまま全滅を意味するということを、船の民はよくわかっていた。


 なかには、「これでは全然足りない!」と声高らかに主張する者たちも少なくなかった。もちろん、政府としても必要あらばさらに軍事強化に臨むことを一般には伝えてはいたが、過剰な軍事強化に反対な者たちがいたことも事実であった。


 第二の『ライフ』回収作戦の予定ももう間近に迫って来ていた。


 ビリー将軍率いるスペース軍にも熱が入る。


「整列!」


 ビリー将軍の声がトレーニングルームに響き渡る。軍直属の部隊20人が一列に並ぶ。


「もうじき実践である!敵は、予測された動きをなぞるただのプログラムではないことを肝に銘じておけ!」


「サー、イエス、サー!!」


 トレーニングルームの20人の息のあった返事が響き渡る。


「カオスファイターは一機だけでも数億ドルかかる高級品だ!」


「サー、イエス、サー!!」


「しかし、我々はどんな犠牲を払ってでも『ライフ』回収を優先とする!」


「サー、イエス、サー!!」


 ビリー将軍は、カツカツと足早に列の前を横切るように歩き始める。


「ブライアン!」


「イエス、サー!」


「今週の戦績は!」


「サー!78戦72勝6敗であります!」


「SS判定!けっこうだ!」


「コーリー!」


「イエス!サー!69戦59勝10敗であります!」


「S判定、だな。精進せよ!」


 ビリー将軍は足早にコツコツと歩き、一人一人に戦績を聞いていく。


「マグワイア!」


「イエス!サー!105戦70勝敗35敗であります!」


 ビリー将軍の足が止まる。


「・・・B+判定だな。」


 ビリー将軍はにやりとしたが、それを兵士たちが気づいたかはわからない。


「けっこう!精進せよ!」


 ビリー将軍に激励され、マグワイアの目には光が宿った。


「サー!イエス!サー!」


 口元が緩みそうなのを必死に我慢し、大きな声で返事をした。


 そんな時期、ハルモニア周辺の宇宙域に、木漏れ日のような光がチラチラと漏れるところが観測される。


 高度な技術をもたない文明から見れば謎の発光と理解されるかもしれないが、オムニ・ジェネシスのソナーはこれが何かを正確に捉えていた。


「船長、やはり中にあるのは『ライフ』です。それも、かなり大量です。」


 ミミは送られて来ているデータを随時確認している。


「そうか。それではやはり、やつらは『ライフ』を一箇所にまとめようとしているのだな。」


「はい、この周辺区域の『ライフ』をあそこに集めているようです!全てのブラックワームたちの動きを把握しているわけではありませんが、そのように動いているとみられます。そして、いくつかの『ライフ』をハルモニアへ持ち帰っているようですね。」


「ふむ・・・これは回収を急がねばなるまい。それにどうやら一箇所に集めてそれを守ろうという魂胆か。」


「はい、この『ライフ』の塊の周りには、無数のブラックワームがまるで『ライフ』を包み込むように群がっています。」


「まったく、一体やつらは何のために『ライフ』をそんなに守りたいのであろうな。少しぐらい分けてくれてもよいだろうが。」


 コズモがヘソを曲げたようなことを言うと、ミミはコズモがこんな調子で喋るのをあまり見たことがないので少し驚いた。


 この『ライフ』の塊とブラックワーム集団の情報は、すぐにビリー将軍の耳に届くことになる。


 直後に会議を開き、軍施設とは別でトレーニングを積んでいた、ゲーム・オブ・ライフ大会出の猛者たちを全員収集した。


様子見などなし。

総攻撃を仕掛けるのだ。


「実践である!」


大ホールにて、500人以上の精鋭たちの前でビリー将軍が開戦前の演説を始める。


いよいよ、第2となる『ライフ』回収作戦の始動である。





 第23話 『ライフ争奪戦 ②』へ続く


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