第53話『再会、愛する者たちへ』

 無事に滞在が確定した理不尽の面々は、ついさっきまで遺体であったこと等忘れて興奮していた。


[ ところで、腑に落ちない事がありましてね ]


 急に割って入った声は、地球を管轄にする管理者のものであった。

闇の中から、パルパとエミルの姿は消えていた。


[ 私も、あなた方の活躍を楽しませて頂いたのですが、ジュマさん!

あなた、いつから計画してました?

 これまで協力者を送るという事は、ここに限らず幾度と行われて来ました。

でも、元に戻った後に再び訪れたという話は一度もなかったのですよ。

 というのも、本来そういうことはできないはずなんです ]


(ジュマ)

「今回のやり方を見ての通り、どれか一つ欠けても成立しないんですよ。ですから、たまたまですよ」


[ そうでしょうか。

賢者と魔女からの戦争が終結した後、ジュマさんは魔王城を何度も訪れていましたよね。

そこで、知ったんじゃないですか?

対の指輪の存在と、魔王とエミルさんが互いに寄せる気持ちを…。


 そして、レベルアップでスキルか魔法をとなった時、パルパさんを止めて耳打ちをし、何か感付いたエミルさんもジュマさんに指示を仰ぎましたね。


 何と言いますか、全てが再訪するための布石になっているように感じると言いますか、少なくともこの方向へベクトルを操作していたように感じると言うか ]


(ジュマ)

「帰る時に方法を考えて持ち出す魔法やアイテムを指示したのは間違いないですが、リスクのある方法しか見付けられませんでしたし、買い被りすぎですよ」


[ なるほど、ではそういうことにしておきましょう。

しかし、ジュマさん、最後まで本当に楽しませて頂いて、心より天晴れでした。

今後の活躍も楽しみにしています ]


 再びパルパとエミルがそこにいて、この世界の管理者のお礼と別れが聞こえ、闇は晴れていった。


 パルパとジュマは、エミルと魔王に一旦帰る事を告げ、各々の家へと散っていった。

 その別れ際


(ジュマ)

「エミル!ありがとな」


(エミル)

「…おぅ!」


 その様子を魔王は、少し羨ましく感じていた。



 管理者の空間では、管理者が「フフリ」と笑いながら頭をかいていた。

モニターからは、かの世界からの聞き覚えのある声が聞こえている。

 各々の家で家族が抱き合う姿を確認した管理者は、始末書を手に席を立った。


[ 皆さん、お幸せに… ]


── 完 ──





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不正に攻略!それが彼らの日常です 指月譬 @6ji_kack

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