第106話 日本の食べ物は大好きだが、
前回の話で、妻は日本の食生活が大好きだったことを書いた。もう一つ忘れていたのは、弁当、特に駅弁、だった。列車の旅には、毎回弁当というほどになっていた(サンドイッチやバーガーではなく)。長野へ行った時は峠の釜飯を買って食べ、容器が気に入ったと、持ち帰れされたのも覚えている。容器と言えば、住んでいた家の近くにあったケーキ屋は、いろいろな陶器のケース(皿?)に入ったケーキを売っていた。クリスマス、ハロウィーン、感謝祭(ターキー)や季節にあったデザインの容器がのケーキが常にあった。ケーキも良いが、この可愛い皿に惹かれて(騙されて)、妻は、ここでよくケーキを買ったものだった。その近くにあった不二家にも良くお世話になった。その他、妻は本当に日本の食べ物と食べ物屋が大好きだった。
しかし、そんな妻にも苦手なものはあった。まず。妻は苦いものを口に入れたくない。おかげで、苦瓜は絶対に食べない。ゴーヤチャンプルは、何度もいろいろな人から勧められたが、一度も口にはしなかった。あれは毒が入っているに違いないと言っていた。抹茶なら、アイスクリームなどに入っていれば少しはいけたし、ダークチョコレートも、苦いが少しは食べていたが、苦瓜はだめだった。
妻は、焼き鳥は好きだったのだが、高級焼き鳥店で出て来た半生(ほぼ生)の鳥胸肉の焼き鳥と鳥刺は絶対に食べなかった。半生のやつは、2度焼き直して、完全に生で無くなったのを確認してから食べた。作ってくれた料理人はかなり不満そうだった。宗教のせいだとか言っておけばよかったかもしれない。鶏皮も人が食べrものではないと拒否したし、生系統は全く食べなかった。実は今でも、肉は血が出るようなのは食べない。ステーキでもミディアムウエルくらいまで焼かないと食べない。ローストビーフも赤いのはいやらしい。昔、私が今勤めている大学にいた可愛いアルバニア人の女子大生(今では、米国へ帰化して、国立研究所で国家機密の研究をしている)も、妻と同じ様に、半生の肉は食べなかった。一緒にバーベキューをすると、必ず良く焼けるまでまってからでないと口にしなかった。肉片を切って、血が出ると、未だだと言い張り、これを何度か繰り返す。子供の頃、肉にあたり、かなり苦しんだので、よく焼けた肉しか食べられないと言っていた。妻に、肉を十分焼いてから食べるのは、後進国の印だと言って、二人を怒らせていた。妻の兄弟も同じ様に半生の肉を食べないのは、義母のせいだろう。
他にも、妻が食べない意外な食品がある。それは、小豆の餡子。あんこは甘すぎて口合わないというのだ。お汁粉も大福も餡子味はあまり食べない。私はあんぱんが好きで、時々、アジアマーケットで買っている(大福も)。妻は、クリームパンを主に買っている(カレーパンもあれば買う)。時々、私と、あんぱんを半分こにして食べる時があるが、餡は少しか食べず、捨てている(これは犯罪行為だと私はいうのだが)。もちろん、小倉トーストも食べない。しかし、トーストにジャムを塗って食べるし。メイプルシロオップをかけた甘っちょろいパンケーキやワッフルとかは喜んで食べている。
そして、妻が絶対に食べない食べ物が、フグである。猛毒で、毎年、何人かがフグを食べて死んでいるという話を聞いていたので、偏見が強く、怖くて仕方がないらしい。フグは、私が幼い頃は、あまり出会わなかったので、食べた記憶がそんなにない。しかし。九十年代に帰国してみたら、養殖物のフグは普通のスーパーでも売っていた。妻は絶対にそのパッケージにも触らなかった。しかし、一度、知らずにフグを食べたことがあった。それは、妻が一人で実家に泊まりに行き、私の母と共に新幹線を利用して帰って来た時のことだった。広島駅で、母が同じ弁当を二つ買い、車内でその弁当を二人で食べたのだった。食べ終わって、包装紙を捨てている間に、フグの絵があることに気づいた妻は、母に、この弁当にはフグが入っていたのかと聞いた。母はフグが入っていたと妻に伝えた。毒について少し話をしたが、妻の心配など、母には届かなかった。帰宅して、私に、母が彼女を暗殺しようとしていると言い出したので、なんのことかと思ったら、フグの入った弁当を食べさせられたと苦情を言い出した。母にその話をすると、母は笑って相手にもしなかった。毒の効果が遅れて出るかもしれないと、心配する妻だったが、なんの異変もなかった。しかし、妻はこの暗殺未遂事件として、今でも忘れていない。私は。「母が妻を殺そうと思っていたのなら、妻はもうとっくの昔に死んでいる。」と告げたのも覚えている。私の母は猛烈な人間なので、そこは妻も息子も私に同意する(爆笑)のが我が家の定番になっている。
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