第104話 妻、大学生にナンパされそうになる。

私が日本の大学で働き始めて間もない頃、妻がキャンパスへやって来た。午前中、大学の近くで妻も用事があったので、一緒に昼食へ行く事にしていた。私は用事があったので、それを先に処理する為、妻には待って貰っていた。私のオフィスは何もないつまらない部屋なので、妻は外で時間を潰す事にして、講堂の前で、ベンチに座って、大学にの風景を眺めていた。すると、学生が近づいて来て、妻に話しかけ出した。会話は英語に少し日本語が混じったものだったが、相手はできるだけの英語で話してきた。妻は、この学生は英語の練習でもしたいにだろうと思って、暇つぶしに会話を続けていた。数分くらい話して、向こうは、又会う為に連絡先を聞いてきた。妻は、英会話の練習の為に又会いたいのだろうと思ったが、最初に住んでいた宿舎は街の反対側なので、会えないだろうと伝えた。すると、街の中心街で、食事か映画でも見る為に会えるとか言い出した。妻は、そこまでして英会話の練習をしたいのかと思ったが、難しいと伝えた。その学生は、その場で、連絡先を聞き出すのは諦めた様だったが、又キャンパスに来るのかと聞いてきたので、夫が教官なので、来る機会はあると思うと言ったら、その学生はとても驚いた顔をして、I’m sorry.とI didn’t know.を何度も繰り返して去って行った。それまで、自分が既婚者で夫がこの大学に勤めていると言ってなかったのか、相手が聞いていなかったのかはわからなかったが、学生の慌て振りを見て、どうやら、ナンパされていたのだと気づいた妻は笑い出した。そして、私のオフィスまでやって来て、今までの事を話してくれた。そこで、私は、ちゃんと、30超えても若く見えるので、10歳ほど年下の男に言い寄られるんだと褒めておいた。ここで何もなかった様に無視したり、日本人は白人の年齢推定が出来るないとか言うと、とんでもない仕打ちに合う事間違いなかったので。(妻が連絡先を交換していたら、この学生に電話して、お前は何を企んでいるのかと問い詰めて、学科へ抗議に行くとか言って脅す事ができたのにという考えが頭の中を過ったのは秘密。)


妻は、日本にいた間、時々、知らない男から声をかけられる事はあったが、大体そう言う時は、言葉がわからないふりをしていた。私が近くにいても、まさか知り合いとは思っていないで話しかけてくる時もあった。地下鉄での話しは以前書いたが、妻が私に話しかけて、連れだと示すと、私の見た目がヤバかったので、殆んど似た様な結果(相手が逃げ出す)になっていた。どう見ても、白人の女を連れたヤ⚫︎ザだった。それがカルトへの勧誘で、私も一緒に誘われることもあったが。何で、言葉も通じない外国人女性を勧誘するのかは分からなかった。

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