第102話 妻が日本へ行きたくなかった理由2。
昨日の妻が日本へ行くのを躊躇っていたもう一つの理由を書いていなかった。自分の家族との再構築と日本での専業主婦になる事の他にもう一つ、大事な事を書き忘れていた。それは、医療だった。妻は、日本へ行く前に、ファイブロミアルギア(FM、線維筋痛症)だと言う診察を受けていた。全身に痛みが出る可能性のある病気で、米国でも新たに承認された症状だった。ストレスが原因であろうと言われているが、証明はされていない。悪化すると、痛みは酷く、ちょっとした刺激でも、激痛につながると言う厄介な病気だった。日本でも最近は認められており、カクヨムのフォローしている方もこれで苦しまれている。大金をかけて色々と検査しても、何の異常も出てこないのが特徴でもある。妻は、この他に、カウンセリングを受けており、ある薬を処方されていた。この薬が、珍しい物でもあり、日本でも処方してもらえるのかも定かではなかった。勿論、英語でのカウンセリングが日本でどれだけできるかも心配だった(暴走する夫に喝を入れるのは誰だ?)。
結局、大学病院の紹介で、英語のできる精神科の先生にカウンセリングをしてもらう事になった。この先生は、ファイブロミアルギアのことも知っていて、例の珍しい薬も処方してくれた。英語はそれほど上手くなかったが、カウンセリングも平穏に変わりなく(良くもならず悪くもならずという感じで)行われていた。しかし、その先生もクリニックを畳まれたので、次には、もっと若い大学病院の女性の先生に変わった。この先生は、イギリスに何年か住んでいた経験があって、英語はよく通じていた。おかげで、妻は少しこの先生に依存した状態になってしまった。しかし、この先生も、妻の頑固さには敵わないところもあった。ある時期、私とこの先生が、妻の症状に関して会話をしているのを見て、この先生が私に気があると勘違いしてしまったこともあった。しかし、その先生は既婚者で、妻に、私は彼女のタイプではないと告げたと聞いた。私としては、二人の間で、なんで、話が変な方向に向かっているのかわからなかった。カウンセリングがうまく行っていないのだろうかと疑ってしまった。
この大学病院に通うようになってから、同じ日に通院していた年上の女性と仲良くなった。一人暮らしになって不安でたまらなくて、カウンセリングに通っていたという。妻はこの女性と仲良くなり、しばらくして彼女が老人ホームのような施設に入ったと知り、時々、訪問に行く様になった。もちろん、私が通訳でついて行った。その女性の施設へ行くと、白人の女性が遊びにやってくるので、入居者もスタッフも驚いていた。女性は、息子がいるが、東京で家族と暮らしていて、なかなか会いに来てくれないいので、妻がやってくるのが嬉しかったようだった。なぜかおばちゃんに好かれる妻だった。日本に行って、妻がおばちゃんマグネットになったのは確かだ。
日本滞在中はそれほどひどくなかったファイブロミアルギア(FM、線維筋痛症)も、今ではかなり発展してしまい、いつも、体のどこかの痛みを訴えている。私は、ヨガや座禅でもやって心を癒してほしいのだが、そういう精神統一的なことが、今は全くできないのだそうだ。テコンドーをやっていた時期に座禅を少しやっていたが、頭を空っぽにしろと言ってもできないと言っていた。せいぜい15分程度で諦めていた。私は空手の時から、1−2時間座禅を組むのに慣れていたが、妻にもっと長い座禅を強要してみればよかったと思っている。今はもう5分も無理らしい。
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