第90話 ハーレーに乗る女子と二股の勧め。
プラムに行った後も、私と妻は付き合いを続けていた。デートと言えば、映画、ボーリング、ローラースケートや、ただ食事に行く事と、以前とそれほど変わりない付き合いをしていた。その頃、私は一人の学生と一緒に寝室が二つあるアパートへ引っ越していたので、妻も時々遊びに来ていた。妻は、プラム前にも、同じルームメイトと暮らしていた寮の部屋にも何度か遊びに来た事もあった。
アパートへ引っ越す前、私は大学のサークルの様な空手クラブで稽古しており、そこで知り合いになった妻と同じくらいの年齢の女の子がいた。ある日、キャンパスを歩いていると、ハーレーがでかい音をたてて、私の目に前に止まった。乗っていたのは、小柄な女性で、よく見ると空手クラブの女の子だった。そこで、目立ちながら、少し話をして、彼女は、又でかい排気音を残して去って行った。週末、次の稽古前に、あの時の話をして、ハーレーに乗っているのに驚いたことを告げた。稽古後、シカゴから来ていた師範代と一緒にピザを食べに出かける事になったが、私は妻との約束があったので、辞退して帰った。妻とのデートの後、寮へ帰ると、一緒のクラブの友人に出会って、彼から、なぜ私があのハーレー女子をデートに誘われないのかと、彼女から訊かれたと言われた。友人は、物理専攻は工学部の学生よりももっと忙しいから時間がないのではとごまかしたと言っていた。私はガールフレンドがいるので、彼女とは付き合えないと彼に言ったら、その友人は二股を勧めてきた。彼は、その頃は、婚約したガールフレンドがいたが、今の婚約者に出会う前は、二股も三又、それ以上ももかけていたと言い出した。高校生時代は、毎週異なる女の子と出かけては、事に及んでいたとか。彼が言うには、ハーレーに乗る様な女は直ぐにやらせてくれるので、婚約者がいなかったら、彼が彼女をデートに誘っただろうと言った。私は稽古の時に、彼女と良くパートナーになっていたが、それは、クラブに通い始めた時期が同じだったと言うだけの理由だった。初心者の彼女へは色々とアドバイスとかもしていたが、向こうに気があるとは全く思っていなかった。鈍感な男である。
結局、このハーレーの彼女には、やんわりと私にはガールフレンドがいる事を伝えた。その後、彼女はクラブ内の別な学生と付き合い始めたので、それで良かったと思う。彼女は学生ではなく、大学で芝生の管理する部門で働いていた。この大学も他の米国の大学と同じく、芝生の面積が広く、その管理には、かなりの人材を必要としていた。彼女は1番の新米で、他は皆おじさん達だったらしかったが、セクハラもそんなに問題はなく、皆んなが彼女の父親的な存在で、とても良い仕事環境だと言っていた。
実は、しばらくして、大学のボーリング場で、妻と一緒にいた時にこのハーレー女子に出会い、両者を紹介したことがあった。火花は散らなかった。別れた後、妻に、友人から聞いた、彼女が私にデートを申し込んで欲しかったと言う話をした。この友人は二股を勧めていた事も話したら、妻はその友人に対する怒りを表したが、私が二股しなくて良かったとも言った。私の奪い合いで喧嘩になったらハーレーに乗っている女子だと、妻がコテンパンにされていたかも知れないからだと言った。私は、空手クラブで、普段、このクラブでは教えない様な実践的な(正当な空手の流派では卑怯と言われるかもしれない)護身術系のやり方も、このハーレー女子に少し教えていたと、妻に告げると、他の女を使って妻に体罰でも加えさようと企んでいたのかと、冗談ぽく叱られた。そんなことは全く考えもしなったのだが。2メートルもある様な巨漢に対しても、真っ向から、受けをする様に教えていたクラブの教え方が気に入らなかっただけだったのだ。後に、この空手クラブでも、護身術を身に付けたいと言う女性メンバーが増えて、シカゴから来ていた師範代(中国系米国人)の妹がそれを教えに来始めた。彼女も黒帯だったが、100kgの兄と違い、小柄な彼女は、筋力に劣る女性(女性(筋力のない男でも同じだが)が男に対してどう戦うかをちゃんと考えていたのは良い思った。米国は治安が悪く、女性の護身術が流行り初めていた時期だった。
その後、バイクに乗る女性を見かけると、このハーレーに乗っていた女の子を私が誑かしたと、妻がよく言っていた。私はあの馬鹿でかいハーレーは好きではなく、ヤマハのDT250と言うダートバイクに乗っていたのだが、妻には同じモーターサイクルにしか思えなかった様だったらしく、彼女と付き合っていれば一緒にツーリングとかいけたのにとか嫌味も言われた事もあったが、そのうち忘れられた。妻の従兄がハーレーが大好きで、ガールフレンドと長いツーリングに出かけると聞いて、妻は、とてもじゃないが、バイクの長旅、いや30分も乗ってられないと言っていた。実は、妻は、私のツーストロークで回転数が高くてうるさいダートバイクの後ろに乗ったことしかなく、エンジンの回転数が低いフォーストロークのツーリングバイクの乗り心地を知らなかった(今でも知らない)。
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