第74話 小学生で逮捕されそうになった

実は、私、犯罪を犯して逮捕されそうになったことがると、家族や友人に話しています。まあ、大人でなかったので、逮捕ではなく、保護/補導なんでしょうが。何をやらかしたかっと言うと、傷害事件等ではなく、公職選挙法違反でした。


小学校5年生の時、選挙のための選挙ポスター掲示板が、通学路の側に設置された。その前の晩に、私の父と祖母(私を溺愛してくれる、唯一の人類)がある党の王補者達の話をしているのを聞いていた。父と祖母は、その系統の党(複数)が気に入らなかったようだった。小学校五年生にもなれば、保守とそうでない社会主義や共産主義を支持する党があって、政治的に現在も続く政党と対立しているくらいは知っていた。父と祖母は、宗教団体を基にする党も胡散臭いと思っていた。そして、私は父と祖母が好かない政党の候補者には負の感情を持っていたのだと思う。


帰宅の路に、先に帰っていた女子達がポスターを見て、ハゲとかヒゲとか言って笑っていた。私も、それらのポスターを見ると、例の政党の候補者達のポスターがあるのを確認できた。なぜか、ちょうどその時、私の手には泥団子を何個か握っていた。そこで、私は、その泥団子を、特定の党の候補らのポスターに投げつけた。すると、6年生の女の子が、それはやってはいけない行為だと私を注意した。そう言われると、今度は私の対決心が燃え出した。ポスターのすぐ前まで行き、ランドセルに入っていた鉛筆で、候補者の顔にひげや鼻水を描きこんだ。そして、6年生女子にまた叱られた。すると、そこへ、6年生の男子が何人か通りかかった。その中の、アホな(私と同じくらい馬鹿なと読んでくださっても結構です)二人が、私が悪さをしたポスターを見て、今度は、稲干のための稲架(はさ)のやぐらを作るための杭を見つけてきて、ポスターを激しく突してしまった。おかげで、何枚かのポスターは破れてしまった。それを見ると、騒いでいた子供集団が、今度は、「あーあ、やっちまった!」という感じで、しらけてしまい、皆、その場から去り、帰路に着いた。その後の私は、家に帰ってから、別に何も家族へは告げず、平和な1日が終わった。


しかし、翌日、私と一緒に選挙ポスターを傷つけた数人は、校長室へ呼び出された。校長先生には、厳しく説教されたが、その後、警察の駐在さんがやってきて、私たちに説教すると言われた。学校が終わり、またもや、校長室へ呼ばれて、駐在さんに説教された。選挙ポスターを傷つけると、例え酔っ払っていたとしても、大人なら逮捕されるとか、言われ、私達がやったことも、次は子供でも、牢屋に入ってもらうかもと脅された(うちの街の牢屋は、入る人が少ないので、駐在さんは寂しいとかも言っていた)。普段から、素行の悪かった私は、かなり焦ってしまった。母からは、警察に突き出すとか脅されていたのも、その理由だった(それくらい脅さないと、普通の罰では、私には効果がないと母は考えていたようだったので)。ビビっているのを悟られない様に懸命に耐えた私であった。6年生の二人を、頭を垂れていた。


家に帰ると、学校から報告は届いていたが、もうやるなとは言われたが、特別な罰は受けなかった。私が父と祖母の会話を聞いて、悪い奴をやっつけたつもりでいたと言う情報も家に届いていて、二人は、母から少しだけ注意されていた。普段は、人の悪口を言わない、祖母なので、私は、ちょっと間に受けてしまった。祖母は戦争未亡人なので、そっちの話は、やはり保守だった。祖母はあまり口にしなかったが、同じ戦争未亡人の祖母の妹は、靖国神社参拝に反対する政治家とかは大嫌いだった。私の自身の考え方は、反保守だったのだが(大学へ行って、機動隊と角材で殴り合いをしたいと思っていた私は、反社会とも言えたかもしれない?)、ばあちゃんを守るのが、自分の役割だと思っていた。


無事に皆、警察のお世話にならずに、済んだので、めでたしと言うことにしておこう。その後、新しく貼り直された選挙ポスターに、小石を投げつけられた様な跡があったのは、誰の仕業かを知るものはいない。

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