第57話 サンホゼ カリフォルニア II

前回と同じく、サンホゼ(昔からの表現はサンノゼ)の話。特にジャパンタウンの日本語学校を通してであった日系人の方達についての話。まずは、その日本語学校に子供を連れてきている人たちの多くは、母親である日本人女性達だった。しかし、そこには、二つのグループがあった。一つは、駐在人の奥さん達で、彼女らの子供達は、いずれ日本へ帰り、日本の義務教育に沿った学校へ転入する予定の子達だった。週5日間は、米国の学校へ通い、土曜の1日だけで、義務教育の範囲を全てカバーしようとしていた。もちろん、家で、長い時間自習していたのだろう。高校留学中に、受験勉強もするとか言って、教科書や参考書を持って来たが、ほぼ開かなかった私は、この子達の努力には頭があがらない。もう一つのグループは、外国人と結婚して、シリコンバレーへ住む様になった日本人女性が、ハーフの子供達に日本語を覚え、他の教科も少し身につけて欲しいと連れて来ていた。実は、第三のグループがあり、それは、日系2世・3世のグループだった。このお寺のメンバーでもあり、日曜日の朝の礼拝に参加している人たちやその家族だった。日系人の中には、第二次世界大戦中の収容所から出て来た際に、白人化しようと、キリスト教に改宗した者も多かったが、それに対抗すベきと、仏教のお寺も、日曜日の朝に礼拝を始める者も多かった。教会の礼拝堂のような建物もあった(参加したことがなかったので、詳しいことは不明)。戦前から、白人米国人達に、キリスト教信者と同じ様に、日曜日の朝は、ブッディストチャーチに行くと言いたかった日系人は多かった為、日曜朝の礼拝は行っていたらしい。


そのグループの中で、私は浮いていた。他に、若い日系米国人で、日本人の奥さんをもらっていた人も一人いたが、この学校に、白人女性と結婚していた日本人の男はいなかった。妻が、私に毎週、学校について来いと言うし、その後、ジャパンタウンで昼食を食べたり、日本食料品を買ったりすることも多かったので、ほぼ毎週この学校へやって来ていた。暇なので、図書委員になれと住職に言われたが、仕事はあまり無く、図書室に座って、他の日本人の奥さん達と無駄話をしていた時間も長かった。そこで、仲良くなった二人の奥さん達には、理系の旦那さんがいた。一人は、慶應大学出身で、そこで大学院生だったスエーデン人の旦那さんと出会ったそうだった。そして、大学院を終えた旦那さんは日本のコンピューター大手の会社で、彼女の父の部下になった。やがて結婚した二人は、日本でもスエーデンでもなく、シリコンバレーに移住することを決めて、旦那さんはソ○ーのシリコンバレイー現地法人の重役だった。今でも覚えているのが、お嬢さん育ちでも、彼女はブランド物など気にしないのに、旦那さんは、下着からソックスまで、ラルフローレンのポロ製品しか着用しないと言っていたことだ。彼女にはワンパクな小学校低学年の息子がいたが、私の息子は中学生だったので、それほど、プライベートで関わることはなかった。彼女は私よりも少し若かったと思う。


もう一人の女性は、私と同じくらいの年齢で、日本人らしからぬ、お淑やかの反対の性格で、活発な女性だった。彼女は北海道出身で、両親とも学校の先生で、転勤のため、北海道の中でいろんなところを移り住んだ経験があった。しかし、本人曰く、学校の出来は良くなく、とんでもないことをして、両親を困らせていたとか。特に、教師の子供らしくはしていなかったとか。そして、同棲する一歩手前まで行ったボーイフレンドが、米国の大学院へ留学したので、一応、OLをしていた彼女は、お金を貯めて、そのボーイフレンドに会いに来た。すると、そのボーイフレンドは、米国人女性と既に結婚していた。しかし、住むところがないので、しばらくは元ボーイフレンドとその奥さんのアパートに居候した。元カレの研究室のメンバーは付き合いが親密で、彼女はそのグループに取り込んでもらった。ピクニックやハイキング、キャンプまで一緒にしていた。やがて、グループのメンバーのアパートへ転がり込んでもいた。三ヶ月の観光ビザが切れて、帰国しなくてはならなくなり、帰りたくないと訴えていたら、グループ内のドイツ人留学生に、彼と結婚したら帰国しなくてもよくなるから、結婚しないかとプロポーズされ、それを受け入れたと話してくれた。私よりいい加減な結婚をした人がいたと嬉しくなった。彼女の旦那さんは、電子工学の私の研究分野に少し近いことをやっていて、出会った頃には、シリコンバレーにある半導体製造装置の大手で、装置開発の責任者であった。時々、家族で彼らの家へ遊びにくこともあった。学校で悪さをしてよく叱られた話とか、彼女と私は話がよくあった。長くなったので、彼女の話は次回にも載せます。

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