第53話 The difference between men and boys

1時間ほど離れた街から、中学校の理科の先生が、女子生徒を四人連れて見学に来た。素人に私の管理している分析装置を簡単に説明する。その話は、米国でも、誰もが知っている任天堂が、私の幼い頃は、ゲーム機など作っていなかったため、その頃の私は、毎日、裏山と家の前の川を走り回っていた生い立ちから始まる。家の周りの環境を知り尽くした私でも、時々、見知らぬ物体に出会うこともあった。ここで、来客に、見知らぬ物体に山の奥で出会ったらどうするか聞く。色々な意見はあるが、私はいつも小石を拾って、遠くから投げつけていた。石がカーンと跳ね返ると、それは硬いもの、無機質の物体である可能性が高かった。石がザクッとのめり込むと、柔らかい物だ。もし、ザクッの後に、「ガオー!」と帰ってきたら、踵を返して、走って逃げる。裏山には、狸や狐に、猪や日本鹿がいた。熊の目撃情報も最近はある。そして、私は身長160cmくらいのニホンザルに出会ったことがもあった。話は戻って、私の仕事の話になる。私の管理している装置は、イオン、電子、光子(光やx線を含む電磁波)の極小さな粒子を試料にぶつけて、跳ね返ってくるもの(これまた極小の粒子)を検出して、その材料が何であるかを分析している。試料がどんな原子でできているのかを知るためには、小石を投げつけても余り良い反応はないので、かなり小さな「石」の代わりである粒子をぶつける。しかし、この小さな粒子である電子やx線は、コントロールされた環境下で発生と検出を行わないと、その物質の情報は得られない。ただむやみにx線を発生させているのは危険でもある。高エネルギーの電子を試料に向けて照射すると、x線が発生する可能性も高い。従って、私が扱ってている分析装置は、安全性にも十分な注意を払う必要がある。おかげで、装置は、複雑で、かなり高価なものが多い。最近は、コンピューターで制御するため、使いやすさは増したが、それも価格が上がる理由にもなっている。そして、紹介している装置の値段が3千万円から2億円($200,000 $1,500,000)くらいもすると伝える。この後での締めの言葉は、私のやっていることは、幼い頃の小石を投げつけて、その物の性質を探っていたのと全く変わっていない。ただ、ナノの領域の材料を探るには、ナノよりも小さな「石」が必要で、その小さな石を投げる装置は高額になる。最後に、皆に聞く、Do you know the difference between men and boys? 答えは、It's the prices of their toys. (大人(男)と子供(少年)の違いはなにか?答えは、おもちゃの価格である。)米国で時々使われる表現だが、普段は、スポーツカーなどにお金をかける大人の男のことを言う。ひょっとしたら、若い世代は馴染みがないかもしれない。


こうやって、この歳になっても、仕事と言って、高額な装置で遊んで給料をもらっていると言うのが、妻にバレるとかなりやばいことになりかねない。辛い仕事を頑張って生活費を稼いでいるんだと言っても、余り信じてくれていないが、これを聞くともっとひどくなると思う。

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