第52話 カルチャーショック、食習慣

まず、18歳で米国へ渡ってきた私にとっての最初のカルチャーショックは、朝食から始まった。羽田空港を夜出て、LAX、ロスアンジェルスへ着いたのは昼過ぎ頃だったと思う。そして、私達は、その夜までロスに滞在し、それぞれの連絡便に乗った。同じ高校から留学していた2年生と同じ便で、ラスベガス、アルアバカーキ(ニューメキシコ州)を経由してシカゴに、早朝に着いた。そこで、ホストファミリーと高校のアドバイザーの先生に出迎えてもらった。着いたのは朝sの6時頃だったが、入管を済まして出てきたのは7時くらいだったと思う。ここまで、丸2日ほど寝てなかったと思う。


ホストファミリーは、朝の4時起きくらいで、空港まで来てくれたので、皆朝食はまだだったので、朝食を食べに行くことになった。行ったのは、パンケーキハウスだったが、皆、パンケーキに甘いシロップをかけて食べていた。私もよくわからなかったが、ポテトパンケーキを注文した。みんなを真似て、メープルシロップをかけて食べ始めたが、半分も食べられなかった。付いて出てきたソーセージとスクランブルエッグは食べられたが、甘いものをおやつ以外に食べる習慣のなかった私には、シロップ付きのパンケーキは無理だった。


そして、朝食後、無事に、ホストファミリーの家に付き、持ってきたスーツケースを開けて、お土産を渡しながら眠りだしたらしく、まずは寝るようにベッドルームへ連れて行かれた。そして、その日は、昼食も夕飯も取らずに、ずっと寝ていたらしく、目が覚めたのは、早朝の3時か4時頃だった。その時、地響きがするような音と共に、地震でベッドが揺れているように感じた。私が寝ていたのは、ホストファミリーん二人の兄弟と同じ部屋にあったベッドだったが、その二人は起きていなかったので、そのまま、ベッドで横たわっていた。6時頃には、誰かが起きている気配がしたので、起き上がった。一階に降りて行くと、ホストマザーが朝食を準備していた。トーストを焼いているが、パンケーキが良かったかと聞かれて、トーストの方が良いと即答した。やがて、家族も起きてきて、朝食になった。早朝に地震があったのかと聞いたら、ここは地震なんて感じたことはないと言われた。ホストファーザーが、きっと、近くにある鉄道のトウモロコシを輸送する貨物列車の音と揺れを感じたのだろうと言った。その後、確かに、列車が来ると、地鳴りのような音は聞こえていたので、きっとそうだったのだろう。しかし、それ以降、貨物列車に起こされることはなかった。


朝食に、シリアルを食べる米国人は多く、ホストファミリーでも、子供達は、時々、シリアルのミルクをかけただけの朝食を済まして学校に駆けて行っていた。私の昼食は、学校のキャフェテリアでただでだしてくれたが、あまり美味しい昼食ではなかった。ホットドックやハンバーガー、ゴムっぽいピザの選択があり、時々、フリアドチキンとかもローストポークも出てきた。しかし、必ずと言って良いほど、米国人はデザートを食べるので、昼食にも、チョコレートプリンやゼリー、最低でも、果物類があった。うどんやラーメン、カレーとかの一品がメインだった、私の高校の昼食とはかなり異なっていた。もちろん、弁当とも。


米国では、家族や友人が集まって、ポットラックという習慣があり、私のホストファミリーも、このイベントへ参加したり、親戚や友人家族がやってくることが多かった。ポットラックとは、その食事会に参加するファミリーが、自分達の得意な料理を一つ大量に作って集まり、それが全部揃うと、かなりの種類の食事が並ぶことになる。たいてい、誰が何を持ってくるかは、ホストがコーディネートする。今会はサラダ類を頼むとか、メインの一つとなる肉の料理を頼むとか言われる。後に、今いるところへ引っ越してきてから出会った日本人の方達の間でも、同じような形で、感謝祭、クリスマス、復活祭(イースター)の食事会が開かれていた。時々、ターキーを依頼され、前日から準備する必要もあった。


しかし、ここでも、最初は、最初、甘いものをよく食べる習慣にやられた思い出がある。サラダ系統に、甘ーいマシュマロの入ったフルーツサラダが、必ずと言って良いほど入っていた。そして、キャロットサラダというものも、レーズンが入っていて甘かった。どっちもマヨネーズ入りなのだ。これらも、食べられないことはないので、少しは取って食べようとしたが、ここで問題になるのは、このぽっとラックでは、たいてい、大皿を一つしか与えられないのだ。ということは、メインなディッシュである、肉系統(ローストビーフやフィライドチキン等)にマッシュトポテトにグレイビーソースかけたもの、グリーンビーンズを煮詰めたものや、ドレッシング*と言って古いパンに出汁(肉系)と野菜などを入れてベークした日本だったら粉物に近いようなもの等々を同じ大皿に盛って食べるのだ。これに、サラダも含めるのが習慣だったが、レタスのサラダでも、この種類の料理と混ぜたくない私に取って、甘い系のサラダが混ざるのは恐怖だった。誰にも気づかれないように、肉汁がこのマシュマロサラダや生野菜に流れてこないように、頑張っていたものだった。


しかし、それも、9ヶ月して、帰る頃には、それほど気にならなくなっていた。再度、渡米して、大学へ行きはいめた後には、全く気にせず、皿を大盛りにして、どれだけ料理を一皿に盛れるかを気にするようになった。慣れとは恐ろしいものだ。昨日は、その甘くなってしまう、レーズンの入ったブロッコリサラダと作ってしまった。日本に住んだおかげで、今の我が家では、大皿一つに守る習慣はなくなって、妻は小皿をたくさん出してくるが、逆に皿を洗う(皿洗器に詰める)私としては、皿の数を減らす方が良いのだが、もちろん、押し切られる。妻は、ステーキから漏れ出る、血が嫌でたまらないらしい。


*ここで、ターキーとドレッシングを紹介しているページをリンクしておく。

https://noreserv.exblog.jp/16959988/

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