第48話 基礎研究の楽しさ
今日は、妻が熱を出したので、休みです。私は有給休暇と病気休暇が取れますが、家族が病気になると病気休暇が取れます。大抵、病気休暇は年末に余っているので、もう時期になると、長くとっても問題はありません。家からリモートで行おうと思っていた作業ができなくなり、ちょっと時間があるので、もう少し基礎研について書いてみます。
製品開発とかいうゴールもなく、ただ、誰もやったこのない実験を成し遂げるのが目標の研究を給料をもらってやれるのは、正直、贅沢だと思います。博士課程を修了した者は、皆、その前人未到を成し遂げているわけですが、その後も、同じような研究に携わっていけるのは、ある意味で特権です。論文を読み、学科に参加して、他の研究者達と意見を交換し、自分の興味のある分野で。どこまで研究がするんでいるかを把握し、そして、何ができていないかを知る。前人未到の実験をどうすれば成し遂げ羅っるのか?それとも、前人未到の現象の解明を、どんな実験をもって解決できるかを考える。どのような実験装置が必要なのか?そして、その実験装置は実在するもか、それとも、自分でデザインして組み立て上げるのか?
私が大学院生の間は、半分以上の院生が、自分の装置を組み立てて、博士課程を修了していました。おかげで、何年もかけて装置を組み立て、ちょっとした実験で卒業していった学生の後釜が、多くの実験を行い、装置を作った人間よりの有名になることはしばしばありました。自分んで開発した装置で、その前人未到の実験を行い、今まで誰も知らなかった結果を、世界中で自分だけが知っている経験ができるのです。科学者の人生で一番の喜びかもしれません。(医療関連等の研究に関わっている科学者には、後に、この研究が多くの人の命を救うことになるというような喜びもあるでしょうが。)
初期の私の研究は、個体表面上の原子同士がどのような相互作用の基で挙動しているのかを突き止めるのが目的でした。個々の原子がどう動くのかは、それまでの私の教授の研究で解明されつつありました。しかし、結晶ができるにおいては、まず、二つの原子が相互作用のもと、結合しなければなりません。その相互作用を詳しい値を持って判明させるのが私の研究でした。装置を組み立て、その後、長い時間をかけて、十分なデータを集めて、その結果を出しました。実験前に、シミュレーションを行い、最も効率的なデータの集め方や分析方法も弾き出していました。私の実験と同じことを、量子力学的な計算で割り出した理論屋もいて、彼の計算と私の実験値がうまく合っていたのでした(まあ、彼の計算は私の実験後にされて、うまく実験値にあ会うような調整もされていました)。原子の動きも相互作用も、実は、原子内に存在する電子の振る舞いから決まるので、量子力学の話になってしまいます。結果は、古典物理では説明できないものでした。
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