第43話 実は、妹も面白い奴、いやすごい奴だった。
私には9歳年下の妹がいる。生まれた時には、髪の毛も少なく、ハゲのまま成長してしまうのではないかと、9歳の私は心配した。髪はちゃんと生え直ったが、この妹はかなり面白い少女だった。妹が物心ついた頃から、母がもう一つの家業である、木工所を仕切りだしたので、彼女は、野外での仕事を減らし始めた祖母と長い時間を過ごすようになった。同じ年齢くらいの歳では、彼女も祖母に優しく育てられた。私と違ったのは、私は、いつも母に叩きのめされていたことだった。そ田舎では、じじばばとかなり長い時間を過ごす子供が多かった(今でもそうだが)。我が家も、母が本気で働きはじめ、ベッド工場の下請けの木工所(自宅に隣接)でかなりの時間を過ごすようになってしまったので、小学生の妹は祖母といつも一緒だった。このような子供たちは、年に比べて、かなり大人気に振る舞う。話し方も、まるで、どこかの爺ちゃん婆ちゃんと話しているような言葉遣いになる子達もいた。私の妹はそれほどでもなかったが、幼い頃から、変わった行動をする子であった。
お隣の、祖母の義理の弟が、山羊を飼いだして、妹が山羊の乳を小学校の近くの親戚まで届けていた時期があった。ある日、空の瓶を受け取りに行った妹に、その親戚の高齢のお婆さんが挨拶すると、妹は、ちょっと腰を落として、右手を差し出して、「お控えなすって」と仁義を切ってしまった。まあ、無事に、空の瓶は貰えたらしいが、そのお婆さんは、かなり驚いたそうだ。(その頃、ヤクザ映画シリーズ、「仁義ない戦い」が大人気であったのは確かだった。小学校低学年の妹は、テレビでそういうやりとりでも見ていたのだろうか?)
私の父は小さなドカタの会社を運営していたので、仕事が終わると、我が家で飲み会があった。みんな飲んだくれなので、祖母と母だけでは、酒をとっくりで温める時間がないという理由で、そういう宴会では、日本酒はヤカンで温められていた。そんな宴会の翌日、皆が、遅くまで寝ていたが、自分も遅く起きた祖母が台所へ行くと、妹が出来上がって、箸を二つの手に持ち、太鼓のように、湯呑みを叩いて歌っていたのを見つけた。やかんにはお茶が入っていると思って飲んで、酔っ払ってしまったらしい。本人曰く、飲んでみたら、味はお茶ではないとわかったが、それでも何杯か飲んでしまったらしく、流石に飲んだくれの我が家の娘だと祖母は誉めていた。(ちなみ、私が小学三年生の頃から、夏になると、床に着く前に、ビールの大瓶一本を私に一緒に飲ませていた祖母である(半分ずつ)。)
この妹、大人になってからは、かなりのオタクになっていた。まず、新婚旅行は、旦那とオフロードバイクで、北海道を一周するツーリングだった。そして、娘が中学生になった頃、最初の動くガンダムが見れるホテルの部屋が取れたと喜んで、中学生の一人娘を連れて、旦那とお台場に泊まりに行った。一部屋3万円とか出したのだが、これがバレると母が大文句を言うのは待ちがないので、娘に口止めしていた。しかし、娘はこのことを母(祖母)に漏らしてしまったので、妹は母からかなり小言を言われた。ちなみ、妹が新婚の時、結婚式前に手術したので、妹の代わりに新居のアパートを掃除に行った母は、妹の旦那が運び込んだ彼の宝物のプラモデルの戦車を捨ててしまった。義弟はこのような洗礼を受けて、我が家の家族の一員になったが、彼は、今でも、母と私を警戒している(恐れている)と思う。
こんな妹だが、実は、すごい奴なのだった。私は日本で就職した年に、妹はお盆直前に実家へ帰ってきた。すると、幼なじみの同級生の両親が、菓子箱を持って挨拶に来た。妹と母に挨拶をして帰って行った。何が起こったのかよくわからない私たち(私、妻と息子)であったが、後で、母が事情を説明してくれた。その幼馴染は、中学生時代に、登校拒否状態になったらしい。妹の生まれた年は、「ひのえうま」といい、出生数がガタ落ちした年で、小学校時代の妹の学年には女の子が四人に男の子が一人しかいなかった。おかげで、小学校の同級生達は兄弟姉妹のように育ったが、中学校へ進学すると、かなりの数のクラスメイトがいる状態となった。その登校拒否になった同級生の家に、心配した妹は毎朝出向いて、自転車で一緒に登校し始めたのだった。妹は、この子が無事に中学校を卒業するまで、毎日、一緒に登校したそうだった。この幼馴染は。いずれ、看護師になって、結婚もして子供も生まれた。しかし、彼女の両親は、私の妹がいなかったら、それはなかっただろうと思って、毎年、妹に礼を言いに来ていた。
実は、私の弟にとても仲の良い幼なじみがいる。この弟の友人も、弟が帰省すると必ず我が家にやってくる。夏はゴルフに冬はスキーと、一緒に遊んでいた。私は仲がいい親友という意識しかなかったが、ある時、この友人が、幼い頃、彼は体が小さかったので、同級生から言いがかりをつけられたり、暴力を振るわれそうになることが多かったが、そんな時、弟が必ず間に入って助けてくれたと言った。
そんなやさしくて立派な弟と妹がいる私だが。私はそんな行動をした覚えはない。いじめを見たら、いじめていた奴らはぶっ飛ばしてやったが、いじめている奴らをいじめてしまったと言っても間違いない。クラス会とかになると、fumiyaに殴られたと言う同級生も何人かいる。
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