第42話 結婚詐欺と母の涙
結婚する前に妻は、自信を持って、料理は得意だと言っていた。まあ、若い女性にしたら、できるのだろうと、彼女の言うことを信用していた。しかし、実際に結婚して見ると、彼女が作れるのは、ミートスパとミートローフくらいだけだった。料理は得意だと言ってたよねと問うと、YESと返事が返って来て、ケーキとかパウンドケーキや、菓子パンみたいな物とかブラウニーとか、、、出てくる物は全て菓子類で、オーブンでベイクするものばかりだった。それを指摘して、これって結婚詐欺だと言ったら、照れ笑いをしながら、サラダも作れると言い訳をした。私も別にそれ以上追求するつもりはなかったが、彼女のレパートリーが増えた後からでも、時々、からかった。彼女は、私に指摘されるまで、本気で自分は料理ができると思っていたと、今でも認める。
こんな妻だったが、やがて、息子が生まれてからは、料理をする割合は、大体、50-50になっていた。妊娠中は、何故かミートスパをよく食べていたが、ひき肉なしのトマトソースだけのパスタの割合の方が多かったと思う。しかし、ある時、私の母に頼んで、日本料理のレシピ本を何冊か送ってもらったら、それらの本を見て、あれが食べたい、これが食べたいと言い出す様になった。これは、私に調理しろという事であって、自分が作ろうというわけではなかった。お陰で、又、私の料理する割合が増えた。
カリフォルニアへ引っ越した後、母が弟と一緒にやって来た。2人が滞在していた間は私が殆どの料理をしていた。妻は、母と弟の好みが分からないので、私に任せたと言っていたが、実は、その頃には、私が料理する割合がかなり増えていた。理由は、私達は日本料理をよく食べる様になっていたのと、息子が妻の作る家庭料理を好まなかった為だった。私の母に無理矢理嫌いな食べ物を食べさせらた経験から、私は、息子に同じ様な経験はさせなかった。妻が作った料理を、息子が嫌がると、私が息子の好きな物を作ってやった事もあった。これは、今でも、妻から文句を言われる。息子の嫁からまでも苦情が来る。
母が訪れた後の帰りの飛行機の中で、私がほぼ全部の食事の準備をしていたのが可哀想だと、母は泣いていたと、弟から聞いたのは、その数年後だった。既に書いたが、母は妻へ一言も苦情を言わないので、不満を抱いていたとは全く気づかなかった。私としては、私が自分で料理すると、自分の好きなものが食べられるため、満足していたので、自分が可哀想だと思った事は一度もなかった。
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