第36話 人生の教訓はロックから学べ!
私は本当にいい加減に人生を生きて来たと言われても反論できない。科学研究に関しては本気で真面目にもやって来たと思うが、その科学の中でも遊び的な要素があるからこそのめり込めた。米国の某大手コンピューター会社の社長(会長かも?)が、「I○Mのような大きな会社には、幼児のように砂場で遊んでいる研究者が小数は必要だ。」と言ったというのを聞いたことがあるが、基礎研究は、そんなもんだ。(基礎研究は科学者の砂場遊び。99.9%の基礎研からは、実際の製品が生まれるという見返りはない。残りの0.1%は世界を変えるかもしれない。)しかし、この私でも、一応、父親をやっていていたので、息子に教えたいこと、人生の教訓みたいなものはあった。息子には、えらい迷惑な説教話だと思われていたことの方が多かったかもしれない。その頃、All I Really Need to Know I Learned in Kindergarten: Uncommon Thoughts on Common Thingsという本が流行った。「人生に必要なことは全て幼稚園で学んだ」という本だった。これを見て私は息子に、All you need in your life, you can learn from rock music.「人生に必要なことは全てロックミュージックから学べる。」又は、「人生に必要なことは全てロックの曲の歌詞として掻き落とされている。」と教えていた。これを聞いた妻は、私のアホさに驚いて(いや余り驚かず)、父の言うことは丸呑みするなと、息子に注意を呼びかけていた。これって日本の田舎の役場が、迷惑動物が出没すると住民に注意を呼びかけるのと同じ行動であったかもしれない。私は迷惑動物気味に扱われていたのかもしれない(笑)。
ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」、「ノーウェアマン」、「イン・マイ・ライフ」を全部聴いてみろとか、StyxのアルバムParadise Theater。そして、その頃、MTVで流行っていたTears for FearsというバンドのEverybody Wants to Rule the Worldというミュージックビデオのタイトルはブルース・スプリングスティーンのBad Landsの歌詞の中の、Poor man wanna be rich, rich man wanna be king, and a king ain't satisfied till he rules everything.と共に人間の欲望に関する教訓だと。サイモンとガーファンクルのSound of Silence, The Boxer, I Am a Rockは映画「卒業」に使われた名曲だが、歌詞は全て、若者が社会に感じる怒りと虚しさが込められている。
このような父の不明瞭であったかもしれない小言を聴きながら育った息子は、大学生時代、その頃には既にClassical Rockと呼ばれるジャンルのバンドのコンサートに行くようになった。皆、40過ぎの観客の中で、数少ない20代前半の観客だったことが多かった。周りのおじさん達に、「ここにいるには、お前は若すぎる。」とか揶揄われると、「親の影響で、、、」と返すと、皆納得してくれた。中には、密かに持ち込んだ大麻(マリファナ)やウイスキーをくれようとするファンもいたらしいが、それは皆断ったと、親には報告していた。その後、私に、〇〇のコンサートに行って来たというメールを送ってくるようになった。内心、俺はうまいこと息子を育てたと思っていたが、妻にそれを言うと、息子が自分の好きなバンドのコンサートに行ったぐらいで喜ぶなと言われるので辞めておいた。(何しろ、息子は、妻が好きなミュージシャンのコンサートには行かないので。)
そして、2016年に、ボブ・ディランがノーベル文学賞をもらった時には、妻に向けて、ロックは偉大であることが認められたと言い放った。ついでに、妻が好きだったマイケルジャクソンなどのポップミュージックはこんな偉大な賞をもらうことはないとも言ってしまって、彼女を怒らせてしまった。妻曰く、ノーベル文学書をもらうのはおかしな作品が半分なのだそうだ。確かに、私も、最近の文学賞をもらった作家の本を読んだ覚えはない。ロックミュージックから人生の教訓を学べという主張は、まあ、私の戯言と思われても全く問題はないのだが。
そして、妻が私のロックミュージック崇拝を軽蔑していることよりも、私に取って、もっと最悪なことが起ってしまった。それは、息子が、「クラシック音楽以外は聴くに値する音楽はない、、、」と言う嫁と結婚してしまったことだ。物書きの血筋で、文系インテリの家族を持つ息子嫁は、哲学や心理学にのぼせていた。私が、心理学なんて、偽物科学だと言ったら、かなり怒っていたが、私はその発言を撤回していない。特に、マウスを迷路を走らせるような実験をやっている心理学はめちゃくちゃ出鱈目な「偽科学」をやっていると言っておいた。すると、1−2年前に、このような心理学実験は30%の再現性しかないという調査結果が出た。これは、私に取っては、ボブ・ディランがノーベル賞をもらった時よりも、「ざまあみろ!」だった。しかし、この息子の嫁も、改心してか(笑)、最近はヘビーメタルの社会への影響とか言う研究調査をしているらしい。ハードロックを飛び越してヘビメタへとだりついたのは、哲学者や小説家がいつも死を認識しているせいかと少し心配している(彼女の親族にも自らの命を絶った人間は何人かいると聴いているし)。
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