第25話 私と妻の家族からの愛情の差

私は、1900年時代初頭に米国カリフォルニア州で生まれた祖母に甘やかされて育った。お陰で、猛烈な母の教育と躾にもかかわらず、祖母には溺愛され、母にも愛されていると確信して成長した(一時期、私の両親はあまりにも私のことを理解しないので(例えば、日曜日の夜のウルトラマンを見逃すことは人生最大の汚点であるとか)、母が私を橋の下で拾ってきたことを信じかけていた頃もあったが)。結婚後、大人なった私は両親と祖母からの愛情を全く疑うことはないと知った妻は、嫉妬していた。子供の頃から大人ななるまで、私の親族はいつでも頼りになると疑わずに育った。ただ一つの疑問は、私が本当の大人になったかどうかであった。妻は、幼い頃、母(私の義母)が父の元から子供達を連れて、別の男のところへ逃げてしまった。そして、一応育ててくれた母と継父を信用していなかった。というか、嫌っていた。実は、父(私の義父)にも問題があった為、母が逃げ出したと知ってはいたが、安定した職につかない継父と別れない母には大きな不満を持っていた。姉が中学生の時、一時的に養護施設へ入れられてしまった時期があった。その直後に、他の子も取り上げられるのを恐れて、姉を放棄して、別の州へ夜逃げしてしまった。その後しばらくしてから、一家は私の通っていた大学のある街に引っ越し、私と妻は出会った。出会った頃、彼女は高校2年生で、一歳上の兄と、アルバイトをしながら家計を支えていた。米国の高校は、実習と言ってかなりの時間働きながら学校の単位を取得することが許されていた。彼女も兄も、週末を含めると、週40時間くらい働いていた。実習だったので、正規の雇用とは認められなかったが。しかし、彼女らの収入の大半は、家族の食費や光熱費が消えていた。それでいて、親達は、兄と彼女の行動に文句をつけて制限していた。その上、母が逃げ出すまで親密にしていた両親の親族との交流も全く途絶えていた。


逆に私は、母型の祖父母、両側の叔父叔母達にも可愛がってもらって育っていた。インターネットや安い海外電話通話料金もなく、家族と年に1度か2度しか連絡を取らない私なのに、全く、家族愛が不足していない様子を見て、そういうものに飢えていた妻は嫉妬することがよくあった。いくら母に叱られても、私には生まれて一度も叱られた覚えがない祖母がいた(後に、母も祖母が一緒に住んでいたから、私には思いっきり厳しくできたと言っていた)。叱られていたのは、母だ毛でなく、もちろん、学校でも問題児だった。しかし、祖母は叱らない。学校から通知が来ると、母には、拳骨や箒の枝で叩かれることはあった。そういう感じの、絶対的な愛情を知らない妻は、私の行動や言葉に傷ついたこともあったが、私には理解できないことも多かった。私にとっては、家族愛なんて誰でも持っている常識なのだとしか思っていなった。親が離婚してる生徒に出会ったのは高校生になってからだった。妻の家族に起こったことは、テレビドラマにでも出てくる空想くらいにしか思えなかった。


米国では、早い時期から子供達に自立を強制する’傾向があるので、妻の両親が別れていなくても、妻が愛情を感じながら育ったとは限らないが、現状よりはましだっただろう。米国では、かなり幼い乳児を別の寝室で寝させる習慣もある。息子も2歳の時は、別の寝室で寝ていた。私は、3歳で、弟が生まれるまでは、両親と寝ていたような気がするが、よく覚えていない。9歳年下の妹は小学生になっても両親と寝ていたように思う。私は、弟が生まれてから、中学生になるまで、ずっと祖母と離れで寝ていた。ちなみに、祖母は、寝る前にビールを一杯飲みたいが、大瓶しかなかった我が家では、私に半分飲ませてから寝ていた。おかげで、小学校3年生から、毎晩、祖母とビールを飲んでから寝ていた。中学生時代に日本へ引っ越した息子は、それまで、祖父母とは、そんなに親密な関係ではなかった。しかし、日本へ移住してからは、一人で実家へ遊びに行くようになった。私の両親と祖母に可愛がられ、私と同じように、家族からの「疑いようのない無条件の愛」を経験したと思う。私には厳しかった母も、孫である私達の息子は甘やかしていた。これは祖父母の特権なのだろう。この子供の頃に受ける溺愛というものは、多くの人間にとっては自信に繋がるものだと思う。これを間違えば、わがままに育ってしまうのだろうが(最近、米国でも、きちんと躾をされていないで育った大人が問題になっているが、それはいつの時代でもいたと思うが、数がかなり増えているのだろう)。その点、息子は日米の良いところ両方に影響されて育ったのではないかと思う。息子の、日本人的な責任感や義務感は私よりも強いかもしれない。(実は、息子は祖父祖母と祖祖母にはとても優しい。両親である私達には容赦ないが。)もちろん、妻は、そうではなかったため、自分に自信がない。実は、これが、米国が国民へ臨む1番の性格であると言うのが皮肉だ。だから、米国の教育は誉めまくるというのは以前にも書いた。


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