第13話 金髪でないと女として見てない(I)

私の妻は、白人の米国人であるが、日本で働いていた間に、「〇〇(私の苗字)さんは金髪じゃないと女だと思っていないですからね、、、」と若い人に言われたことがあった。これを言われた時には、周りは私をその様に見ているのかと、少しショックだった。既婚者で、妻が金髪なのでで当たり前ではと言って誤魔化しておいたが、彼の言った言葉の意味は妻だけの話ではなかったのは、知っていた。


そこまで考えたことがなかったが、それについて少し考察した。10年以上も米国の真ん中辺り(中西部)に住んでいたら、周りにいた女性は、若い女性から年寄りまで、ほとんどが白人女性だった。私は、白人女性が周りにいる生活に馴染んでいた。自分が黄色人種であることを忘れてはいなかったが、忘れてしまいそうになったこともあったと思う。


人種に関しては、高校の留学生の時はもっと極端だった。その高校に通っていた生徒の中で、白人以外は、私とメキシコ人の姉と弟の三人だけだった。車で10分以上走らないと黒人を見かけることはなかった。(1時間ほどかけてシカゴまで行けば、シカゴの南半分には白人は今でも住んでいない。)ある日、友人達とある近くの街を歩いていて、ふと商店のガラス窓に映った自分の姿を見て、自分が一緒にいた白人達と異なることを思い出した。一緒に住んでいるホストファミリーも学校に通っている生徒達も皆白人なので、鏡がないと忘れるところだった。毎朝、洗面所で、鏡を見ながら、歯を磨き、顔を洗っていたのだが、全身像と側にいる人間達が関係していたのかもしれない。


そして、再渡米して大学生となった州立の大型大学には、アジア人も黒人も一定数いたが、9割近くが白人だった。3万人ほどいた学部生(大学院生を除く)の中で、日本人は私が一人だけだった。一年ほど、慶應大学からの留学生がいたそうだったが、文系の学生で会うことはなかった。もちろん、教授、ポスドク、大学院生や、企業等から派遣された日本人はいたが、どうみても、私が身分的には一番底の学部生だった。おかげで、付き合うのは、同年代のルームメイトやクラスメイトで、彼らはほぼ白人だった(物理には、一人だけ中国系のアメリカ人の同級生がいた)。他のアジア系の学生達は、一緒に連んでいた。韓国系や香港系等のグループは、寮の食堂で一緒に食事していた。多くの黒人達もそうだった。しかし、日本人は私一人だった。その上、その頃の、アジア系米国人の女子大生は、アジア系の男とデートしないという噂も聞いた。その様な女子大生には、アジア系の男は白人よりも一ランク下と見做されていたのだろう。実は、父親等、親族の男性に男尊女卑の傾向が強く、嫌だったのかもしれない。


そこで出会ったのが妻だったが、もちろん妻の家族と友人も皆白人だった。大学院生になってようやく、日本人に出会って、何人かとは親しくなった。妻が、日本語クラスを受け始め、その講義の教授やティーチングアシスタントは皆日本人だったのも日本人と交遊する様になった理由の一つだった。(研究所で日本人には出会う様になったので、このエッセイのタイトルになった日系三世に間違えられた逸話もあった。)妻のクラスメイトの父親は東大卒の気象学の教授だったが、おかげで家に招かれたこともあった。しかし、カリフォルニアへ引っ越すまで、その頃の米国中西部では、アジア人男性と白人女性のカップルはほとんど見たことがなかった。逆は割と多かったが。院生になって、妻の日本語のクラスのパーティーで、私たちと同じ、日本人男性と白人女性のカップルに一度だけ出会った。彼らは、まだ、婚約中だった。その頃、私たちにはもう子供がいたので、友人は、同じくらいの子供を持つ白人カップルが多かった。


カリフォルニアへ引っ越してから、日系人(二世三世)に出会い友達になった。日本の会社から派遣された日本人の方達にも、シリコンバレーには多かった。妻と息子が通い出したサンホゼのお寺にあった土曜日の日本語学校で出会った人たちが多かった(この学校がすごかったのは、東大で博士を取った人が三人も講師をしていたこと)。シリコンバレーには、アジア人のエンジニアは多かったのに、同僚や友人は、やはり白人が8-9割と圧倒的に多かった(残りが日系人を中心にしたアジア人)。


正直、私は白人化していたと思う。これは、アジア系米国人にはよくあることで、その頃は、理想的な移民とされていた。そういうアジア系米国人や移民は、自分達を「バナナ」と呼んでいた。外から見ると黄色人種だが、中身はほぼ白人という意味だ。今は、アジア人であることをもっと誇りに思うのが若い世代では人気だ。これについても個人的な意見はあるが、後に書くかもしれない。


ここまでは数の問題だが、実は、数以外に私の性癖(?)も影響していたのだと思う。これは次の機会書くことにする。

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