元おね×元ロリの諸問題~捨てた元お姉さんと捨てられた元幼女~

いかずち木の実

元おね×元ロリの諸問題

「誰が元おねじゃい!」


「……先生、いきなり虚空に向かって何を叫んでるんですか」


「ううん、なんでも。そんなことより、ずいぶんと立派なカメラだね。黛ちゃんの私物なの、それ?」


「ええまあ。スマホでも良かったんですけど、どうせならいいやつをと。……あれ、上手く行かないな。これどうなってんだろ」


「案の定扱えてないじゃん。今度私にも貸してよ」


「やですよ、壊しそうだし。せっかくバイトして買ったのに」


「壊さないよ壊しそうなのは黛ちゃんのほうじゃんか」


「だいたい、何に使うんですか」


「ユーチューバーになる」


「なってどうするんですか。収益化ひとつとっても大変らしいですよ。ていうか先生公務員だから副業できないでしょ」


「収益化なんかしないよ。知ってる、黛ちゃん? ユーチューバーって子供人気のすごい職業なんだよ」


「……はあ」


「何そのため息」


「いやどうせオフ会とか開いて小学生に手を出そうとか考えてるんだろうなって」


「な、なぜわかった」


「先生がろくでなしのロリコンだからでしょう。それこそ、教え子に手を出すタイプの」


「な、なぜ知ってる」


「私が被害者だからですよ」


「……これでも反省してるんだよ」


「次はうまくやろうっていうのは反省とはいいません」


「言うよ! やっぱり相手が身近なのはよくないね! 職場恋愛はリスクの塊!」


「教え子に手を出すのを職場恋愛っていう人はじめて見ました」


「そういえばさ、こないだ同級生の高校教師が生徒に手を出して首になってたわ。私もバレてたらどうなってたのかな? くわばらくわばら」


「そういうとこおばさんっぽいですよ」


「どこがよ。こないだなんて女子大生に間違えられたわ」


「でも先生的には女子大生とかおばさんでしょ」


「女子中学生でギリ熟女」


「じゃあ女子高生は?」


「……」


「なんで黙るんですか」


「現役女子高生を目の前でおばさん呼ばわり出来る度胸がなかった」


「先生もう32ですもんね。私の倍」


「年齢の話はやめよ、ね?」


「安心してください、制服着たら女子高生に見えますよ」


「え? 本当? マジで?」


「でも先生的にはおばさんなんですよね?」


「ううん、なんだろうね。恋愛対象的な意味ではおばさんだけど、それ以外の意味合いでは若い的な……」


「めんどくさい」


「めんどくさいよ、ロリコンは。こないだも同窓会でさっきのやつの話題が出てさ、みんなロリコンだロリコンだって言ってて、思わず反論しかけたわ」


「……え、同窓会呼ばれるんですね」


「呼ばれるわよ。さっきから私のことなんだと思ってんの」


「友達のいない変態ロリコン女教師」


「残念だったね、友達はいるよ」


「ほかは否定しないんだ」


「ロリコンも変態も外側の定義なの。私から言わせりゃ女児以外をそういう目で見る人のほうが怖いけど、大多数はそうじゃないでしょ」


「ロリコンのほうが怖いよ」


「私は光のロリコンだし」


「光のロリコンは相手が成長したら捨てたりしない」


「じゃあどうすりゃよかったの。……だいたい、私のことが好きって悪趣味だもん。最初からわかり合えないの決まってたじゃん」


「いいじゃないですか、悪食同士仲良くすれば」


「しないよ。私以外のロリコンなんか絶滅すればいい。私以外全員闇のロリコン」


「話変わってません?」


「だってそうじゃん。小さい子しか愛せないなんて狂ってるよ? 赤ちゃん作れないんだよ?」


「同性なんだから最初から最後までそうでしょ」


「あ、それもそうだね」


「先生、少しは脳みそ使って話したらどうですか。さっきから話題が滑る滑る」


「じゃあ何の話してたんだっけ」


「カメラがどうのって話ですよ」


「そうそう、カメラだ。いつまで手間取ってんの」


「あんたが話しかけてくるからでしょうに」


「そういえばさっきバイト代で買ったって言ってたけど、何してたの? パパ活?」


「ぶっ殺すぞ」


「冗談だよ、冗談」


「家庭教師ですよ、家庭教師」


「……もしかして女子小学生?」


「目をいきなり輝かせるな」


「だって女子高生が家庭教師つったらまあアレだよ。高確率で親戚相手とかだ。で、親戚と言ったらやっぱ顔も似てるわけ。黛ちゃん似の女子小学生とかさきっとすごく可愛い」


「誰もそんなこと言ってないでしょうが」


「その反応、図星だね。写真を見せてよ」


「絶対見せませんから。本当に節操ないですね」


「節操ありまくりだよ。面食いだし。黛ちゃんと別れてからピンとくる女児とか見たことないもん」


「……そうやって機嫌をとったところで無駄ですからね」


「いいや嘘じゃないよ。あの頃の黛ちゃんは天使みたいだったね。やっぱり外国の血のおかげかな。お目々なんか碧色でぱっちりしてて、ビー玉みたいだった。女児特有のふわふわとさらさらが同居した金髪とかさ、そうそうお目にかかれるもんじゃないの。でも外国の子特有の早熟さは見当たらなくてさ、いつまでも中学年くらいのビジュアルだったからもう最高。日本人の血のおかげかな。いやあそれが初潮が来た途端これなんだから私は時間の流れを呪わずにはいられないよ」


「先生本当に女児のことになると早口になりますね」


「で、その親戚筋は外国の方なの?」


「違いますよ。純日本人です。だいたい近所の子ですし」


「……うぇーい」


「そんな覇気のないうぇーい」


「……ああもう、本当に天使だったのになあ、あの頃の黛ちゃん。もう、私に天使が舞い降りたって感じでさ。ノアちゃんとかコッポラちゃんだよもう。もう本当におねロリに限って合法にならねえかな」


「おね?」


「うるせえ」


「……お、出来た」


「やっとか。……で、なんでカメラなんか用意してたの?」


「そりゃあ、映像を撮るためですよ」


「それは、何の?」


「お察しのとおりです」


「なんでもいいけど、とりあえず逃げないからこれ解いてくれない?」


 先生が、私の部屋のベッドの上で両手足をロープで拘束された先生が、なんとも今更なことを宣った。私はそれを無視して、独り言めいて続ける。


「外国から越してきて、不安しかなかった私を救ってくれたのには感謝してます。クソ教頭に髪を染めろって言われたらブチ切れてズラを吹き飛ばしてくれたことも。日本語を教えてくれて、誰かにものを教えられるくらいにまで上達させてくれたことも」


「……あんなきれいな金髪を染めるなんて、問題外だし。日本語がうまくなったのだって、ただ黛ちゃんが頑張ったからだよ」


「それでも感謝してます。あなたのおかげで、今の私がいます」


「ダメだよ、そんなことしちゃ。私は教え子に手を出した最低の女だからさ。どう考えても、正よりも負の側面のほうが強い」


「だとしてもです」


「今だってそうだよ。人にクスリ飲ませて誘拐するような子になっちゃったのは間違いなく私の責任」


「じゃあ責任とってくださいよ」


「それは無理」


「なんでですか、私、かなり美少女ですよ。学校でも滅茶苦茶告白されますし」


「だったらそのままいい人見つけて付き合っちゃいなよ。私より絶対いいから。高校生活適当に過ごしてたら私みたいになっちゃうよ?」


「先生みたいになれるならいいです」


「よくない」


「……ねえ、先生」


 私は先生のちっとも変わっていない優しげな垂れ目を見つめて、訊ねる。


「本当は私のことを思って身を引いただけだったり、しないんですか?」


「違うよ」


 だから先生も、私の碧眼を見つめ返して、言い切った。


「私はロリコンだから。だからそうやっておっぱい大きくなっちゃった黛ちゃんには興味がないんだ。さっきからずっと話しかけてるの、黛ちゃんがちゃんと黛ちゃんのままだって言い聞かせないと、気持ち悪くて仕方がないからだし」


「だから、今なら間に合うからさ、だから解放してよ。ここで私が叫んだら、きっとすごく面倒なことになる」


「それは脅しのつもりですか? しないでしょ、そんなこと。だって先生、優しいから」


「優しくないよ。優しかったら最初から手を出さない。いつか崩壊するってわかりきってたくせに。言い方悪いけど私は最後まで面倒が見れないとわかりながらペットを飼ったようなもんなんだ。最悪だよ」


「……先生、先生ならひとつ教えてほしいことがあるんですけど」


 私はペットで良かったし、今もそれでいいと思っている――とは言わずに、最後にただひとつだけ訊ねた。


「女子高生はロリに入りますか?」


 答えは聞いていない。

 私はカメラの目の前で、先生にキスをした。

 あのときと同じ、柔らかな感触だった。

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