ボクはネコ クリスマス

「ふんふんふーんふんふんふーんふふふんふふー」


 ついついジングル・ベルの鼻歌を口ずさんでしまう、今日はクリスマスイヴだ。 ボクは今注文していたケーキを受け取り家へ向かっている。


 本当なら愛ちゃんと一緒にイルミネーションでも見たいところだけど、愛ちゃんは凜華と一緒に来年の受験に向けて勉強をしている。


 今から勉強して絶対王理と同じ大学に行くんだーって言ってくれたのは嬉しいけど、こんな日まで勉強ってどうなのかな……なんて不満に思っちゃいけないよね。


「それにしても今日は寒いなー」


 最初はクリスマスパーティーをするつもりだったのだけど、義妹の凜華は友達と予定があるからって断られた。多分ボクと愛ちゃんのことを気遣ってくれたのかな。この埋め合わせ、明日にでもクリスマスプレゼントという形で返そうと思う。


 急ぎ足で帰り道を進んでいると、ボクと愛ちゃんが一緒に暮らしているマンションが見えてきた。


「あれ? 電気がついてない?」


 ボクがケーキを受け取りに行く前はまだ凜華と一緒に勉強していたはずなだし部屋の電気はつけたまま出たはずなのに……もしかして何かあったのかな?


 スマホを取り出し確認しても特に通知はない、いや一件だけ凜華から帰るという連絡が着ていたので、お疲れ様ーとメリークリスマスと返信しておいた。


 それよりも家のことだ、ケーキを気にしつつもさっきよりも急いでマンションへはいる。ロックを解除して自動ドア雨をくぐり抜け、一階で止まっていたエレベーターに乗り込む。

 

 部屋のある階に辿り着いたので急いで降りて部屋の前へ辿り着いた。念のためチャイムを鳴らしてみても反応がない。どういう事だろう、中には愛ちゃんがいるはずなのに……。


 鍵でロックを解除してゆっくりと扉を開ける、中を確認してみるも中は真っ暗だ。まだ廊下の電灯がある分、外のほうが明るい。


「あいちゃん?」


 声をかけてみても反応はない、自然にゴクリとつばを飲み込む。音を鳴らさないようにそっと扉を閉める。とりあえずケーキは靴箱の上に置いて代わりに傘立てにあった傘を手にとり靴を脱いで中を進む。


 そーっとそーっと足音を鳴らさないように進む。部屋は1LDKなのでまずはリビングの方へ歩いていく、玄関から見える範囲で灯りがついている部屋は無さそうだ。


 リビングまでたどり着くも特に荒らされているということはなそうだった。


「あいちゃん……」


 もう一度声をかけてみても物音一つしない、誰もいないのかな。もしかして愛ちゃんは電気を消してお買い物にでもいったのかな? うん、きっとそうだね、でも一応寝室の方も確認してみようかな。


 リビングから続く扉をそっと開いて中を確認してみる、やっぱり寝室も真っ暗だ。中に入り込んでベッドの方に視線を向けるとベッドが膨らんでいる。


 はぁ、なんだ愛ちゃん寝ちゃったのかな、寝ている愛ちゃんを確認しようとベッドに近寄りそっと頭のある方を見てみるけどそこには何もなかった、きっとお布団に潜り込んでいるんだろうね。


 寝ているならこのまま寝かせておいてあげたいけど、ご飯もまだだしケーキも筐体ベタ法が美味しいよね。ここは心を鬼にして愛ちゃんを起こすべきだよね。


 ボクはそっと膨らんでいるお布団をゆっくり持ち上げて、そこで……。


「わっ!」


「うひやはっ!!!」


 急に背後から驚かされ変な声を出してしまった。


「も、もう何やってるの愛ちゃ───」


「どう? 似合ってる? 可愛いでしょう」


「うん、凄く凄く魅力的だよ」


 愛ちゃんがミススカサンタのコスプレをしていた、それもなんだかすっごーくすっごーーーく際どいエチエチな格好だ。そのせいか久しぶりに王子様モードになってしまった。


「それでなんでこんなことしたのかな」


「えっと王理怒ってる?」


「怒ってない、怒ってないけど心配したんだよ、部屋が真っ暗だし呼んでも反応ないし、なにか悪いことでもあったのかと思った」


「ご、ごめん、ちょっとした出来心だったんだよ」


 ボクは愛ちゃんの顎に手を添えて顔を上に向かせるとその唇を塞いぎ、愛ちゃんの体を抱きしめた。最初は少し離れようとしていた愛ちゃんもいつしかボクを求め始める───。



「もう、王理は急にあんなことして、お風呂もまだだったんだからね」


「ごめんなさい、なんか驚きすぎてスイッチが入ってしまったと言いますか」


 ボクは電気がついているリビングで正座している。


「もういいわ、私も悪かったしご飯食べちゃお、ケーキも買ってきたんでしょ」


「あっ忘れてた」


 玄関に置いたままだったケーキを取りに行き戻ってくる。一度中を確認する、崩れてはいないようで良かった。


「ケーキは冷蔵庫に入れて置くから、先にご飯食べようか。電子レンジで温めるから少し待ってね」


「はーい」


 用意しておいた食事を温めてテーブルに並べて席につく。


「それじゃあ食べよっか」


 ボクと愛ちゃんはジュースの入ったグラスを手に持つ。


「「メリークリスマス」」


 グラスをそっと触れさせて、ボクと愛ちゃんは笑い合う。

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ボクはネコ 短編版 三毛猫みゃー @R-ruka

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