第1章ーⅡ

席に着いた瞬間、溜息を抑えることができなかった。

……なんだこのクラス分けは。頭狂ってんのか?

出席番号順に振り分けられた席で、私の居場所は右後ろの方。

対して、教室の左前あたりに陣取ってさっきからやかましい騒ぎ声を響かせている数人がいる。やかましいと騒ぎで意味が被ってるのはご愛嬌。つまりとにかくうるさい。

サッカー部の次期キャプテンと女バレのエースに、生徒会役員と剣道部マネージャーを兼任してる子、更には文化祭の実行委員長と副委員長などなど……。肩書き持ち=人望ある陽キャ達が集まりすぎている。「ここがクラスの中心です!」と主張するオーラがどばどば溢れていて、絶対近づきたくない。

昨日の願いが速攻でフラグとなってしまったことを悲しく思いつつも、軽く教室の中を見回す。

どうやらうるさいのはあそこだけ。その周囲は我関せず、といった様子で新学年初期恒例の友達作りに興じているようだ。どうせ一年の付き合いなのに。

私はクラスで友達を作らないと決めている。不必要だから。

一年で終わる、形すらないただの人間の集まりに居場所を求める方が間違っている。学年が変われば跡形もなくなり、人間関係もリセット。部活も違う、同じクラスだっただけの繋がりなんて、その後続く訳が無いのだ。

そういうことなので、始業式前の教室で、途中まで読んでいる文庫本を鞄から取り出した。好きな作家の新作だ。経験則上、学期初めから本を読んでいるような変わり者はまず避けられる。平穏ゲットへの第一歩でもあるので、始業式に呼ばれる時刻まで本の世界に没頭した。




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せかいでいちばんだいすきな 暮瀬 夢烏 @miuca1212

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