概要
あの時の喜びと快楽の延長に、足の骨を砕き折った今がある。
まるで分かっていない。私があなたのかがり火であっただけで、あなたが私のかがり火であった瞬間なんて一度もなかった。空しさだけを詰め込んだ心の苦しみを、離別を悲しめない悲しみを、耐えるための強さを与えたのは、煌々と淑やかに輝く、あの洞窟のような店で感じた、顔を焼かれるような恥だった。かげろうのように刹那的な、黒点のように燃えたぎった、あの一夜の幸福だった。優柔不断な雅の笑顔だった。あの一回が、私をここまで生きながらえさせたのだ。
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