第3話 僕だけのトモダチ

 トモハルくんのおかげで、僕のノートはもうめちゃくちゃだ。


 一日の報告に対して、線を引いてきて『は?』とか『そういうとこだぞ』とか『学校行くのヤメロ』とかいちいち文句を付けてくる。二言目にはすぐ『はよ親に言え』だ。


 僕の事情はノートに全部書いてあるっていうのに、トモハルくんときたら読解力がまるでない。


 おまけに、クラスのやつらと全く関係ない絵しりとりみたいなものまで始まってしまった。


 トモハルくんは字も下手だが、絵はもっとひどい。

 掃除機かなと思ったものが、ゾウだったりするから、まったく言葉がつながっていかなかった。僕が丁寧になんの絵か下に書いても、トモハルくんはお構いなしにまた謎の絵を描く。


 ゲームが好きみたいだった。特にポケモンが好きで、くさタイプには目がないらしい。


 クラスのやつらがハマッているみたいだと書いたら『やれ』と返されて、僕が『持ってない』と答えると『買え』と迫ってくる。これじゃまるで山賊だ。


 本当に、もう。一体どんなやつなんだ。


 やりとりを続けるうちに、僕はどんどんそのことが気になっていった。


 なんとなく年上のような気はするけど、高校生か小学六年生かまではわからない。僕が書き終わった後に書いているということも考慮すると、ひょっとしたら大人の人ってこともありえる。


 いや、でも、こんなに字が汚くて絵も下手でちゃんとしてない大人の人って、実在するんだろうか。


 色々と考えすぎた僕は、とうとう変な夢まで見るようになってしまった。


 夢の中で、僕とトモハルくんは同じ小学校に通っている。


 トモハルくんの顔は影みたいになっているけど、僕たちはノートの中と同じようにお喋りしていた。


 夢の中の魔法学校では、僕は特に嫌われていなくて、なぜか転校してきたことになっているトモハルくんに、校内を案内してあげた。


 そしたら、火星に来たところで、クラスのバカなやつらがトモハルくんを囲んで、顔にアリの巣をぶつけはじめたのだ。


 僕は掃除機を振り回して怒った。


「いいか、トモハルくんは僕だけのトモダチなんだぞ! ひどいことをしたら、絶対に許さないから!」


 そんな自分の寝言で目を覚ました。

 こんな変な夢に泣かされてしまい、僕は自分で自分が情けなかった。


 それに、トモハルくんは友達じゃないし。


 きっと警察でもないし。僕のことをクラスのやつらから助けてくれるわけじゃないし。


 でも、これで覚悟が決まった。


 二学期の終業式の日。僕はトモハルくんと会ってみることにしたのだ。

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