美術館と二人

竜野音四五

短歌二十首連作部門【美術館と二人】


赤頬で「涼みに行こう」と笑む君が

指差す謎の捻れた巨像



外界の音を断ち切る自動ドア 

静寂の圧 握る手離す



前屈み「大人二人」と言付けた

君が遠くて 財布忘れる



薄暗い展示室内照らす絵と 

誘蛾灯に集まる人よ



最初の絵 気まずそうに 目を反らす

裸婦姦しい むちりとした絵



何時間見ても変わらぬ作品を 

映画と同じその目で見てる



青黒く 波打つ巨大な キャンバスの 

前に小さな白ワンピース



青を背に 展示室A 出る君が 

呑み込まれないように手をとる



複雑に絡み編まれた針金は 

隣からだと何に見えたの



反射する展示ケースを覗きこむ 

チラリ目と目があった気がする



有名な作者が描いたものらしい 

「ちょっとキモいや」「何だろねこれ」



評論家気取って解説文を読む 

髭撫でる振りまでしないでよ、もう



ガラス戸を 境界として 対となる 

くりぬかれた木 並び立つ二人




窓の外 日差しに揺れる 木葉見て

ため息ひとつ 暫し休憩



真っ白に塗り潰された空間に

並ぶ原色 現代アート



立ち並ぶ空想奇抜 観察し

顔を見合わせ 首をかしげる



最後まで アートをこの身に染み込ます

壁一枚の絵に見送らる



窓の中絵の具が混じる現実に

気付けに一杯 アイスコーヒー




昨日まで知らなかった絵を2枚

ポストカードに代えて帰ろう



同じ絵と解釈違いが唆す

次は何を見ようか、あなたと

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美術館と二人 竜野音四五 @ba1100n

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