第5話(最終話)ユニコーン娘を助け出せ!
「どけどけぇー! 巴様のお通りだァー!」
「うわぁぁぁ!? なんだこの女!?」
囚われたフローベルを追いかけて悪の組織インフィニティ・フェニックスのアジトに殴り込んだ巴は、得意の格闘技でちぎっては投げちぎっては投げ、下っ端どもを薙ぎ倒しながら暴走する戦車のように突き進んでいく。
やがて、ボスの部屋とおぼしき最奥の部屋に飛び蹴りを食らわし、ドアを豪快に吹っ飛ばした。
思った通り、ボスらしき風格のある老人が黒い革張りの高級椅子に座り、その横には縄で縛られたフローベルが……。
「お前さんが侵入者かね。随分可愛らしいお嬢さんがうちを荒らしに来たってわけか」
「フローベルをどうするつもり!?」
巴の問いかけに、ボスは動じることなく答える。
「さて、どうしようかね……ユニコーンの角にはあらゆる病気を治癒する力があるという。さらに、角を粉末状にして煎じて飲めば、生涯健康・不老長寿になると言われておる。ワシが不老長寿になって、それでも粉末が余りそうなら長生きしたい金持ちに売り飛ばすのもありかのう」
ボスはニヤリと口元を歪めた。
「私たちの角にそんな効能があるわけないだろ……! そんなくだらない事のために、私たちユニコーンを乱獲してたっていうのか!?」
フローベルは激昂しているが、老人はまったく動揺していない。
「なに、効能がないならユニコーンを剥製にしても高値で売れるでな。お前さんの身体のすべてがワシの財産になるのじゃよ」
「ふざけるな……ッ!」
悔しさで目に涙を浮かべながらボスを睨みつけるフローベル。今まで犠牲になった仲間たちを思うと、やるせない。
巴はつかつかとボスに歩み寄り――その顔のど真ん中に拳をめり込ませた。
老人は椅子ごと壁までぶっ飛ばされ、鼻血が出ている顔を手でおおった。
「いい加減にしなさいよ、ジジイ! アンタがどんな夢を見てようがこっちは知ったことじゃないけどね、それにフローベルを巻き込むのは、私が絶対に許さない!」
ボスは「こ、この小娘、言わせておけば……!」と拳銃を抜くが、フローベルが縛られたまま体当たりを食らわせ、拳銃は老人の手を離れて床を転がった。
そこへ警察も到着し、ボスも身柄を拘束されて連行されていったのであった。
「フローベル! 大丈夫!?」
「トモエ……来てくれるって信じてた」
「当たり前でしょ。フローベルが突然いなくなって心配したんだからね……!」
巴はフローベルの縄の拘束を解いて、力いっぱい抱きしめた。
フローベルは優しいほほ笑みを浮かべて、巴の背中にそっと手を回す。
こうして、ユニコーンを狙う悪の組織、インフィニティ・フェニックスは一人の女性と一頭のユニコーン娘の活躍により壊滅したのであった。
その後、巴とフローベルはどうなったかというと……。
「トモエ、今日も早起きだね」
「会社があるからね。フローベルこそ、いつもご飯作っておいてくれてありがとう」
「なに、僕は君に養われている身だからね」
フローベルは、自由の身になったにも関わらず、今も巴と一緒に暮らしている。
「トモエとこれからも一緒に生きていきたい」と告げられた巴は、それを快諾して、今も家事を任せている。
ユニコーンは処女に懐く生き物だ。このままフローベルと一緒にいる限り、おそらく巴は一生結婚はできないだろう。
それでも巴は、フローベルと暮らしている今の状態が一番気楽に生きていけると信じている。
この二人は、これからもお互い支え合いながらルームシェアを続けていくことだろう。
人間の女性とユニコーン娘は、お互い笑顔を浮かべ、末永く幸せに暮らしましたとさ――。
〈了〉
ガール・ミーツ・ユニコーンガール 永久保セツナ @0922
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます