第10話
先ずは、
「――――!!」
「オン・キリキリ、オンキリキリ――――」
と真言を唱えながら、流れるような動きで剣印、刀印と呼ばれる印を結ぶ。
真言には小咒、中咒、大咒のように同じ神仏を礼賛するものでも真言の内容や長さが異なるものがある。
分かり易く砕いていえば、メ〇、メ〇ミ、メ〇ゾーマのようなもので威力や使い勝手が変化すると理解してもらえればそこまで間違いはない。
「――――ノウマクサンマンダ・バサラダンセンダ・マカラシャダソワタヤ・ウンタラタカンマン、ノウマクサラバタタ・ギャテイヤクサラバ・ボケイビャクサラバ・タタラセンダ・マカロシャケンギャキサラバ・ビキナンウンタラタ・カンマン――オンギャクギャクウン」
不動明王
「――――ノウマクサンマンダ・バサラダンセン・ダマカラシャダソワタヤ・ウンタラタカンマン! 不動金縛りの術!!」
約三十数秒近い詠唱を持って調伏術・不動金縛りは発動する。
神社の
「―――!?」
これは本来は
近代式符術でも取り入れられた『不動金縛りの術』であるが、近代式符術ではここまで大規模な詠唱は本来しない。
だが俺の霊力の残量と拘束力を加味すれば、古式に分類されるこの『古式・不動金縛りの術』別名『
「ふう、何とか拘束できたな……これより鬼を調伏し君を生かす」
柏手をパン! と打ち周囲の瘴気を散らすと
「原初の混沌は二つに分かれ澄んだ明白な気、
これなる陰陽師、姓は天孫たる
陰陽道の基本である。陰陽五行説では、男性は陽の気、女性は陰の気を持つとされ、五行も『木』や『火』を陽、『金』や『水』を陰、『土』を半陰半陽としている。のだが、今回の鬼神が如何なる気を帯びた鬼であったとしても、人間である俺を太陽(陽の気)、鬼神である鬼を月(陰の気)と仮定して主従の契約を結ばせる呪術がこの「式神契約の術」である。
「……」
俺の
「助けられたはいいものの……一戦を退いた俺には過ぎた式神だ……それに複数人のA級かS級が出張る鬼を禁術ありとはいえほぼ一人で調伏してしまったんだから、人手が足りない協会としては俺に現役復帰しろって言ってくるだろうなぁ~実に面倒だ」
禁呪や剣術を抜きにすれば俺の実力はC級下位がいい所なのに……
そんなことを考えていると、体長数メートルはあろうか? という大きな怪鳥の群れが現れた。
「協会の式神だな……」
するとその中の一羽が加速し落ちるようにして迫り来る。
降りて来たのは、改造した和服のような服を身にまとった美女であった。
美しい黒髪は前髪はぱつんに切り揃えられており、耳の辺りは尼削ぎと言う平安時代の髪型に似ている。後ろ髪は伸ばされており腰に届く程である。
アーモンド型の瞳は大きく虎のような薄い茶色をしている。
服の上からでも分かる。スレンダーな体つきはまるでモデルのようである。
美女は俺の前身を舐めるように見回すと、ほっとした様子で溜息を付くとこう言った。
「祐介大丈夫? 鬼は?」
「ああ、
「その犬……」
「そう……封印を破って使ったのね仁科家相伝の秘術・
「すまん。心配をかけてもらっているのにより心配させる事になってしまって……」
「いいの。祐介がそう言う人だって私は知っているもの……それでその子は?」
協会に所属する陰陽師として聞きたかったであろう。
少女……
「鬼に憑依されても自我を保った鬼憑き……生成りの少女かな?」
俺の説明に
「――――っ!? て言う事は、極めて優れた巫女……『神霊を降ろし依り憑かせる』
「俺の式神にした」
「はぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」
寂れた山間に驚愕した女の声が木霊した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
TIPS 『式神、
陰陽道では式神、
仏教・修験道系では
西洋でいうと
式神には大きく三つの種類が存在する。
1つ、この世にいる鬼神・神霊を、使役する『使役式』
2つ、異界より鬼神や神霊を喚び出し使役する『召喚式』
3つ、紙や形代に、自分や誰かの呪力を籠める『人造式・思業式神』
1の中でも蟲毒を行って恨み辛みなど負の念によるものを『蟲毒式』と言い犬神が有名
1,2の中でも人間に友好的なものを『護法式』と言う。
1の中でも調伏したものを『悪行罰式神』という。
============
『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日から中編七作を連載開始しております。
その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。
【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291
【次回連載予定作品】のリンク
https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/news/16818093077299783210
読者の皆様に、大切なお願いがあります。
少しでも
「面白そう!」
「続きがきになる!」
「主人公・作者がんばってるな」
そう思っていただけましたら、作品のフォローと、最新話ページ下部の『☆で称える』の+ボタンを3回押して「★★★」にして、評価を入れていただけると嬉しいです。
つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★
読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!
多くの方に注目していただくためにも、ぜひ応援していただけると嬉しいです!
誤字脱字報告、気になる点、感想は『応援コメント』へお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます