記録3.元村民からの手紙 1枚目

山本先生へ

 こんにちは。お元気でいらっしゃいますでしょうか。


 先日、先生が它倉村の土着信仰のことをお調べだと耳にしました。

 実は、私は它倉村の出身です。あの土砂災害の前に村を出た身ではありますがあの村の奇妙な土着信仰については少しだけ知っています。

 先生には学生時代、非常にお世話になりましたので、微力でもお力になれればと思って手紙を送らせていただきます。

 匿名なのは、正直に申し上げると、あの災害の生き残りの人たちに、万が一にも知られたくないからです。その理由も後ほど書きます。


 先生がご興味を抱かれたのは、恐らく「オクエ様」のことだと思います。


 「オクエ様」は、あの土砂崩れを起こした大它山の中腹にあった洞窟にいると言われている神様のことです。

 普段はお山から村を見守ってくれている、と言われています。けれど「オクエ様」は寂しがりやで、村民が「オクエ様」のことを忘れないように、時々、村に下りてくるんだそうです。

 その「下りてくる」というのが「土砂崩れ」のことです。它倉村は土砂崩れが異常に多い場所でした。きっと昔の村民はそれを神の怒りだと思ったんでしょうね。


 それで、そうして「オクエ様」が下りてきてしまったら、すぐにお山におかえししなきゃいけないんです。そうしないと「オクエ様」が村からも出ていっちゃうからって。


 そのための儀式があって、その内容が、ちょっと非現実的なので、お伝えしても信じてもらえないかもしれないんですけど……どう書けばいいのか悩みます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る