薄色の窓

識織しの木

薄色の窓

きみの居ぬ景色ばかりが散らばって破片が胸に突き刺さるあぁ


できるなら起こったすべてを掬いたくきみと僕とでつくった日々の


話したいことがたくさんあるあたたかい沈黙を破りたくない


少しだけ逸れて舞ってるシャトル今きみがまっすぐ返してくれた


美術室壁際に飾られているきみの素敵を持って帰りたい


図書室できみが選んだ数々はすべて僕とは釣り合ってない


合唱コンクール翼は彼方まで響けソプラノきみのソプラノ


家庭科の折り紙小箱をねだったら両てのひらに独楽のおまけが


休み時間なぜかそばには行けなくて毛布の声音離れて聴いた


朝早く教えてくれた数式が異国の文字にも見える金曜


放課後に先生に質問をする横顔僕の知らない知性


どうしたの言われて気づく制服の姿まじまじ見て風が吹く


リミットの迫る気配を背に笑いまたひとつ知る清かな仕草


放課後のひとり占めした教室に足音を待つ鞄ふたっつ


進路先訊けない僕と言わぬきみ1月2月3月が来る


転勤と言ってこの地を去ってゆく呪ってやりたいきみのとうさん


そのときが寸先にもう見えている「あのね」この手をはなすしかなく


きみのとなりに誰もいないときどうして僕はここにいるのか


ゴールデン・ウィークにきっと逢いにゆく新幹線に乗ったらすぐさ


出会うため積み重なった偶然を思えば涙さえ溢れ落ち

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