ボーナストラック① お家デート

【あなたの部屋】


「はえ~、面白かったぁ。作画がエグかったですねぇ。ストーリーも先が読めなくて面白いし、今期の覇権アニメですかねえ」


「さてと、この後はどうしましょうか。続き見ます? ……ちょっと休憩? 了解です」


 あなたの隣に座る後輩が大きくのびをする音。


「うーん……! はぁ……」


「それにしても、こうしてお部屋で一日中のんびりダラダラするのも案外悪くないですね。……そうだろそうだろ? もちろん、ちゃんとデートをしたうえでの話ですよ? 調子に乗らないでくださーい」


「ふふーん、でも……」


 後輩があなたにそっと体を寄り添う。


「こうして人の目を気にしないで、思う存分先輩にひっつけるのは……嬉しいです……」


「今日、先輩のご家族は一日帰ってこないんですよね? ワタシも親にお泊りするって言ってありますから。今日はお泊まりデートですねっ」


「え……? その信頼が逆に怖い? うぇへへ、前にも言ったでしょ? 先輩は我が家にとって、もう身内なんでーす。家族ぐるみの付き合いですから」


「逃げられませんよ……(ボソッ」


「え? なにか言ったかって? いーえ! なんにもいってないですよー」


「とにかく、今日はずーっと二人っきりです。ね、先輩?」


 あなたが後輩の頭をそっと撫でる音。


「あっ……ありがとうございます。先輩に髪を撫でられるの、大好きです」


「うぇへへ、ワタシ、本当に先輩のカノジョなんだなぁ」


「先輩の隣も、大きな手のひらも、温かいぬくもりも、他の誰にも渡しません。ぜーんぶ、ひとりじめです」


「ね、先輩。ワタシも先輩の頭……なでなでしていいですか?」


「うぇへへ、ありがとうございます」


「よしよし……いい子いい子」


「……なんか子ども扱いされてるみたいでフクザツ? うぇへへ、だって先輩かわいいんだもん」


「いい子いい子~。えらいえら~い。なでなで~」


 あなたが後輩に体を預け、それにより衣擦れの音がする。


「あっ……」


「先輩もワタシにひっつきたいんですねぇ? うぇへへへ、素直で大変よろしい」


「二人きり以外のときもこれくらい素直だったらいいんですけどねぇ。……え? 恥ずかしいからダメ? うぇへへ、仕方ありませんねぇ。じゃあ二人っきりのときは、その分もっともーっと素直になってくださいね?」


「先輩、後輩ちゃんにもっともーっと甘えていいんですよ。なでなで、いい子いい子……」


「うぇへへ、今日の先輩、素直でカワイイから、特別にワタシが沢山褒めてあげますね」


 後輩が耳元でささやく。


「先輩、毎日頑張っててえらいです。先輩が頑張ってるのは後輩ちゃんがちゃーんと知ってますからねぇ」


「でも、あんまり頑張りすぎちゃダメですよ。疲れたーって思ったらワタシのそばにきてください。後輩ちゃんがこうやって、いつでも癒してあげます」


「よしよし、いい子いい子……」


「よしよし……」


「うぇひひ、先輩、ホントにかわいい……」


「ほんとにちっちゃな子どもみたい……あっ――」


 あなたが後輩をギュッと抱きしめる感触。

 衣擦れの音。


「んっ……もう、強引なんだから。前言撤回です。やっぱり子どもじゃありませんねぇ」


「うぇへへ、抱きしめられちゃった。うぇへへへへ」


「ワタシからもお返しです。ぎゅー」


「はぁ……なんだかこうして抱きしめ合ってると、頭の奥がぽわーってします……」


「頭のてっぺんからつま先まで、じーんってして、ふわふわしてきて、全身で先輩を感じられて……うぇへへ……ワタシ、とろとろになっちゃいますよ……?」

 

「先輩も、ワタシをぎゅーってするの大好きですよね?」

 

「うぇへへ、しょうがない甘えんぼさんの先輩ですねぇ」


 あなたが後輩を抱き寄せたまま、自分の頭を後輩の胸元に寄せる音。


「んんっ……」


 トクントクンと後輩の心音が聞こえる。


「先輩……ワタシの心臓の音聞くの、すっかりクセになってません? うぇひひ」


「ふふ、後輩ちゃんは今日もちゃーんと生きてますよ」


「先輩の一番近くにいますから安心してくださいね」


 後輩があなたの背中を優しくトントンする音。


「ほら、いい子いい子……背中をトントンしてあげますね」


 しばらくトントンが続く。


「え? 眠くなってきた? うぇへ、いいですよ。このまま寝ちゃっても」


「先輩が寝落ちするまで、後輩ちゃんが背中をトントンしてあげますね」


「あ、でも眠っちゃう前に、一つだけ後輩ちゃんからお願いがあります」


 間があく。

 

「ね、先輩」

 

「その……」



「キスして?」


 

「だってぇ、せっかくのお家デートで、大好きな先輩が吐息を感じるくらい近くにいるのに……」

 

「なのに、キスはおあずけなんて、そんなの切なすぎます」

 

「ね? だから、キスしてください」


「……ね?」


 衣擦れの音。

 あなたが後輩の唇にそっと自分の唇を重ねる音。


「んっ……」


 何度か、唇を重ね合う音。


「はっ……せん……ぱい……」


 こぼれる吐息の音。


「はあ……幸せ」


「大好きです、先輩」


「ほんとにほんとにほんとーに……大好きです」


「ずっと、ワタシと一緒にいてくださいね?」

 


「じゃあ、先輩――」


「おやすみなさい」


 以降、しばらく背中をトントンする音が続き、フェードアウト。


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