12話 姉妹で秘密の話をします
時は少し遡り、春希がデートへ行った日に遡る。
*
私、坂下美帆は、妹の彩美に『大事な話があるから』言われたため、妹と向かい合わせで座っていた。
今あんまり気分良くないから今度にして欲しかったんだけどなぁ……
「お姉ちゃん被告」
「何で被告になってるのよ……」
「まずはコチラを見たまえ」
「その変なキャラには突っ込まなくていいわね?」
そう言って彩美は一枚の便箋を取り出した。
「こ、これは……」
裏を見ると"美帆"の文字。
「お姉ちゃん被告に問う。これは何かね? 答え次第では懲役だぞ」
「彩美……中身…………見た?」
「み、み、みみ、みみみ見てないよ!? お姉ちゃんが部屋から出てった後に手紙が落ちてたから拾って裏を見たらお姉ちゃんの名前が書いてあって『なんだろうこれ……』って言いながら中身覗いたらお義兄ちゃん宛てに『放課後に話したいことがあります』って書いてあったからお姉ちゃんがお義兄ちゃんのこと好きなのかと思ってビックリしただけだよ!?」
「 うん、彩美が私を何で呼び出したか何となく分かったわ。説明ありがとう」
内心、妹に手紙を見られてしまったことにはかなりドキドキした。けれど、自分でも驚くくらい、意外にも冷静だ。というか少し安心感も感じる。
もしかしたら、誰かにこの気持ちを知って欲しかったのかもしれない。
「てことでお姉ちゃん被告、どうなのかね?」
「切り替え早いわね!?」
「はにゃ? にゃんのことかにゃ?」
「キャラ定まってなさすぎて動揺してることがよく分かった」
妹は緊張を隠し切れていないが、もう察しているだろう。私は事の大筋を彩美に説明する。
「かくかくしかじかで……」
「ふむふむなるほどね。てことはお姉ちゃん……もしかしなくても…………」
妹の口から言わせる前に、私は覚悟を決めて妹に告げる────
「────えぇ。私、春希のことが好きよ」
「…………はい、死刑確定です」
「何でよ!?」
「だって…………」
バンッ、と机に両手を叩きつけ、私の目を真っ直ぐ見ながら彩美は大きな声で訴えかけてきた。
「お姉ちゃん、お義兄ちゃんのこと好きじゃなくて、大大大大大大(以下略)大好きでしょ!? お姉ちゃんは嘘をついています。もっと自分の気持ちに正直になった方がいいよ!」
「ダメよ。春希の彼女は私の大切な友達のだし……」
「お姉ちゃんの気持ちはそんなもんなの!? いくら仲の良い友達の彼女でも、あんなにモテるのに一回も彼氏作ってこなかったお姉ちゃんが好きになった人だよ!? 簡単に諦められる!?」
「…………っ!」
別に諦めたわけじゃない。そう思っていたのに…………彩美にそう言われて言葉が出なかった。
私は心のどこかでもう勝てないって思っていたのかもしれない。
「あぁもう焦ったいな〜! もういっそのこと、奪っちゃ…………お義兄ちゃんにお姉ちゃんのことを惚れさせよう! うん、そうしよう」
今、奪っちゃおうって言おうとしてたわよね……?
「お姉ちゃんの性格上、友達から奪うことはできないし、ただ付き合えればいいってわけでもなさそうだから……同じ屋根の下で住んでることを利用してお義兄ちゃんを惚れさせよう!」
「そんなこと……出来るの?」
「お姉ちゃんって普段は何でも出来るのにこういう時になると途端にポンコツになるよね〜。まぁいいや。それで? やるの? やらないの?」
「…………や、やるわ! うん。確かによくよく考えたら、何で春希に彼女が出来たからって諦めてるのよ私……! どうせ春希には彼女がいるんだし…………当たって砕けろよ!」
多少彩美に流された感はあったけど…………そうだ、私は負けるわけにはいかない。
また二番目になるわけにはいかない。
「よく言った! それでこそ私のお姉ちゃんだよ」
笑顔でブンブンと私の手を振る彩美。本当に良く出来たいい妹だわ。
「てことで、早速春希に告白よ……!」
「はぁっ!? お姉ちゃんバカなの!? アホなの!? マヌケなの!? 脳みそお花畑なの!?」
「そ、そこまで言わなくても……」
「いやいやどういう思考になったらいきなり彼女持ちの男の人に告白しようってなるの!?」
「同じ屋根の下で住んでることを活かしてっていうから、このタイミングなら他の邪魔も入らないし……」
「そういう問題じゃないよ!? 何で頭良いのに誰でも分かりそうなことが分かんないの!?」
「うぅ…………」
だって私、恋愛とかしてこなかったからあんまりそういうの分からないのよ……
「まぁいいや。お姉ちゃんを惚れさせるのは私に任せて! 多分、誰よりもお姉ちゃんの良いところも悪いところも知ってるから!」
「いや悪いところ教えちゃダメよね!?」
「ダメだけど……お姉ちゃんはどうせ同じ家に住んでるんだから、悪いところはいずれバレちゃうし。だったら、全てを
「た、確かに……でも、そんなこと出来るの……?」
「出来るよ! 私に任せて!」
目から星が出ててるんじゃないかってくらい強い眼差しで見てくる彩美。そんな目で見られたら答えは一つしかない。
「わ、分かったわ。よろしくお願いしますね。し、師匠!」
「うむ。良かろう弟子よ。よーし! ってことで、早速作戦会議だよ!」
いつの間にか裁判官から師匠になってるわウチの妹。って……
「いくら何でも早速すぎないかしら!?」
「善は急げだよ! 恋愛には運命とかフィーリングもあるけど何にも勝るものは時間だからね!」
善は急げってその使い方合ってるかしら……?
「な、なるほど?」
「てことで、お義兄ちゃんのデートの次の日、作戦を決行します!」
「そんな急に……?」
「うん。私の情報によると、お母さんとお義父さん、その日出掛けるみたいだから」
「いやその情報どっから!?」
「それは秘密で〜す☆」
この妹……さてはスパイかしら?
「それで、その日に何をするの……?」
「ゲームをします!」
「ゲーム……? ポッキーゲームとかかしら?」
ノンノンノンと言いながら、彩美はあるゲームのソフトパッケージを取り出した。
「も、モリオカート……」
「そう、モリオカート」
「それで上手くいくの……?」
彩美に任せたものの、早速不安しか感じないのだけれど……
「大丈夫大丈夫! 絶対上手くいくよ! ポッキーゲームとかでも良いけど、多分お姉ちゃんが恥ずかしがっちゃってダメだし、いきなりやるのも変でしょ?」
「確かに……」
「でも、モリオカートなら普通にやってくれると思うんだ。そこで攻める!」
「攻めるって……どうやって攻めるのよ?」
「例えば、カートと一緒に身体も動いちゃう人っているじゃん? お姉ちゃんもその設定でいこう!」
「えっ!? そんなのすぐバレちゃいそうじゃないかしら?」
「大丈夫大丈夫! お義兄ちゃんはお姉ちゃんの演技に気づく余裕なんてないから。そんで、私がタイミングよくトイレとかで抜けるから……そこでお姉ちゃんが倒れすぎてからの……」
「からの…………」
「覆い被さっちゃおう!」
「えっ!? い、い、いいい、いきなりすぎないかしら!? ほら、そういうことって準備とか色々あるし、一応日にちとかも知っておかなければいけないし、それから……」
「落ち着いてお姉ちゃん! 覆い被さるけどそういうことじゃなくて。 雰囲気を作るんだよ!」
「雰囲気……?」
「そう。『あれ? これってキスのタイミング……?』って思わせるの! まぁ、多分お兄ちゃんは目瞑ったりしても彼女いるし靡かないだろうから、お姉ちゃんの方から攻めよう!」
「攻めるって……本当にキスを……」
「そこはしないよ! あくまでフリ。フリでいいの。いきなり彼女持ちにキスしても嫌われそうっていうか避けられちゃうだろうしね」
「でも、どうするの?」
「そこは私がタイミング見て戻るから問題なし!」
「そ、そう」
「これで完璧……と言いたいところなんだけど、本当は、メインはモリオカートじゃないんだけどね……」
「じゃ、じゃあ何なのよ」
「それは……罰ゲームです!」
「ば、罰ゲーム……!」
「普通にやってもつまらないしって理由で、ビリになった人は一位の言うことを聞くってことにしよう。そんで、私とお姉ちゃんが手を組めば……」
「……私が春希に命令出来る!」
「その通り! この作戦なら、普通にやる程で自然に攻めることが出来るし、罰ゲームで無茶な要求も出来て一石二鳥!」
「お、おぉ!」
この子、詐欺師にもなれそうね。
「いくら彼女がいるとはいえ、お義兄ちゃんもお姉ちゃんのことを意識せざるを得なくなるよ。お姉ちゃん、私と違って大きい方だと思うし、身内贔屓抜きで可愛いし。てことで……頑張ろうね、お姉ちゃん!」
「う、うん……!」
こうして、私と彩美の大作戦が決行されることになった。
私は────春希の一番になるのよ!
✂︎-----------------------------------------------------キリトリ
〈後書き〉
前回に引き続き、沢山のフォロー・評価等ありがとうございます!
そして、一万PV突破しました! これも読んでくださる読者の皆様のおかげです! 本当にありがとうございます🙇♂️
前回もお伝えしました通り、質を高く保ちたいため更新頻度は遅いと思いますが、フォローはそのままで、これからもよろしくお願いします!
評価・コメント等くださると励みになるので執筆スピードがあがるかもしれません笑
それでは次話でまたお会いしましょう!
【祝!1万PV突破!】学校一の美少女の彼氏になったけど、学校で二番目に可愛い美少女と同居してます ハンくん @Hankun_Ikirido
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