第11話 二人の関係
「位の高い?」
――いきなりそんな事言われても。
正直、このリアクションで精いっぱいだ。
『いきなりこんな事を言われてもどうすればいいのか分からないって感じだな』
『仕方ないよ。だって私たちも驚いているから』
――そう言っているけど、あんまり驚いている様に見えない……。
「で、でも位が高いって事は……」
つまり「えらい」という事になる
『ここまでの事を考えると、光の種族だろうが……』
なぜか男の子はそこで言葉を区切る。
「どうしたの?」
『えーっとね。実は私たちようせいって種族ごとにそれぞれで生活しているのだけど』
「え、でも二人は……」
違う種族なのに一緒に行動をしている様に思う。
――あ、でも。
さっき女の子が「違う種族でも仲が悪いワケじゃないから」と言っていたのを思い出した。
『あー、まぁ。今はだいぶ変わって違う種族でも仲が良いけどよ』
『前は違ったよね』
「違った?」
『ああ。おれたち。実は
「え! あ、でも……」
言われてみると、何となくそんなふんいきがあった様にも思える。
――確かにやけに仲が良いとは思ったけど。
まさか兄妹だったとは……。
『おれたちの両親はそれぞれ違う種族だった。今もだいぶ変わったけど、結婚は同じ種族じゃないと認められない。だから……まぁ、二人とも周囲にはかなり反対されたらしい』
その反対を押し切ったのだろう。
『結局、反対を押し切ったのもあってどちらの種族の中にいる事は出来なくて……両親はその仲間たちと別れて二人だけで私たちを育ててくれた』
『言ってしまえばおれたちは「はぐれ者」だな』
「……」
二人にはきっと私には想像も出来ない苦労があったのだろう。
――でも……。
今の二人が楽しそうにしているのなら、それでもいいのかなと思う。
『少ししんみりしちゃったね。でも、元々種族の間で仲良くしちゃダメって決まりはないから「はぐれ者」というよりは「るろう」とか「自由人」って方が近いかも』
その女の子の言葉に、男の子も『そうだな』と言って笑った――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『それで……だ。実は今回関わっていると思われる光の種族だが……』
「ん?」
――どうしたのだろう。
なぜか男の子はまたも途中で言葉を区切る。
『えーっとね。実は光の種族ってさっきも言った通り結構変わっていてね。何というか……私たちとは違うというか……』
――変わっている?
話で聞く限り相当な変わり者だという事は分かった。
『まぁ、着ている服もかなり個性的ではあるな』
――着ている服が個性的……あ。
ここでハッとした。
一度だけ、たった一度だけだったけど、かなり個性的な服を着ていた「ようせいさん」の服を直した事があったのだ。
『どうしたの?』
「あ、えっと……」
私は素直に思い出した事を話した。
「――ここに来る前の話なんだけど。実は一度だけ直した事があって……確かに特徴的だった気がしたな……と」
『なるほどね』
女の子は小さくうなずく。
『ねぇ……。あなたは私たちの服ってふつうのあなたたちが着ている様な服に見える?』
「え」
突然の質問に、思わず固まってしまう。
――ど、どういう意味だろう?
確かに私から見ると、二人の「服」は私が着ている様な「服」にしか見えない。
『実はコレね。人間で言うところの皮ふみたいなモノなの。ほら、あなたが直してくれる時も着たりぬいだりしていないでしょ?』
「あ」
――言われてみれば。た、確かに。
『言ってしまえば、お前のしている事は治りょうと一緒って事だ』
「治りょう……?」
――え、じゃあ。失敗すると死んでしまうかも知れないって事?
そう聞いてしまうと、自分がこの子たちにとってかなり重要な事をしているという事に気づかされる。
よく今まで何事もなく来れたな……とすら思ってしまう。
『でも、私たちを治りょう出来る人間はいないに等しいの。緑のようせいも回復のまほうが使えるけど、それは本当に小さい傷だけ。もし、治りょうされずにいたら……時間とともに弱って消えるだけ』
「そんな……。え、ちょっと待って。今回の話って、池里くんを応援したいって光の種族のえらい人がまほうを使ったって話じゃないの?」
『まぁ、そうだとは思うが……』
「?」
『あのまほうの感じが……どうもな』
『え、ちょっと待って。それって……』
女の子はハッとした表情で男の子を見る。
『――そのまさかだ』
『いや、でもそれはさすがに……』
『ない……とは言い切れないだろ』
何やら言い合いを始めた二人の次の言葉を待っていると……。
『もし、そうだとしたら……とんでもない話だよ』
『ああ、相手は種族の長……だからな』
「?」
そう言って二人は私の方をジーッと見つめた――。
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