第10話 光の種族
「ふぅ……」
『おつかれさま!』
『ねるだけどな』
なんとかお母さんが帰ってくる前に帰ることができ、その後はすぐにご飯にお風呂……と済ませてあとはねるだけとなった。
その間二人は私の部屋で大人しくしてくれていたみたい。
――というより、いきなり人間の部屋でどうすればいいのか分からない感じだったのかも。
お父さんとお母さんに二人の姿が見える事も、声が聞こえるという心配もない……はずだ。
でも、何か物が落ちた時に出てしまう「物音」に関しては別で、そういった事に注意をしないといけない。
それも考えて二人は私の部屋にいるのが一番安心だと考えたのだろう。
――でもまさか人形みたいに固まっているとは思わなかったけど。
多分、お母さんが突然部屋に入ってくるかも……と思ったのかも知れない。ただ、そんな二人の姿を想像すると……思わず笑いそうになってしまったのはここだけの話だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それで? 池里くんがようせいに好かれやすいって話は本当?」
『ああ、多分な。まぁ、何度も言うようにおれたちは種族関係なしにそもそも人間がきらいではある。ただ、お前みたいにおれたちが見える上にいやせる人間はかなり貴重なんだが……それはまた別の話だな』
――いやせる?
その言葉に少し疑問を持ったけど、どうやら今回の話にはあまり関係ないらしい。
『でもさ。さっきのあの子の話を聞く限り一番ありえそうなのってやっぱり?』
『ああ。光の種族……だろうな』
「光?」
――何となくイメージは出来るけど……合っているのかな?
今まで会った事のある「ようせいさん」たちはそんな話をした事がなかった事もあって、何となくイメージをするしかない。
『まぁ、そのまんまのイメージで合っているけどな』
「え、光……スポットライト……みたいな?」
『そうそう。それで考えられるのは……多分、あの男の子がキーホルダーを作っている時に力を貸したんじゃない?』
「作っている時に……」
確かに、それなら「糸にまほうを使う」という二人の話も一緒に考えれば全てつながる。
『あのレギュラーって話の件もそうだろうな。くわしい話は知らないし、おれはえらい人でもないからよく分からないが、まずは目に止まらないといけはずだろうから』
「そうだよね」
たくさんいるクラブの人たちの中で目立とうと思ったら、まず目に止まらなくてはいけない。
――なるほどね。良くも悪くも……注目される……か。
「でも、どうして? 池里くんに? 池里くんはようせいさんが見えないはずじゃ……」
そう言うと、女の子が『あーそれは……』とまたも言いにくそうな表情を見せる。
「ん?」
――ど、どうしたんだろう?
さっきから活発な印象が強い彼女にしてはめずらしい顔が多い。
『多分。応援したいと思ったから……じゃないかな?』
「え? 応援したいと思ったから?」
思ってもみない回答に思わずキョトンとしてしまう。
『あー、確かにそういうところあるよな。自分が助けたい。応援したいと思ったらつい力を貸しちまうところ』
どうやら男の子にも思い当たる事があるらしい。
『あいつらは気持ちが先に行くところがあるからな。自分の姿が見えていようがいまいがお構いなしだ』
『健気……っていえばいいのかな。しかも、ただカッコいいとかかわいいじゃなくてあくまであの子たち独自の感覚だから好かれる方法も……コレと言ってないね。あくまで力を貸したいという気持ちだから』
「……」
つまり、同じ光の種族でもようせいさんそれぞれの好みだから分からないという事なのだろう。
『でもまぁ、悪い事ばっかりでもなかったはずだろ? 女子のチヤホヤされてレギュラーにもなれたんだからよ』
「それは……そうかも知れないけど」
『レギュラーはともかく、女子にチヤホヤされるのをどう思うかは人それぞれでしょ』
「うん」
これには私も同じ意見だ。
――人によってはうれしい事でも、その人にとってはうれしくない事だってあるだろうし。
私は池里くんではないから彼の気持ちは分からない。でも、少し困っている様に見えた。
『まぁ、それはそれとしてなんだけどよ』
「?」
そんな私たちの様子を見て、男の子はすぐに話題を変えた。
『あのキーホルダー。ちょーっとばかり力が強すぎる気がしたんだよな』
この男の子の何気ない言葉に女の子も……。
『あ、それは私も思った』
――え。
「そ、そんなに?」
不思議に思いたずねると、二人とも『そんなに』と口をそろえる。
『元々光の種族は力が強い方じゃないからな』
『というより、そもそも私たちようせいが強い力を使えないね。本当にこんな効果があるかも……っていう程度』だし
「え? じゃあ……」
『ああ。本来ならレギュラーは本人の努力もあるだろうからともかく、女子に突然モテモテになるほどの目に見える変化が起きる事はないはずだって事だ』
『それに、見たでしょ? あのキーホルダー』
「え、うん」
『あれもあんなに光るはずがなくてね。ふつうは』
「? え、どういう事?」
話が見えてこなくて思わず聞き返す。
『そうなると……。これはあくまでおれの予想だが……』
「?」
『あのキーホルダーはおれたちよりも位の高いようせいが関わっているかも知れないな』
そう言う男の子に対し、二人の話がいまひとつよく分かっていない私は……ただただポカーンとするしか出来なかった。
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