理系の男子高校生の筑波博は、気がつくと戦国時代にタイムスリップしていた。しかもそこは史実とは異なり、機神(くりかみ)と呼ばれるからくり鎧をまとって武将たちが戦うメカニカルな世界だった。戦死した松平元信(徳川家康)から機神を託された博は、ひょんなことから織田信長に仕えることに……。
戦国サイバーパンクとでもいうべき、歴史小説とSFの融合した独特な世界観がいいですね。
人並み外れた剛力と特殊な武装を装着者に与える機神ですが、その力の源は精神の強さ。これまで喧嘩や争い事とは無縁で生きてきた博には、機神の真の力を発揮できない。
臆病者ながらも自分が死なないため、そして無駄な犠牲を出さないため、必死に知恵を絞り、機転を巡らせる姿が真に迫って引き込まれます。
戦いたくない博ですが、武田家への復讐を誓う諏訪かえでの寄騎を命じられ、三河国の平定を急ぐかえでの独断により一向一揆との戦いに巻き込まれていきます。
果たして最強の武田軍団を相手に現代知識や技術がどこまで通用するのか。今後の展開に期待です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)