同級生のヤンキーJKに癒されるASMR

黒ノ時計

同級生のヤンキーJKに癒される

注:( )は環境音、状況説明、(※)はあなたの台詞です。


(学校のチャイムが鳴り、放課後になった。そこに、あなたの同級生でクラスメイトのヤンキーJK「藤堂美希」が近づいてくる。彼女は普段、顔が怖く、髪を金色に染めているため皆んなから避けられており、あなたも彼女の接近に怯えている)


「おい、あんた」


(ガタッと椅子を鳴らす)


「何ビビってんだ、何もしねえよ。ちょっとだけ用がある。面、貸してくんね?」


(※嫌だ、と言ったら?)


「こんなこと言うのはあれだが……。お前じゃなきゃダメなんだよ! (声を小さくしながら)嫌だってんなら、無理強いはできねえけど」


(※……まあ、ちょっとくらいなら)


「来てくれるのか! ……ああ、いや、違う。ごほん、ならさっさと来い」


(あなたは渋々、彼女の後を付いていく。そしてやってきたのは、学校の裏庭で育てている花壇だった)


「お前をここに連れてきたのは、先生が花壇のことはお前に聞けって言ってたからだ。お前、環境委員で花を育ててたんだろ? でも、今年は私の役目になっちまって……。こいつら、うまく育たないっていうか、良いところまでいっても枯れたりするし……。だから、どうすりゃいいか聞きたいんだ。何が悪いんだ? 考えても、調べてみても、全然わかんねえ」


(※クスッ)


「おい、何で笑うんだ。何かおかしなこと言ったか? ああ!?」


(※いや、藤堂さんって真面目だなって)


「私が、真面目? はあ? お前なあ、私は至って真面目な人間だぞ。確かに、中学の時はヤンキーしてたけど、今は普通だ」


(※でも、髪を染めてる)


「髪? ああ、これのことか? これ、染めじゃなくて地毛。母親がイギリス人だかんな」


(※知らなかった)


「言ってねえからな、誰にも。周りが勝手に染めてるって勘違いしたんだ。私はハーフってことで弄られるのも嫌だったから、そのまま噂を放置したってだけで」


(※ごめん)


「は? 何で謝るんだ? お前、何も悪いことしてねえだろ」


(※だって、勘違いしてたから)


「勘違い? もしかして、私がヤンキーだとか、怖いとかって感じのか?」


(あなたは首を縦に振る)


「それこそ、謝る必要なんてねえ。そもそも、元とはいえヤンキーだったのは事実だし、口調とかもヤンキーのまんま、目つきが怖え自覚もある。どっからどう見てもヤンキーだろ」


(※でも、それは見た目だけだと分かった)


「それは見た目だけだと? 分かってねえな。見た目や言動がヤンキーなら、周りからしてみればヤンキーと同じなんだよ。ほら、第一印象ってやつだ。人は中身なんてそうは見てくれねえ。両親だって……。いや、何でもねえよ。ともかく、教えてくれてありがとな。取り合えず、自分の力で何とか……」


(※良ければ手伝う)


「手伝う? 私のことを? 何で? これは私の仕事なんだから、私が責任をもってやるべきだろ」


(※花壇は広いし、一人より二人の方が早く終わる)


「……確かに、ここは広い。一人でやったら、一時間じゃ終わらないかもな。……手伝って、くれるんだな?」


(※うん)


「そうか。なら、よろしく頼む。もっと、お前に聞かなきゃいけねえこともあるだろうし。やりながら、教えてくれ。この礼は、必ずしてやるからよ」


(~~~次の日、学校の昼休みになってチャイムが鳴り響く。すると、あなたの席にヤンキーJKの美希がやってきた~~~)


「よお、昨日はありがとな。おかげで、一時間くらいで終わっちまった。お前から聞いた方法、これからじっくり試していくからよ。綺麗な花が咲いたら、見に来てくれ」


(※うん、そうする)


「そうか。それでよ、その……。礼をするって言ったろ。ヤンキーってのは別に、柄が悪いってだけじゃねえんだ。尽くされた恩は、礼を以て尽くす。絶対に借りは作ったりしねえんだよ。それで、男が喜びそうなことを調べたら……。ほら、異性の作る手作り弁当は喜ばれるってネットに書いてあったからよ。だから、作ってきた」


(※じゅ、重箱?)


「重箱って、別に普通のサイズじゃねえのか? 男は食べ盛りだから、いっぱい食べるだろうと思ってよ。私も結構食うし、二人でシェアしながら食べようぜ。それとも、嬉しくねえのか? ……ま、まさか、弁当って重たかったか?」


(※そんなことない! ありがとう!)


「そ、そうか。喜んでくれてるなら、いい。なら、早速食べ……。いや、周りの奴らの視線もあるか。よし、場所を移すぞ。良い場所があるんだよ。ほら、行くぞ」


(あなたは彼女に連れられて、屋上にやってきた)


「学校の屋上。どうしてか、立入禁止にも関わらず鍵は開いてんだよな。そして、ご丁寧に座る場所まで用意されてる。監視カメラみたいなのもねえし、こっちから鍵をかけちまえば誰も屋上には入って来れねえよ。そら、そこのベンチに座んな。私も隣に座るからよ。……んしょっと。ほら、お待ちかねの弁当だ。この三段の重箱には、一番下に白飯、二段目と三段目におかずが入ってる。まず、一段目は野菜だ。体の資本ってんなら肉かもしれねえが、健康のことを考えるんなら好き嫌いせずに食わねえとな。まず、ほうれん草の胡麻和えだろ? それから、もやしのバター炒め、スイートコーン、キャベツの千切りはイタリアンドレッシングとミニトマトのトッピング……。くらいか? まあ、とくと味わって食べてくれ。ほら、箸もここにあるからよ。どれでもいいぞ。好きなのから食ってくれ」


(※いただきます)


(あなたはほうれん草の胡麻和えから食べることにした)


「ほうれん草か。あんま自信がねえんだが、塩気が強すぎたりしたら言ってくれよ。一応、味見はしてるんだが、私はたぶんだけど舌が馬鹿だからよ。味見してもらわねえと何とも言えねえ」


(※すっごく美味しい!)


「そ、そんな嬉しそうに言われると照れんだろ……。ほら、まだまだあるぞ。もっと食え。そっちのもやしのバター炒めは自信作だ。と言っても、油を敷いたフライパンにもやしを放り込んで、バターと塩と醤油を入れて焼いただけだけどな。お上品な飯よりも、どっちかっていうと男料理って言えばいいのか? 豪快に具材を入れてパァーッと火にかけるのが得意なんだよ」


(※こっちも美味しい!)


「そうか、そうか! そんな頬にリスみたいに食べ物詰めるくらい美味いか! 誰かのために料理作ったのは、幼い頃以来の話だからな。喜んでもらえるのは、やっぱり嬉しいな。スイートコーンとキャベツに関しては、適当に切って味付けをしただけだが……。実は、ちょっとひと手間加えてっから普通に食べるよりも美味いと思うぞ? ほら、食ってみ」


(あなたは言われた通り、キャベツとスイートコーンをそれぞれ口にしてみる)


(※っ!? 美味しい!)


「だろ? キャベツはシャキシャキで瑞々しいし、コーンは甘みが強いだろ?」


(※うん! どうやったの?)


「コーンはサラダ油で周りをコーティングしてから、軽く火をかけたんだ。中の甘みは閉じ込めたまま、ちょっとパリッとした食感になんだよ。キャベツの方は、切ってから一分くらい蒸して水揚げした。何かの番組でやってたんだが、こうするとシャキシャキになるって見様見真似でな」


(※料理ができるなんて凄いね)


「料理ができるのが凄い? そ、そうか? 料理ができる女子なんて、別に珍しくないだろ。私の場合は半分以上は趣味だからな」


(※じゃあ、残りは?)


「残りか……。そうだな……。まあ、隠すことでもねえから話しとくか。母親は幼い頃で病死しててよ。父親はそのショックで鬱になって、今は病院にいる。私は、父親の両親……つまり、爺さんと婆さんのところに引き取られて今は暮らしてる。あの二人、普段は優しいけど厳しくてな。中学くらいに反抗期になって、二人に反発するためにヤンキー始めたんだよ。染めなくても元から金髪だしよ、半グレくらいでちょうどいいってな」


(※じゃあ、何でやめたの?)


「辞めた理由? そりゃ……。こんなことしても、意味ねえって気づいたからだ。父親が母親の死から逃げたように、私も自分にとって都合の悪い現実から逃げてた。でも、逃げてるだけじゃ何も変えられねえ。そりゃ、逃げなきゃいけない時もあるけどよ。ここぞと言う時、人は戦わなきゃいけねえんだ。自分の弱さとよ。結果、私はヤンキーから足を洗って真面目に生きることにしたんだよ。ただ、ヤンキーだった頃の癖がまだ残ってるせいか、未だにヤンキーってレッテルは変わんねえがな。こればっかりは、自分の業だと思って受け入れてる。まあ、変えようと思えば変えられるんだろうが、自分的にも今の自分が気に入ってるせいか変える気もなくてよ。爺さんと婆さんに聞いたら、人前でちゃんとしてるなら何でもいいってさ。一応、先生の前とかでは敬語使って喋んてんだぜ」


(※全然知らなかった)


「誰にも言ってねえからな。それに、先生と私が話すところを見るやつも滅多にいねえし、興味もねえだろ。すまん、身の上話が長引いたせいでご飯が進んでねえな。昼休みは……あと十五分くらいか。私も食べるの手伝うから、さっさとメインを食おうぜ。こっちの二段目はな……。ハンバーグに、からあげ、てんぷらも用意してんだ。こっちは脂っこいもんばっかだが、だからこそ三段目の白飯だ。私ら二人なら、完食できるさ。そら、食うぞ!」


(それから、あなたと美希で一生懸命ご飯を食べ、何とか五分前までには食べ終わることができた)


「ふぅ、食った、食った。何とか間に合ったな」


(※ご馳走様でした。美味しかった)


「おう、お粗末さまだ。私の料理なんかで喜んで貰えるなんて、お前は安い男だな。これでお礼になってくれればいいんだが」


(※程度じゃない。凄いことだ)


「程度じゃなくて、凄い? ……お前、本当に嬉しいことばかり言ってきやがって……。お前、女たらしの才能があるんじゃないのか?」


(※どうして?)


「どうしてって……。いや、分かんねえならいい。ともかく、これで礼は尽くしたからな。お前も、あんまり馴れ馴れしく私に話しかけんなよ? クラスの奴らが私のことをどう思ってるかなんて、分かってんだろ? 私とつるんだら、他の奴らが逃げちまうからよ」


(※それは嫌だ)


「嫌だってお前なあ……。ガキじゃねえんだから、聞き分けのないことは言うもんじゃねえ。お前はもっとクラスの奴らを大事にしてやれ。友達だっているんだろ?」


(※いる)


「だろ? なら……」


(※友達は藤堂さんだ)


「私が、友達……? い、いや、だからな……」


(※そもそも、クラスに話すような友達はいないし。藤堂さんくらい)


「え、元々いない……? そうだったか? そう言えば、お前ってあまり目立たないしな……。それは、すまなかった……。でも、それなら猶更だろ。私が、その……。友達なんかになったら、これからお前は友達ができなくなるかもしれないんだぞ? ヤンキーとつるんでるような奴だって、勝手に勘違いされてよ。それでも、いいのか?」


(※それでもいい)


「……分かった。言っておくが、私は約束を破る奴は嫌いだからな。一度、私と友達になるって言ったんなら最後まで裏切るなよ?」


(※もちろん)


「……本当に分かってんのか? 断る最後のチャンスだって言ってんのに……。まあ、いい。お前がいいなら、もう余計なことは言わねえよ。私とお前は、今日から友達だ」


(※うん)


(そのとき、次の授業に向けた予鈴が鳴り響いた)


「おっ、もうそんな時間か……。ほら、行くぞ。授業に遅れちまったら、速く食べた意味がなくなるからな」


(※お弁当、こっちが持つよ)


「弁当を持ってくれる? いや、そんな気は遣わなくてもいい。元々、これはお礼のつもりで私が持ってきたからな。それに……。友達、なんだろ? あまり、パシリみたいなことさせたくねえし。だから、な? 一緒に教室、戻ってくれよ。それで、いいだろ?」


(※……うん!)


(~~美希と友達になってから暫く経った別の日、体育の授業でバスケットをやっていたとき……~~)


「よし、こっちだ! ナイスパス! 次は……」


(※藤堂さん! 危ない!)


「え、男子の方のボールがこっちに……って、お前! 待て!」


(あなたは美希に飛んでいったボールをガードしてキャッチすることはできたが、フローリングの床で左腕の肌を擦りむいてしまう)


「大丈夫か!? おい、しっかりしろ!」


(※だ、大丈夫……)


「大丈夫じゃねえだろ! ああ、左腕から血が……。待ってろ! 今、保健室に連れてってやるから! 先生! 私、こいつを保健室に連れてくんで抜けます!」


(美希はあなたをお姫様抱っこして保健室へと駆けて行った)


「……ほら、今怪我を治療してやるからな。消毒液を綿に染み込ませて……。ほら、ちょっと痛むが男なら我慢しろよ」


(※痛い……)


「当たり前だろ、擦りむいたんだからな。こんな血まで流しちまって……。ほら、次は絆創膏だ。ほら、一、二の三って掛け声いくぞ。一、二! ……三。ほら、痛くなかった」


(※……二で貼った)


「文句言うな。お前、三で貼ろうとしたら腕を引っ込めたかもしれねえだろ? 怪我したところに貼るのはいいが、ズレたところに貼るとむしろ肌が悪くなる。それに、私は三で貼るとは一言も言ってねえからな」


(※ありがとう)


「礼を言うのは、むしろ私の方だ。ありがとな、ボールから庇ってくれて。でも、お前も無茶し過ぎだ。あれくらい、私なら普通に取れたってのに。横から急に飛んできたかと思ったら、全身でボールを受け止めやがって……。どうして、あんな無茶したんだよ?」


(※母さんから聞いたことがある)


「お前の母親から? 何を聞いたって?」


(※女の子の顔は大事なものだから、傷つけたらいけないって)


「女の顔は大事なもん……。それで、私の顔面に向かってボールが飛んできてたから、咄嗟に庇ったってことか?」


(首を縦に振る)


「お前って奴は、お人好しにも程があんだろ……。結果、私の顔は傷つかなかったかもしれねえが、お前の肌が剥けちまったら世話ないだろ」


(※これくらい平気)


「平気じゃねえ。人の顔を大事にする前に、まずは自分の体を大事にしろってんだ。お前は良いかもしれねえが、それを見たお前の母親は悲しむんじゃねえのか? もっとよく考えて行動しろ。さっきの発言も、少し自分の体を軽んじすぎだ」


(※ごめんなさい)


「……分かったんなら良い。そんな悲しそうな顔すんなって。別に怒ってねえから。むしろ、私のことを……。守ろう、と、して、くれたんだろ? なら、もっと胸を張ってくれよ。私は、その……。男に守られたことって、一度もねえんだ。私は、男勝りだからな。見た目も怖えし、大抵の奴は睨みを効かせたらビビッて逃げちまうし、実際に殴り合っても良い勝負できちまうし。見ろよ、この二の腕。ちょっと力を入れると……。ほれ」


(※凄い……。筋肉ムキムキだ)


「ムキムキとか言うなよ、はずいだろ。私、筋トレが趣味だからな。家では結構鍛えてて、休日もジム行ったり、走り込みしたりすんだよ。そうしたら、こんな体にな……。ともかく、私は女の子扱いされたことって両親か、あとは爺さんと婆さんくらいにしかねえからよ……。家族じゃない誰かから、女の子って言ってもらえて実はちょっと嬉しかったりするんだぜ……?」


(※ふふ)


「わ、笑うとこじゃねえだろ!」


(※だって、顔が真っ赤だし)


「顔が、真っ赤……! わ、私、なな、何て顔を……! 男に、こんな恥じらう姿を見られちまって……! いつも冷静で、男に弱いところなんて見せねえって決めてたのに……。見られちまった……。しかも、高校でやっとできた初めての友達に……。うう、穴があったら入りてえよ……。けどよ、私ばっかり恥ずかしがってるなんて不公平じゃねえか? お前にも、少しくらい顔を真っ赤にさせられる辱めってやつをしねえと気が済まねえよ……。……そうだ、保健室って言えば。こういうのはどうだ? ちょうど、外から誰かやってきたみたいだしよ。お前に、私がどれほど女してるかっていうのを体で思い知ってもらおうか」


(彼女はあなたの座っているベッドに腰かけると、靴を脱いで布団の中に潜り込んだ)


(※ちょっと、何してるの?)


「何って、添い寝ってやつだよ。女が一緒に寝ると、男っていうのは喜ぶんだろ? 遠慮すんなって。お前は私を危険から守ってくれたんだ、これくらいのご褒美があっても罰は当たらねえよ。おっ、そろそろ先生が来たな。上手く誤魔化せよ」


(あなたは保健室の先生に、まだ体調が優れないことを伝える。すると、暫く寝てて良いから、親御さんに迎えに来てもらおうと提案されたので了承すると、先生は連絡を入れるため再び外に出て行った)


「……行ったみたいだな。体調が優れないなんて、よく言えたな。お前、私を揶揄う余裕があるくらいには元気なのによ。お前の親を呼ぶために先生が部屋を出たから……。すぐ親を連れて戻ってくんだろうが、それまではご褒美タイムだな。ほら、何ぼっけっと座ってんだよ。体調が悪いんだろ? さっき、そう言ってたよな? なら、ベッドで寝ないといけねえな?」


(※じゃあ、隣のベッドに……)


「隣のベッドに行く? 辞めとけ、他の奴が来た時に使えなくなっちまうだろ? ほら、早くこっち来いって。ああ、カーテンはちゃんと閉めておけよ」


(あなたはカーテンを閉めると、布団に潜った。すると、彼女はあなたの背中に後ろからギュッと抱き着いて来た)


「ほら、こうやって後ろからギュッとしてやる。私の胸、意外と大きいと思わないか? 私、普段はさらしをしてるから小さく見えるが、今はこっそり外しておいたからな。さらしを巻いてるのは、やらねえと胸ばっかり見てくる奴がいるからだよ。だが、お前には私が女だったことをもっと分かってもらわねえといけねえからな。無邪気に褒めてみたり、女の子の前で格好つけて守ってみたり……。そんなことをされたら、普通の女ならとっくに惚れちまってるんじゃねえのか?」


(※そ、そんなつもりは……)


「そんなつもりはないって言ってもなあ、信じろって言う方が難しくないか? ほら、もっと胸を押し付けてやる。……ふっ、おうおう、ようやくお前も耳が真っ赤になるくらいには恥じらいってやつを覚えてくれたみたいだな。耳の先も、ちょっとサービスしてやるか。ふぅ……。ふふ、息を吹きかけたら体が跳ね上がったぞ。面白いな、お前。ふぅ、ふぅぅ~~~……。ふはは、良い感じだ。このままもっと……」


(外から誰かが歩いてくる音が近付いてくる)


「しっ、誰か来た。ほら、こうして手をお前の口元に回して……。お口はチャックだ、いいな?」


(あなたは静かに頷く)


「よし、良い子だ」


(足音は近づいていたが、やがて遠ざかっていった)


「……行ったみたいだな。どうやら、先生じゃなかったらしい。もう少しだけ、楽しめそうだな。おっと、動くなよ? 今は、私がお前を揶揄う番だからな。さて、次はどうしてやろうか? そう言えば、今は運動したばかりだから……。(すんすん、と匂いを嗅いで)少し、汗臭いな。おいおい、そんな顔を動かすなよ。ほら、お前の顎に手を添えて……。これで、動けなくなったな。なるほど、他人に匂いを嗅がれる経験はそんなにないから、恥ずかしいよな。家族ですらも、こんなことはしないだろうし……。(もう一度、今度は首元で匂いを嗅ぐ)……ふふ、お前の反応は見てるだけで面白いな。どんどん耳が真っ赤になってく」


(※辞めて……。汗臭いから……)


「どうかな? 普通は、汗は臭いと思うかもしれんが……。お前のは、結構好きだぞ。知ってるか? 相手の匂いを受け入れられる相手は、パートナーに最適らしいぞ? 私はそうだが、お前はどうか? 私の匂い、どう感じるのか教えてくれないか?」


(※そ、それは……)


「怒らないから、教えてくれ。それとも、また耳に息を吹きかけてみたら教えてくれるのか?」


(※……良い匂いがする)


「ほう、良い匂いか……。なら、もしかしたら私たちはベストなパートナー……。だったりしてな? 今なら好きなだけ、私の匂いを嗅いでいいぞ? 私も、先生が来るまではお前を抱き枕にして堪能してやるから……」


(すると、扉の向こうから再び足音が聴こえてきた)


「……ちっ。また、邪魔が入った。しかも、今度は扉の前で足音が止まった。話し声が聞こえるな」


(※母さんの声だ)


「お前の母さん……。そうか、なら時間みたいだな。私は先に出てるから、お前はここで寝てろ」


(美希はベッドから出ると、入ってきた母親と先生に鉢合わせた)


「どうも、彼にはいつもお世話になってます。藤堂美希です。……はい、実はさっき私のことを庇ってくれて……。少しの間ですが、看病させていただきました。本当に、ありがとうございました。……はい、友達です。これからも、よろしくお願いしますね。では、失礼します」


(美希は母親に挨拶を終えると、そのまま教室を出て行った)


(~~また別の日のこと、あの保健室での出来事以来、美希はあなたのことを露骨に避けるようになっていた。なので、あなたは放課後に彼女を捕まえることにした~~)


(あなたは、帰ろうとする彼女の手を掴んだ)


「……何だよ、何か用か?」


(※どうして避けるの?)


「避ける? 私が? そんなことしてねえよ。ちょっと用事が立て込んでただけで、何もねえから。ほら、ともかく。今日も帰る……」


(あなたは強引に引っ張った)


「おい、どうした? どこに行くつもりだ? 放せ、放してくれ)


(あなたは無言で屋上まで連れて行き、彼女を例のベンチに座らせた)


「……屋上のベンチか。そう言えば、お前と一緒にご飯を食べたっけ。それで? こんなところに連れてきてどうする気だ?」


(※どうして避けてたか聞きたい)


「どうして避けてたか? 避けてなんかねえ。私は……」


(※僕たちは友達。約束は、破らないんでしょ?)


「友達、約束……。そう、だったな。駄目だな、私は。前、ヤンキーだった頃も、いざとなったときは仲間を頼らなかったりして……。一人で突っ走ろうとしてた。今の私は、また逃げようとしてたのかもしれねえな。すまん、観念して話す。(すぅ……と深く息を吸った)実は、な……。最近、お前の顔をよく見られねえんだ。あの日以来、お前の顔が頭の中をチラつくだけでおかしくなったりするし、今も、割とそうだ。お前の顔を見ると、恥ずかしくて頭が沸騰しそうになる。本当は、分かってんだ。これが、どんな気持ちなのか……。私は、たぶんだが……。お前のことが、好きなんだ。けど、駄目だ。お前、好きな人がいんだろ?」


(あなたは黙っている)


「だんまりか。でも、見てたら分かる。誰を好きかは知らねえけど、最近はよくそわそわしたり、授業中も窓の外を見たり……。身なりも、気にするようになっただろ?私の舎弟だった奴にも、好きな人ができてから似たような行動をする奴がいたからすぐ分かったぜ。だから、私はお前の恋路を邪魔しちゃいけねえって思ってよ。いつもいつも、助けてもらってばかりだから助けないとって……。でも、私はお前のことが好きなんだ。いくら、恩返しっつっても……。自分の恋を邪魔する奴に塩を送るような真似はできねえよ。だから、せめて……。せめて、お前に嫌われさえすれば、それで良いって……。本当に、すまなかった。(頭を深く下げて)この通りだ」


(※……顔を上げて欲しい。僕なら大丈夫)


「……ああ、ありがとう。……って、お前は何でそんなに嬉しそうなんだよ? 私が、お前のことが好きだって言ったからか? だとしたら、こっちも嬉しいんだけどよ。お前からしたら、いい迷惑だろ。だから、すぐに断ってくれ。そうすれば、この気持ちにもケリを付けられる」


(※それもあるけど……。その好きな人さ)


「好きな人、がどうしたんだ? 素直に教えてくれるのか? まあ、お前が教えてくれれば、私も今度こそ応援くらいしてやるよ」


(※藤堂さんなんだ)


「……今、誰って言った? 藤堂って聞こえたが、私のことじゃないよな?」


(※僕は、今目の前にいる藤堂美希さんが好きです)


「私のことが、好き……? 嘘、だろ? 冗談、じゃないのか?」


(※冗談じゃない。本気だ)


「……でも、どうして私を? 私、ヤンキーだし……。言葉遣いだって上品とは言い難いし、男みたいに筋肉もあるしよ……」


(※そういうところも好きだ)


「そういうところも、好き? ……お前って、本当に変わってるのな。でも、そしたらどうなるんだ? 私たちは、両想いってことになるのか? そうしたら……」


(※待って)


「どうした? 何か、あるのか?」


(※僕から言わせて欲しい)


(あなたはその場に膝をついて、美希に手を差し出した)


(※藤堂美希さん。あなたのことが好きです。僕と、付き合ってください)


「……ああ。ああ! 勿論、付き合う! 私の方から、お願いしたいくらいだ! その……。よろしく、頼む。これからも、末永く……。ふふ、やった。これで私たち、恋人同士だ!」


(美希はあなたに思いっきり抱き着いた)


「絶対に、絶対に離さないからな……。お前は、私の……。私だけの、恋人だ」


(~~あなたと美希が恋人になってから、初めてあなたの家に彼女が訪れた~~)


「お邪魔します……。あ、えっと……。彼の、お母さん……。改めまして、彼の彼女の藤堂美希です。この度、お付き合いさせていただくことになりました。……え、彼女が出来たことが嬉しい? そう、なんですか……。その、もっと警戒されるのかと……。え、私が良い子? この間、看病してくれた? ……ありがとうございます。彼は今……。自分の部屋に? すぐ降りてくる? いえ、私から行きます。それでは、失礼します」


(美希は階段を昇り、あなたの部屋の前まで来た)


「おい、私だ。入っていいか?」


(※どうぞ)


「邪魔するぞ。……よっ、来たぞ。ふうん……。中々、綺麗な部屋だな。それとも、私が来るまでに急いで片づけを終わらせたか? そこのゴミ箱、いっぱいになってるしな。ふふ、可愛いなお前は。そんなに慌てなくても大丈夫だ。きっと、私がお前の立場だったら同じようにするからな。お前の隣、座るぞ」


(あなたの隣に腰を下ろした)


「お前の私服姿は初めて見たが、なかなか似合ってるな」


(※藤堂さんのも可愛い)


「か、可愛い!? わ、私の私服が!? ……そ、そうか。それなら、良かった。気合を入れて、おめかしした甲斐があったな。どうだ? 匂いも、嗅いでみるか? 前は汗の匂いばっかだったが、今は香水を付けてきた。どうだろうか?」


(※甘い匂いがする。良い香りだ)


「そ、そうか? そうだろう? 桃の香りなんだよ。お前が喜んでくれるのなら、これからも、二人っきりのときは付けてもいいかな……。ごほん、それで……。今日は何をする? そもそも、恋人同士では何をするものなんだ?」


(※実は、僕もよく分からない)


「そうか、お前も分からないか……。そうだよな。彼女が居たことなかったら、分かるわけもないよな。……でも、何か特別なことをする必要はない気がすんだよな。私は、お前とこうして肩を寄せ合っているだけで安心できるし、幸せだと感じることができるからな。……だけど、やっぱり何かしたいって思っちまうな。……そうだ、これならどうだろうか。ほら、私がこうして星座してやるから……。ここに頭を乗せてみろ。膝枕ってやつだ。男は、こういうのも喜ぶんだろ? それとも、私の膝じゃ不満か?」


(※じゃあ、お言葉に甘えて)


「ああ、沢山甘えていいぞ。言葉だけじゃなくて、体も、心も、全部私に預けてくれ。よし、良い子に寝れたな。どうだ? 膝枕の感想は?」


(※とても気持ちが良い)


「そうか、気持ち良いか。ほら、私の太もも、柔らかいだろ? 今日は、お前に膝枕をしても良いようにと思ってスカートにしてみたんだ。あまり普段は履かないけど、これなら直に感触を楽しめるだろ? あとは……。こうやって、頭も撫でてやろうな。良い子、良い子ってしてやると、段々と夢見心地になってこないか? 今の私は、お前のことが大好きだ。好きで、好きで仕方なくて、ほんのちょっとしたことでも好きって気持ちが溢れ出そうになる。……お前はどうだ?」


(※僕も、藤堂さんが好き)


「そうか、それなら良かった……。ふふ、お前はさっきからどこを見てるんだ? この胸が、気になるのか? 今日はさらしをしてないから、たわわに垂れ下がった胸が下から見上げられる形になるだろ? もっと、見て良いぞ? 今なら、この胸はお前のものだからな。何なら、揉んでみるか?」


(顔を真っ赤にして、視線を逸らす)


「遠慮しなくていいのにな……。だが、そういう紳士なところも私は好きだぞ。さあて、そしたら一つゲームをしないか? 勝った方が、負けた方の言うことを何でも聞くってルールだ。どうする?」


(※やる)


「そうか。なら、さっさと始めようか。勝負内容は、至って単純だ。私が好きってお前に言うから、お前は好きと返せばいい。先に恥ずかしがった方の負けだ」


(※分かった)


「よし。じゃあ、行くぞ。好き」


(※好き)


「ふふ、これくらいじゃあ動揺もしないか。なら、これはどうだ? (あなたの顔に近づいて……)好き」


(※……っ! す、好き)


「ちょっと揺らがなかったか? 前屈みになって、私の胸がお前の胸に押し当てられてるし、吐息もかかる距離だったからな。まあ、今のはセーフにしてやる。それじゃあ、もう一つ……。好き。(あなたの頬に)ちゅ」


(※~~~~っ!)


「顔が真っ赤だぞ? はい、お前の負けだな」


(※それは、反則では……?)


「反則なんかじゃないぞ? お前がその気なら、仕掛ければ良かったんだ。だから一回だけ、見逃してやっただろ? だが、お前にその勇気はなかった。それだけの話だ。さあて、ゲームは私の勝ちだが、何をしてもらおうか?」


(※あまり、無茶な要求は……)


「無茶な要求なんてしねえよ。お前にだって、できることだ。その、だな……。私のこと、藤堂って今は呼んでるだろ。だから、その……。名前で、呼んでくれねえか? 藤堂って、なんか堅苦しいっつうか、いかついって言うかよ……。その点、美希って女の子っぽいだろ? 皆、意外と私の下の名前は知らねんだよ。藤堂っていうのが目立ち過ぎてな。……それに、彼女なんだから、名前で呼んでくれた方が嬉しい……だろ?」


(※……みき)


「小さくて、何て言ってるか分からねえな。恥ずかしがってないで、もっと大きな声で言ってくれねえか?」


(※美希!)


「ふふ、良い子だな。これからは、ちゃんと美希って呼んでくれないと嫌だかんな? 今更、人目を気にすることもねえだろ? だって、今までだって散々、私の忠告を無視してきたんだ。呼び方の一つ変えたくらい、何てことねえだろ。さあ、良い子は寝んねしな。私がこうして、よーし、よしってしておいてやるから……。ふふ、目がとろんと蕩けて可愛いな。これから先も、ずっと……。私だけにしか見せないような顔を、もっと私だけに見せてくれ。その手始めに、お前の寝顔だ。よしよし、そのまま目を閉じるんだ……。良い子だぞ、よし。それじゃあ、夢の中に入る前にご褒美だ。そのまま、目を閉じたまま……。んちゅ……。おやすみ、私の可愛い彼氏君」


(~~あなたは、陽光が当たる中でゆっくりと目を覚ます~~)


「お、起きたか。おはよう、私の愛しの旦那様。どうした、そんなキョトンとした顔をして。何か、夢でも見てたのか?」


(※学生時代の、出会った頃の夢を見てた)


「私たちが出会ったときの夢、か……。懐かしいな。あの時の私は、まだまだ尖ってて素直じゃない部分も多かった気がする。思春期の学生って感じだったよな。私も、旦那様も。でも、あの後は一生懸命勉強して同じ大学に進学して、旦那様は就職して、私は子どもをこさえて主婦になって、今は三人で幸せな家庭を築いてるんだから結果オーライって奴じゃないだろうか? 私の今は……。凄く幸せだって、胸を張って言うことができる。それもこれも、旦那様が優しくて、素敵な人だったからだ。環境委員で困ってた私を助けてくれた。あの時の花、最終的には綺麗に咲いたよな。花壇一面満開になって、私たち以外の学生たちも花壇の前で足を止めるくらい。一時期は観光名所にもなったか。その影響なのか、今も庭の花壇に綺麗な花が咲いているよな。私と旦那様、そして私たちの子供と三人で育てている花だ。だが、一番綺麗に咲いてほしいのは私たちの子供だな。あの子はまだまだ小さいが、これからもっと大きくなっていく。あの子が将来で大輪の花を咲かせられるように頑張っていこう。そのためにも……。今日もお仕事、頑張るんだぞ。ほら、おはようのキスをしてやるから元気出せ。ちゅ。さあ、朝ごはんはもうできてるぞ! お昼の弁当も、昔のことを思い出して作った「あの」愛妻弁当だ。旦那様が一番最初に褒めてくれた弁当、気合を入れて再現したからな! 楽しみにしていてくれ!」

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同級生のヤンキーJKに癒されるASMR 黒ノ時計 @EnigumaP

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