第6話
「まさかあんなことになるなんて……」
店の
「お陰で店を閉じることになっちゃったし」
「ふふっ、あれは凄かったもんね。私もびっくりした」
畳の上で菫が笑う。今日は着飾っておらず、街に行くような服装であった。
あの後、
「
「そうみたい。もう怖いぐらいだよ。仕舞いには殺しに来るんだもん」
「それほどまで、
素敵、と菫は何処か惚けた表情で呟いた。その声が、
「そういえば」
「菫、占いはどうしたの?」
「どうしたのって……?」
「その……
「ああ。それね」
菫は天女のように柔らかく口角を上げた。妖艶で、何処か妖しげな笑みが、不思議な雰囲気を醸し出す。
「伝えたよ」
「あ、そう、なんだ……」
「でも、お告げは伝えていないの」
「えっ?どういうこと?」
目を白黒させる
「こ、これって……?」
「そう。だからお告げは伝えていないの」
悪戯っぽく表情を崩した彼女が持つ紙には、こう書かれていた。
『
「……えっ?それって……じゃあ……!」
「あの人は、男に襲われた時点で絶命するはずだった」
「まさか、術を使ったの!?」
「ま、少しはね」
無邪気に笑う少女は、人の命を救ったということをしたようには見えない。だが、確実に彼女は
「だから、これはもう用済み」
菫はお告げの紙を千切り、それを手に乗せてふっと息を吹きかける。すると、それらは煙のように、一瞬にして消えてしまった。
「あの人も、
「……やっぱ菫は凄いや」
いよいよ、
「ねぇ、菫」
「ん?」
「本当に、続けるの?」
「もちろんだよ」
「でも、さ。ほら、あんなこともあったし……やっぱり危ない気がするよ」
「菫に何かあったら……少し、怖いんだ」
「
視えない未来の不安に駆られる彼女を、菫は苦しげに目を細めて見つめる。それから、ふっと息を吐いて、彼女に囁いた。
「大丈夫だよ。だって」
「だってな……」
何?と問いかけようとした
物理的に塞がれたのだ。菫の、口付けによって。
たっぷり10秒、彼女たちはお互いの息を肌で感じた後、菫はゆっくり顔を離す。
「
仄かな紅に染めた頰で、菫は言った。
「〜〜〜っ!」
「もちろんだよ!」
菫の花には愛がある 葉名月 乃夜 @noya7825
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