納得は出来ていないけど
奈良ひかる
第1話
板垣総一郎は雑貨屋の店主である。
小さい事からコツコツとやって来た結果がこうして店を持つ事に繋がったのだと
思っていた。
だから今まで自分がやって来た事に対しては自信を持っていたし、
それが間違っていたとは思ってはいなかった。
でもそれが許される時代では無くなってしまった。
「総ちゃんも気をつけた方がいいって。
最近はすぐに辞めるし、いろいろと面倒な事になりかねないからさ、な? 」
昔からのツレだった奴からそこまで言われては流石に総一郎も考え直さないと
いけないと思い始め、それからというものいろいろと勉強する事にしたのだ、
最近のご時世って奴を。だから大丈夫だと思っていた、ちゃんと勉強したからこ
そ総一郎は間違っていないと思っていたのだ。
「えっ、ダメなの? 」
何故か給料を学割したら怒られたのだ。
常日頃から学割学割と嬉しそうに言っていたから喜ばれると思っていたのに、
まさかこんな事になるなんて思っていなかったので結構ショックな出来事だった。
本当に最近の子は意味が分からないという事を実感した。
言っている事とやっている事が全然違うのだからおそらくこれがサイコパスって
やつなのだろう。
こっちは出来るだけ気を使ってやっていたというのに、こんな事になるのなら
今まで通りの対応でよかったのではなかろうか?
周りがやたらと脅して来るから言われた通りに怒ったりせずに対応してきたと
いうのに……一体今までどれだけこっちが我慢してきた事だろうか?
正直、怒りたいのはこっちの方だと言ってやりたい気分だった。
「はあ? アンタ馬鹿なの? どんな感覚してんだよ! 」
まあ確かに大学は出ていないけれど、聞いた事のない名前の大学生に言われると
それはそれで微妙な気分にさせられるのだ。
寧ろどういうつもりでその大学に入学しようと思ったのかと聞いてみたいし、
そもそも何を学んでいるのだろうか?
大学で勉強しないといけない程の事なのだからさぞや崇高で高貴な事を学んでい
る事だろう。
それはきっと未来に役立つはずの事を学んでいるに違いがないのだから。
だってそういう場所だろ? 大学って。
総一郎はずっと大学に憧れを抱いていたのだ。でもそれは叶わない夢だった。
誰彼かまわずに大学になんて行けるような時代じゃなかったし、
彼の環境がそれを許さなかったというのが一番の理由だった。
だから大学を出た人は凄い人なんだと尊敬していたし、
そういう人達が優遇される事にはなんら疑問などなかった。
でもどうやら最近はそうではないという事を総一郎は学んだ。
「その、なんだ。おこなの? 」
「ああん! ふざけんなよマジで! 」
どうやら総一郎の予想はハズレていたようで激おこの方だったようだ。
そうであるのなら仕方がないのかもしれないと少しだけ納得してしまう、
こうして椅子に縛り付けられている今の現状もある程度理解は出来るというもの
だ。
「さっさと金を出せよ! 」
でもその要求にには応じる訳にはいかないしそもそも身動きがとれないこの状況
でそんな事を言うなんて、こんな時にするボケにしては難易度が高い。
だいたい給料に見合うだけの仕事をしていない者にどうしてお金を払わないとい
けないのだろうか?
そんな簡単にはお金は手に入るものではないという事を最近の子は知らないよう
で、だからこそパパ活を提案したのにそれすらも断ったのだからこれ以上どうし
ろというのだろうか?
あれも嫌、これも嫌、その結果がこうして強盗に入るという事に行きつくのが
最近の教育の賜物なのだろう。
何かを差しださなければ何も得れはしないというのに
何も持っていないのにどうして自分を差しだそうとしないのかが理解できない。
「俺は男だぞ? 分かってからものを言えよ! 」
それはこっちの台詞だ。
最近は男も女も関係ないという事を知らないのか?
ネットばかりでテレビを見ていないからこういう事になるのだ。
ジェンダーフリーってやつを知らないなんてどうなっているんだ、
そんな事でこれから生きて行ける訳がないじゃないかまったく、
ちゃんとして欲しい。
「ケツ穴確定すればいいだけじゃないか」
どうやら激おこぷんぷん丸だったようだ。
パンッ
パンッ
パンッ
こんな事になるのならサブスク契約にしておけばよかった。
でも好きじゃあないのだあの方式は、結局最後には何も残らないから。
納得は出来ていないけど 奈良ひかる @nrhkr278
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