エピローグ

俺たちのスタート

 上空七・三二メートル。

 海上を俺とガオは飛んでいた。

 龍矢とラドン、ミカとリンリンも併走し、三人それぞれの保護者を乗せていた。

 今、俺たちはそれぞれの故郷へと帰るところだ。


 乱獅子先生と鹿山先生は学園に戻り、山さんは別の町へと荷物の回収に向かった。

 ミカが「二人とも、また学園でね」と言って東北東にリンリンの進路を取った。

 龍矢も「次は……いや、二度と負けん」言い残して北西方向へとラドンの進路を向ける。


「おう! 二人とも、またな!」


 二人の後ろ姿に叫んで、まっすぐ北へ、生まれ育った街へと飛ぶようガオに指示する。

 数分後。龍矢やミカたちが見えなくなり、この空には俺と母ちゃんとガオしかいない。


「母ちゃん、恐くないか?」

「息子とその相棒のことは信頼しているよ。でも、もう無茶はよしてくれよ」

「ごめん」

「とはいえ初レース優勝おめでとう。やっぱり竜太は飛竜の子だ。強い子だよ」


 母ちゃんは俺の背をギュッと抱きしめた。母ちゃんの暖かさが背中から伝わってくる。


「当然だろ。なにしろ俺は、未来の世界チャンピオンだからな」


 ガオも「がおぉぉぉーん」と吠える。

 そうだ。今日のレースは最初の一歩にすぎない。

 優勝はしたけど、完璧なレースじゃなかった。

 龍矢にはギリギリまで追いつけなかったし、母ちゃんを泣かせちゃったし。


 俺とガオのゴールはまだまだこんなところじゃない。

 俺たちはスタートラインにも立っていない。

 学園を卒業して、プロ資格を手に入れて、それでやっとスタートラインだ。


 プロのレースで何度も戦って。この国の代表に選抜されて。

 世界チャンピオンはそれよりもはるか先だ。

 俺たちは龍矢にも、ミカにも、昇龍にも負けない。

 だから、どこまでも飛ぼう。

 世界チャンピオンになって、さらにその先まで。


 どこまでも、どこまでも。

 相棒と共に!

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竜太のドラゴンライダー学園 七草裕也 @nanakusa-yuuya

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