第7話 可愛いが勝るアリス様
「我から絶対に守って欲しい、3つの約束がある!!」
友木が『永久就職』を断ったあと、なんか魔王様から熱弁が始まった。
「一つ、我を裏切るのでないぞ!二つ、鍛えるの禁止!三つ、魔王領から出ることを禁止!」
続けて
「1つ目は当然だぞ!2つ目はぜっったーーーいに厳守だぞ?!魔王城の中で生活だ!お主の面倒は、我の配下が見ると思うぞ、多分。だから気にしなくていい!!」
ここで、友木は結構甘い条件を提示されていることに気づいた。
(完全に魔王様に紐生活じゃねえか……。何だこの神提案)
魔王様甘過ぎでは?
思わず耳を疑った。
(というか…。俺がアリス様に仕える意味ってあるのかなぁ)
疑問が残る友木。
仕えるの意味合いがいまだ理解できていない。
対して魔王様の方は、
状況が掴めてない彼にとってはとても荷が重い話であった。
その時、
「アリス様、今日はドワーフ族との対談があります。そろそろ用意しても良い頃かと…」
「確かにそんな約束をした気がするぞ……。えーい!面倒くさいな!!」
メイドさんは魔王に向かって話しかける。
話の内容から見るに、どうやら魔王様は用事があるらしい。
「むう」
魔王様の顔は不満色に染まる。
ドワーフ族との対談を避けたいという様子だ。
「これ以上アリス様は反発を食らいたくはないでしょうし、少しでも魔族側に引き入れることが出来るなら、それに越したことは無いと思いますよ」
友木を連れてくるなど、魔王様は相当暇だと思っていた。
しかし、その印象に反して魔王様はとても忙しそうに、日々を過ごしている。
先ほど、メイドさんが述べたとおりに、
人間族が魔族に対して頻繁に、領地に侵入してくるようになった。
これは魔族からしても緊張をあおる原因になり、
他の関係ない種族からしても、人間族につくか、魔族につくかの決断を迫られることとなる。
……まあ、魔族に側つくような物好きは少ないが。
「しょうがない、無能よ。ここで待っていろ。すぐ戻ってくるぞ!」
さっきまで友木に執着していたアリス様は一変、本当の魔王の仕事をする顔になった。
これだけエゴ駄々洩れの魔王様でも、魔族の上に立っているという責任感は強いらしい。
(魔王様って意外としっかりしているのか?ポンコツそうに見えたけど……)
友木は内心、魔王様の評価を上方向に修正した。
そして、メイドさんと魔王さんが部屋を出ていくところを見守っていた。
(……。さて、なにしようか)
殺風景の部屋に取り残された、友木が一人残る。
~~~~~~~~~~~~~
「ひぐぅ……ぐすん……もうドワーフの所なんて行ってられるかあ!!」
「そ、そうですよねえ」
友木は目の前で泣きそうになっている……いや、泣いている魔王様を必死に宥めていた。
(なんでこうなったんだよお!!)
心の中で、友木は叫んでいた。
数時間前、
「とりあえずISEKAITTA-を確認しようかな……」
友木は、ステータス画面を開き、青い鳥のマークを探す。
友木自身、ギフトスキル『さえずる』について知りたいことは沢山あった。
例えば、人間領にいる時と、魔族領にいる時では『ISEKAITTA-』の表示される呟きが変わるかもしれない。
またこの前システムが〈ツイート内容によっては特典を得ることが出来ます〉
と言っていた。
つまり、どんな行動で特典がついてくるのかを探る必要性。
そんなこんなで、友木は自分自身のスキルを確認する時間に充てた。
この、魔王様に取り残されて暇な時間を。
「さーて、『ISEKAITTA-』オープン!!」
唱える必要はないが、静かに開くのは寂しさを感じ、なんとなく言った。
~~~~~ISEKAITTA-~~~~~~
ある魔族:はあ、今の魔王様って信用ならねえな
共感200♡100
ある魔族:人間族に媚び売ってるんじゃね?
共感100♡55
↑リプライ:セ〇レw?
共感100♡100
ある魔族:ドワーフ族と対談するらしいぜ。他の種族と関わるとか末期だな。
共感210♡69
~~~~~~~~~~~~~~~~
「最悪すぎるだろ、共感数もイイネの数もえぐい……。リプライ内容も気持ち悪いな……」
とりあえず、『さえずる』のISEKAITTA-の権能は場所によって、表示ツイート内容が変わることは分った。
しかしそれ以上の問題が発生……。
それはとても魔王様の支持率が悪い事だ。
友木自身、魔王様のせいで魔王領に連れ去られたが、
もうあまり気にしていなかった。
なにせ、無能で追放された後、身寄りのない自分を引き取ってくれたのだ。
拉致されたとしても、恩人とも呼ぶべきなのだ。
そんな恩人が世論でボコボコにされている。
その事実が友木にとって、悪い印象しか抱けなかった。
「……これをどうにかしたいけど」
友木は自分自身のISEKAITTA-の画面を眺める。
するとあるマークで目が留まった。
「………。ツイート内容を報告……?」
右の恥に赤い罰点マークがあった。
指先をそのマークに合わせてみたら、赤い字で、
〈ツイート内容を報告〉
と表示された。
試しに押してみる。
すると、
〈報告するツイートを選択してください。削除、もしくは非表示状態にツイートを変換できます〉
「これって……、ツイート内容を取りしまう……。検閲……か?」
その事実を知った時、嫌な予感がした。
ツイートした内容、つまり他の者の意見の追放。
そして、友木自身のツイートは半径五メートル全ての人に自分の意見の押し付け。
そう、友木の持っているスキルは世論を捻じ曲げることが出来ることを。
思想を取り締まる事だってできるかもしれない。
(『さえずる』って可愛い名前しといて、大罪スキルじゃねえかよ!!!)
ちなみに、報告はやめておいた。
これ以上、スキルを乱用することを友木は自制したからだ。
「流石に取締は逆効果になるだろ……」
だが、これでは魔王様に対しての非難の声は変わらない。
友木は考えた。
(あー。最悪の場合は俺が『さえずる』駆使して魔王様を救うか……)
決意を固める。
その時、不意に友木は眠くなった。
「……」
王国でも弾圧されて、魔王にも面を向かって話したから、疲れていたのかもしれない。
そしてうたた寝をしながら、魔王様を待っていた時、
バタンッ!!
勢い良く扉が開く音がする。
そして、外からは、真っ赤な顔をした魔王様がずかずかと入り込んできた。
魔王様の後ろには何人もの配下が並んでいた。
とても緊張している顔つきで……、
「もう嫌だぞ!!これからは、ぜったあいいいに会わないぞ!!」
魔王様、ご乱心。
怒りに任せて魔王の覇気を出している模様。
周囲の配下なんて立っているだけで精一杯だった。
「無能!!われの話を聞け!!」
そんな魔王、アリス様は友木に近づいてきたのだ。
アリス様は友木の真正面に座った。
(いやいや、その覇気をマックスで出されながら近づかれても困るんだけどお!!)
勿論、アリス様はお構いなしで話し続ける。
「ひぐぅ……ぐすん……もうドワーフの所なんて行ってられるかあ!!」
(これは……時間がかかりそうだ………。)
最恐魔王、友木に縋り付く。
「クラス転移で無能扱いされた。俺不遇すぎ」って呟いたら、とんでも美少女の魔王に拾われた件 九条 夏孤 🐧 @shirahaku
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