『分断』

やましん(テンパー)

『分断』


 『これは、フィクションです。』



 ある日、地球全体の時間が、地域によってばらばらになりました。


 アメリカ合衆国は、ハワイ島と、アラスカ以外は、そのまま。


 太平洋中部から日本地域は、西暦50年にワーブしました。


 オーストラリアは、西暦2500年に。


 南極大陸は、3800万年前に。


 アジアの大陸部分は、西暦1000年から、西暦21000年の間に分散。


 ヨーロッパの半分は、西暦8000年あたりに、もう半分は、紀元前1000年あたり。


 アフリカ大陸の北側は、西暦100000年に飛び、南側は、紀元前10000年あたりにワープ。


 つまり、現代がワープしたのではなく、その時代そのものが、やってきたのです。


 ただし、未来の地球には、宇宙から見る限り、人類の活動は見られないのです。


 ま、幸いというか、困ったことなのか、お互いの行き来はできなくなりましたような。


 時間の壁が立ち塞がったのか、自分達の時間の 範囲が、世界の果てになったようなのです。


 しかし、宇宙空間は、なぜだか、そのままだったのです。


 ただし、地球との連絡は、まったく取れません。


 地球を取り巻く、仮想のカーマンラインあたりに、なんらかの境界があって、地球上との交流を妨げているようですが、それがなにかは、まだ、   わからない。


 そこで、その、さらに外側の、熱圏にいる、新国連の宇宙ステーション『カラス』からは、全てが見えては、いました。見えるだけですが。


 かれらは、可能な限りのデータを収集したのですが、これが、実は、後に革命をもたらしましたのです。



 『こらまた、えらいことですよお。』


 アメリカ合衆国出身の、プラント宇宙飛行士が言いました。


 ロシア出身のピーチン宇宙飛行士も、同調します。


 『まさに、びっくりだね。大陸は、あまり変わらない範囲だし、細かいとこは別として、見た目はそんなには違わないがな。しかし、南極大陸は違う。あれは、別世界だね。』


 イタリア出身の、ムッツリーニ科学士官は、意外に冷静に言いました。


 『何者かが、何かの、実験をしているんだ。あの、南極大陸はかなり、怪しいな。あそこが、異変の中心部かもしれないな。』


 中国から来た、マオ・マ技官は、それに関心を示しました。


 『だれが?』


 『さてね? わからんよ。しかし、なにやら、でかい、エネルギー反応がある。核ではないみたい。何だろうな?』


 ムッツリーニさんは、さらに、あっさり言いました。


 フィンランド出身の、スベリウス大佐は、なんとか、地上との交信をしようと、頑張っていました。


 しかし、こちらからの電波は、どうやら、跳ね返され、地上からは、まったくなんの通信も、宇宙船も、やって来ません。


 『たしかに、意図を感じるが、さっぱりわからないね。』


 『ときに、われわれ、帰れるのかな?』


 ブラジルから来た、ブラ・ロボサ医師が呟きました。


 『ほかの、宇宙ステーションはどうなんだ?』


 『そうだね、ニホンの独立ステーション『アソ』は?』


 『あそ、こは、閉鎖主義で、そもそも、本国としか、通信しない。あのくには、先に政権がひっくり返ってから、どんどん、意味不明になった。ま、自尊。のかたまりだな。』


 マオ・マさんが言った。 


 『でも、いまは、あの地球側は、いわゆる、ヤヨイ時代にあるみたいだから、話が違うよ。通信も、無理だよ。それに、だいたい、あれは直には通信できないよ。いつも、我々の、反対側にいるのだもの。』


 スベリウスさんが答えました。 


 『やっかいですな。』


 『月基地はどう? 中継できないかな。』


 『やってるんだが、なぜだか、通信できないんだ。地球側も、アメリカ合衆国が、一番通信の可能性がありそうなのに、やはり、まったく、だめ。わけ、わかんない。』


 スベリウスさんが追加しました。


 『だれが、犯人なんだい?』


 『うーん😅』


 みんな、わかりません。



        🚀

 


 そこに、びっくりが、起こりました。


 月から、でかい、宇宙空間ミサイルが、やってきたのです。


 『あらら。あれは、タルレジャ王国の、地球破壊ミサイルだぜ。まさに、世も末だ。』


 『なまごみだあ。…………』


 みなは、祈りました。


 ミサイルは、見事地球に命中し、地球は、宇宙空間に吹き飛びました。


 宇宙ステーションも、おしまいか、と。


 しかし!


 なんと、吹き飛んだ地球のあとに、元どおりの地球がありました。


 すべてが、いっぺんに、元に戻ったのです。


 『あらまあ。びっくりだね。』


 スベリウスさんが、驚嘆して、叫びました。


 みな、それに、倣いましたのです。


 間も無く、地上との通信も再開しました。


 『カラス。こちら管制室。いまから、交代要員を打ち上げる。』


 やれやれ。


 しかし、ひとつ、違うことがありました。

 

 戦争が、きれいさっぱり、無くなっていたのです。


 それは、ほんとに、かつての地球なのか?


 それとも、まるで、別世界なのか?


 人類が、戦争をまったくしていないなんて、あり得ないのではないか?


 みな、深く、考えました。


 地球に尋ねるのは、けれども、かなり、恐怖だったのです。



        🌎️



 やがて、地球から、交代要員が乗った宇宙船が上がってきました。


 『カラス』の乗員は、どきどきしながら、待っていました。




              おわり


 

 


 


 

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『分断』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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