第11話 「文化祭と金木犀②」
文化祭が始まり、早速校内は盛り上がりを見せている。僕と瑠花は同じメディア班で、出番までまだ多少時間があったから運営班のところに遊びに来ていた。運営班では主に軽食とドリンクを提供していて僕達が着いた時には既に多くのお客さんで賑わっていた。運営班で何を出すか決める時、彰が「とりあえず今人気で季節外れてなくて原宿で売ってそうなやつやれば人気になるんじゃね?」と突拍子もなくアホなことを言い出したが他にコレと言った案も出ず結局ロールアイスとイチゴ飴、ドリンクは瑠花の祖父母の家から大量に送られてきたオレンジジュースを出すことになった。
最早文化祭で出すレベルでは無いが佐久間先生の援助もあって実現出来ることになり、どのクラスよりも目立つものが完成したと思う。そして運営班をまとめる役割になったのが発案者の彰だ。本人はメディア班に行きたがっていたが、彰が言い出しっぺだからと運営班に配属されることになった。本人は最初こそ不服そうだったものの今ではすっかり他のクラスメイトに指示を出していて、その姿が意外と様になっている。僕らが足を運ぶと彰も気づき、こちらに手を振る。
「おーいお前ら!ちょっと手伝って!」
と彰が叫んでいるので僕達も店に入って指示に従いながら頑張った。
そうしている内に僕らメディア班は準備を始める時間になり、体育館へと向かおうとした。すると後ろから彰が
「俺の分まで目立つんだぞ!」
と言ってきたので瑠花と2人で笑いながら手を振りその場を後にした。
他のクラスの出番が終わり、僕達の番に少しづつ近づくにつれ心臓の鼓動が速くなっていくのをかんじる。緊張しながらも最後に振りを確認していると
「何、緊張してるの?」
と後ろからいつも怒鳴られている声で話しかけられた。その声を聞いた瞬間少し驚いたが、振り向いて「うん」
と返すと柊木さんは呆れたような顔をして
「1ヶ月間誰が教えたと思ってるの」
と自信ありげに答える。
「ふはっ」
と変な笑い声をあげてしまった僕に少し冷めた目で見る柊木さんに
「そうだね。ごめんごめん」
と笑いながら返す。確かにその通りだ。僕は1ヶ月間あの暑い中でしごきに耐えたんだから大丈夫に決まってる。一気に緊張がほぐれ自信が湧いてきた。
もう大丈夫、怖いものは無い。
前の出番のクラスと入れ替わり、ステージに立つ。
ブザー音と共に幕が上がり、遂に僕達の出番が始まる。
拝啓 ウソツキな君へ ノアの方舟 @Noa7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。拝啓 ウソツキな君への最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます