第194話 久しぶり?
俺達はエルフの男を先頭に歩いている。
「お前、名前は?」
「ヴィリーだ」
「そうか。俺がロイドでこっちの男がジャックだ。あと、俺の妻であるリーシャとマリア」
俺はヴィリーに自分と他の者を紹介する。
「そっちの男もエーデルタルトの貴族か?」
「そう見えるか?」
「見えないから聞いた」
まあ、どう見てもジャックは貴族には見えない。
「見ての通り、冒険者だ。Aランクなんだぞ」
「ほう。それはすごいな。俺達も冒険者のことは知っているが、Aランクは初めて見た」
ラウラも元Aランクなんだけどなー。
俺達はそのまましばらく歩いていくと、奥から独特な魔力を感じ始めた。
「エルフがいっぱいいるな……」
「当然だろう。それとお前はその魔力をどうにしかしろ。小さい子供もいるんだ」
そういえば、垂れ流しのままだったわ。
「やはりちゃんと制御できるのか……」
俺が魔力を抑えると、ヴィリーが頷きながらつぶやく。
「エーデルタルト一の魔術師って言っただろ」
「確かに人族にしてはかなりの魔力だ。抑えていなかったのはわざとか?」
「お前らに客が来たって伝えるためだよ」
「そうか……奴隷狩りが魔術師を連れて、攻めてきたのかと思ったぞ」
それで様子見にきたんだろうな。
「奴隷なんかいらんわ。あいつらは税にならんし」
「貴族からしたらそうかもな……」
庶民も奴隷も一緒。
だったら税を納める庶民の方が有用だ。
「何人か捕まったのか?」
「いや、今のところは被害はない。だが、子供達を外に出せんし、一人行動ができないのが厄介だ」
確かに危ないわな。
「領主に軍でも出してもらって、森の周囲を見張らせれば?」
「人族は信用できん」
「それはとても良いことだ。俺がお前らをどうにかしようと思ったら、そうやって、軍を出して、奇襲で一気に攻め落とすからな」
「…………住まいの地にエーデルタルトを選ばなかった先祖は賢かったな」
良かったな。
俺達はそのままさらに進んでいくと、開けた場所に出た。
そこは少しの広場がある程度であり、地上にはほとんど建物がない。
その代わり、木の上に住居と見られる建物が作れていた。
「ここか?」
「そうだ。ここが俺達の集落だな」
「家が木の上にあるんだな」
俺とマリアは絶対に住めんな……
「獣やお前の言う奇襲に備えている」
「ふーん……」
俺達は住居を見上げた。
確かに高いし、梯子がないとあそこまで行くのは一苦労だろう。
「火に弱そうね」
リーシャが見上げながら言う。
「熱や煙は上に行くからなー」
「いぶして出てきたところを弓で撃ち落とせば効率的かしら?」
それがいいかもなー……
「俺は人族が嫌いだ。だが、それとは関係なく、お前らのことを好きになれそうにないな」
それ、似たようなことを誰かにも言われたなー……
「アドバイスだよ、アドバイス。それより、梯子が見当たらないけど、どうやって登っているんだ?」
「普通に登る。人族は苦手だろうが、俺達はこれくらいなら子供でも登れるんだ。まあ、大半の者は魔法で飛んでいるがな」
登るよりかは魔法の早いか……
「ふーん、俺は訳あって、空を飛ぶこともあんな高いところに行くのも無理だ。ラウラの親を呼んできてくれ」
「安心しろ。地上の建物が客人用のものだ。こっちに来い」
ヴィリーはそう言って、近くの建物に歩いていく。
俺達はそれに続くと、ヴィリーが建物の扉のない出入口の前で立ち止まった。
「カサンドラ、少しいいか?」
ヴィリーが出入口に顔を突っ込みながら声をかける。
「ヴィリー? どうした? 今は客人の対応中と言っただろ」
中から女の声が聞こえてきた。
しかし、客?
俺達以外にも客がいるのか?
「それはわかっているが、至急、お前の耳に入れたいことがある」
「大事か?」
「ある意味。緊急性があるわけではないが、こちらも客を連れてきた」
「…………人族か」
どうやら外にいる俺達の魔力を感じ取ったらしい。
「ああ」
「人族は少しマズいな……すまん、ヒルダ殿、少し外してもいいか?」
「構わぬ」
んー?
ヒルダ? それにこの声は……
「なんだキツネのお姫様か」
俺がそう言うと、ヴィリーが驚いたように俺を見てくる。
「この忌々しい声は…………」
ヒルダの声が聞こえたと思ったら出入口からキツネ耳をした女が顔を出した。
そして、嫌そうな顔をする。
「よう、妙なところで会うな」
顔を出したキツネ耳の女は以前、アムール近くの森で会った獣人族の第2王女のヒルダだった。
「ロイド……」
何故にそんな嫌そうな顔をする?
「え? ロイド?」
「なんであいつがここにいるんだ……」
同じく聞いたことがある男女の声が聞こえてくると、犬耳のティーナとベンが顔を出した。
「よう、ベン。元気かー? あと、金貨10枚」
「久しぶりだな……」
「20枚だから! いや、そもそも私は値づけられてないし、金貨で呼ばないで!」
ベンとティーナも嫌そうな顔になった。
「久しぶりね、ティーナ」
「お久しぶりですー。いつぞやはどうもー」
リーシャとマリアもまた挨拶をする。
「あ、久しぶり……じゃない! なんであなた達がここにいるの!?」
それはこっちのセリフなんだがなー……
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