第145話 情報収集
俺はギルドから情報を仕入れることにした。
「この国と隣のエイミルはこれまでに本当に争いがなかったのか?」
「昔、一度だけあったと聞いている。きっかけは些細なことだったらしいが、お互いの勘違いで軍事行動に進み始めたことがあるんだよ」
「ほうほう。それはどうなったんだ?」
「その時は教国が間に入ってくれたらしい」
教国?
「あいつらって、そんなことまでするのか?」
「テールは教国の教えを無視するところがある。エイミルとジャスが争えば絶対にテールが出てくるだろ? 教国としてはテールが大きくなるのは嫌だからそうなる前に止めたって言われているな」
あまりよその国のことを言えないが、大国は教国を嫌っているところがある。
何もしないくせに考えを押し付けてくるし、教会は治外法権だとかほざいて税収を渋ることもあるからだ。
「今回は出てこないのか?」
「うーん、当然のごとく知っているし……」
「どうでもいいだろ。いいから教えろ」
「今のところはそういう動きはないな。とはいえ、俺らだって教国の動きを完全に把握しているわけではないから何とも言えん」
ギルドのネットワークでも掴んでいないのか。
「エイミルとこの国の王はバカか?」
「バカって……言葉には気を付けろよ」
「じゃあ、お前の評価を聞かせろ」
「評価って言われてもこの国の王は優しい王様だと思うぜ。エイミル王もだが、悪いことは聞かない」
それはつまりバカってことだな。
平和な時は良い王だが、乱れた時に対処できない王だ。
「王子のことは知っているか?」
「王子? コンラート王子か? なんでそんなことを聞くんだ?」
「コンラートは俺が通っていた学校の後輩だ。せっかく寄ったし、挨拶でもしておこうと思ったんだよ」
顔も覚えていないがな。
「あー、そういやエーデルタルトに留学してたんだっけ。あまり表には出ない王子だから知らんぞ」
王太子が表に出ない?
表にも出せないほどのバカなのかな?
「ちなみに、ジャス王は王都にいるのか?」
「王様か? いるんじゃねーの?」
明確に言わないということはいないっと。
自ら軍を率いて北だな。
「この町にはカジノがあるらしいな?」
「あるぜ。最近できたんだが、結構人気で他所からも人が来る」
「最近なのか?」
「ああ。王子の発案だな。この国って観光資源がないから作ってみたって感じだ」
バカ確定。
「ということは王家が主催か?」
「そうだな。王子が責任者だ」
「ふーん……場所は……ラウラが知っているか」
「絶対に知ってるぞ。何しろ、その婆さん、金貨300枚もスッたからな」
めっちゃ負けてる……
「おだまり!」
婆さんがヒステリックに怒った。
「バカだなー」
「私には見えるよ。あんたが大負けする姿がね!」
「大丈夫。俺には必勝法がある」
「そういうことを言う奴は絶対に負けるよ」
自分のことか?
「あー、お前ら、カジノに行くのか……言っておくが、魔法は禁止だぞ」
賊が忠告してくる。
「そりゃそうだろ。そんなもん使わんわ」
「そうか……まあ、頑張れ。カジノは夜にやってるから夜に行きな」
「ドレスコードはあるか?」
「ねーよ」
じゃあ、このままの格好でいいな。
「それとこの町で一番の宝石屋を教えてくれ」
「宝石? 長い間ここに座っているが、宝石屋を聞かれたのは初めてだわ」
まあ、冒険者が宝石屋に用があることってほとんどないだろうからな。
「貴重な初体験だ。感謝しろ。それでどこだ?」
「北の商業エリアにあるぞ。宝石の絵が描かれたわかりやすい看板があるから行ったらすぐにわかる」
「わかった。行ってみる。ラウラ、俺達は宝石屋に行くが、お前はどうする?」
ついてくるか?
「私は仕事だよ。あんたらだけで行っておいで」
「そうか。じゃあ、そうする。ついでにコンラートにでも会えたら会ってくるわ」
「王城はこの町の中央にあるよ。気を付けてな」
「はいはい。あ、賊。サハギンの魔石を買い取ってくれるか?」
売っておこう。
「賊って言うな。出せ」
俺はカバンから溜めていたサハギンの魔石を取り出す。
「多いなー……エイミルはこんなにサハギンが出るのか?」
「いや、これはギリスで得た物だ。大量のサハギンがいる島に行ったからな」
「なるほどねー。わかった。精算しよう」
賊は魔石の数を数えると、奥から袋に入った金貨を持ってくる。
中身を数えると、全部で金貨100枚程度だった。
「どうも。じゃあ、俺達はこれで」
俺達は用件が済んだのでギルドを出ると、宝石屋がある北に向かうことにした。
「リーシャ、追跡はあるか?」
俺は歩きながらリーシャに聞く。
「ないわね。王都に来たらあの男が接触してくるかと思ったけど、今のところはない」
「油断はするな。この町に潜んでいる可能性が高い」
「気を付けるべきは夜かしらね?」
「かもな。町中で戦闘になるかはわからんが」
衛兵が飛んでくるだろうしなー。
「まあ、コンラート王子に会えるかどうかで決まるわよね」
「そうだなー。というか、絶対に門前払いだろ。友人らしいイアンでも会えないと思うぞ」
この状況で他国の者に会うとは思えん。
「仕事だし、一応、行ってみましょう」
「そうだな。その前にカジノのために軍資金確保だ」
「ロイド、交渉は私がするわ。あなた、宝石のことなんかわからないでしょ」
全然、わかんない。
「じゃあ、任せる」
「あなたは不機嫌そうな顔をして、後ろで立っていればいいからね」
宝石店の店主にプレッシャーをかけるわけね。
貴族がよくやる常套手段だ。
「そうするわ」
「私はどうすればいいですか?」
マリアがリーシャに聞く。
「あなたはオロオロしながら私とロイドの間を行ったり来たりしなさい。緊張感が向こうに伝わるようにね」
「わかりました! あ、これ、どうぞ」
マリアがリーシャに扇子を渡す。
「良いものを持っているわね」
「アシュリー様の領地で買ったものです。あの、折らないでくださいね」
「善処するわ」
折りそう……
――――――――――――
書籍の第1巻が昨日発売となりましたが、購入してくださった方、ありがとうございます。
地方によってはまだかもしれませんが、是非ともご購入頂けると幸いです。
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