第7話 ピンクゴールドの髪

王族はこの様な事が起きない様にハニートラップに掛からない教育も施される。女性に溺れてしまえば、国は傾く。困るのは国民だ。


ここから、ゾロゾロと父親に首根っこを掴まれた阿呆達…ゴホン、子息達がやって来た。


デンドロビューム侯爵家ステファン様

アルストロメリア侯爵家オーヘン様

オンシジウム伯爵家エネン様

パフィオ公爵家エンバー様


「さて、皆様、困った事が起きました。成る可くして成った事ですが、リリー嬢のお腹には生命が宿っております。」


やっぱり。普通あれだけしていれば、勿論結果そうなるでしょう。


「しかし、誰の子かは解りません。影の報告通り。しかも此処にイグニスも関わっております。この先を考えた時に火種は残す事は出来ません。リリー嬢には堕胎して頂きたいと考えております。しかし、父親が解りませんので、王家だけでは行う事が出来ません。皆様のご意見をお聞かせ下さい。」


パフィオ公爵様が1人前に出て腰を折って、礼を取ると頭を上げて王妃殿下を真っ直ぐに見た。


「私達は王家の考えに従います。我々も誰の子か判らない状態では、私生児とも扱う事が出来ませんし、相続や継承の妨げになります。宜しくお願い致します。」


子息達は真っ青な顔色をしている。次男や三男だと言え、嫡男に後継が産まれなければ、継承権が出て来る。それを考えたら、堕胎しか選択肢が無くなる。

せめて1人に絞ってくれていたら。と私でも考えてしまう。

そうすれば、堕胎なんて言う選択肢は出て来なかった。


王妃殿下は、


「賛同ありがとう。」


と小さな声で応えたが、声が震えていたので、堪えていらっしゃるのだろう。


宿った生命に対して


簡単に行為に及んだ殿下や子息達に憤りを。

産まれて来る事を認めなかった事への謝罪を。

産まれて来る事を拒んでしまったご自身への憤りを。


部屋は何とも言えない空気に包まれた。


そしてノックされて入って来たのは、カトレア様、グラマト様、ファレノプシス様、ミディ様がお父様方にエスコートされて入って来た。


「今回の加害者、被害者共に全員集まりましたね。では、合同婚約破棄の手続きを致しましょう。」


王妃殿下の言葉を聞いて、子息達が一斉に顔を上げた。

彼らにとっては死活問題。

これだけ大々的に婚約破棄を宣言した後で、


実はハニートラップでした。僕達婚前交渉を皆んな仲良くして居ました。


等と公表した後では、婿入り先等上位貴族では絶対に望めない。

バカの札を首から掛けて歩く様なモノだから、王宮勤めは先ず無理。

今後だって重要案件を任せてたり、関わらせて口を滑らされたら一大事。ましてや卒業プロムでの断罪だから噂となり、他国へ流れた時には標的にされる。騎士にした所で、戦争時に捕虜となった時に一番にハニートラップを仕掛けられて口を滑らせる可能性が高いから。


下級貴族に婿入りして、使用人如く使われるか平民しか道がない。


と、するならば、彼らがどうするか…。


「カトレア、僕が君を捨てる訳ないだろう。婚約破棄なんかする気は毛頭無かったよ。僕達はずっと仲良くやって来たじゃないか。」


先程の陛下の様に全員が婚約者のドレス毎足にしがみついて言い訳を始めた。


見苦し過ぎる。


婚約者のエスコートもせずにリリー嬢の側から離れなかったのは誰なのか。

いよいよ耐えきれなくなったファレノプシス様の父君ドリテノプシス公爵が真っ赤な顔でファレノプシス様の足に縋るエネン様を蹴飛ばして離した。


「巫山戯るな!今日エスコートもせず、ドレスも贈らずに他の女の側で娘を睨み蔑み、学園内で勉強もせずに女に現を抜かす奴など要らん!此方にも選ぶ権利はある!貴様ら恥を知れ!」


近衛騎士団第二騎士団団長を怒らせる度胸だけは誉めてあげたい。


普通の人は絶対にやらないから。


公爵の一喝で子息達は全員震えながらサインをした。

慰謝料や賠償金も後で請求されるだろう。これだけの事をしたのだから。


「やっぱり悪役令嬢だ。」


ポツリとオーヘン様が呟くとそれを拾った王妃殿下がオーヘン様に発した。


「イグニスを始め、あなた方は『悪役令嬢』と言うけれど、此処はお芝居小屋ではないのよ。悪役とは、お芝居に登場す役割の事。貴方達お芝居に出ていたの?頭大丈夫?先ずはお医者様に罹る事をお勧めするわ。イグニスは絶対に罹りなさい!それから、ドレスの代金も貴方に請求しますからね!」


ご自身の息子も忘れてはいなかったらしい。


「さぁ、では、手続きも終わりましたから、この場は解散と致しましょう。皆様お疲れ様でした。」


首根っこをまた掴まれて先に子息達が退出して、後からカトレア様達が、王妃殿下に礼を取り退出した。


王妃殿下は陛下迄退出させると私の側に来て抱き寄せた。


「嫌な思いをさせてごめんね。」

「大丈夫だよ。お姉ちゃん。ゲームの知識が役に立って何よりでした。王太子も良いかな。って思っていた時期もあったけど、隠しキャラのマゼラン最推しになったから、私としては嬉しい結果です。やっぱりお姉ちゃんは凄いね。」


王妃殿下のピンクゴールドの柔らかい髪が頬に当たって擽ったかった。

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