第6話 黒幕捕まる
「だって、イグニス達は私に夢中になって、私の為に毎日愛を囁く存在なのよ!王妃様私、何か足りませんでしたか?王妃様が望むモノは差し上げたつもりです!それなのに!そ、そうだわイブセインは何処?イブセイン!」
リリー様はホールの中で叫びながら首を回してイブセイン様を探した。
「イブセイン殿下には、帰国頂きました。他所の国の第二王子を巻き込む事は出来ません。貴女の企みが解って直ぐにアクア国に連絡をして、昨夜には帰国されていますよ。それで…わたくしが何を欲してリリー嬢にお願いしたのかしら?わたくし、貴女とは今日初めてお会いしたと思うのだけど?」
確かに王妃殿下はリリー様が面会をお願いしても会う事はされなかった。それは、王妃殿下が認めたと勘違いをさせない為。実際は、リリー様の用件を侍女長が聴きに行き対応して居た。
だから時計も王妃殿下から直接ではなく、正確には侍女長から受け取って、使用方法等細かな部分はイグニス様に王妃殿下が指示を出していた。
リリー様は、漸く現実が理解出来たのか、青褪めている。
王妃殿下は扇子を動かして衛兵に指示を出して、リリー様は引き摺られて連れ出された。
「卒業生の皆様、ご来場になられたご家族の皆様、せっかくのプロムを愚息が混乱させて申し訳ありません。これからのお時間は、忘れて楽しんで下さい。」
王妃殿下が頭を下げると、拍手喝采が上がった。
王妃殿下の合図で私とお父様とイグニス様は場所を変える事となった。
⭐︎⭐︎⭐︎
王宮内の応接室に移動した頃にはイグニス様はかなり大人しくなっていた。
「さて、先ず陛下。イグニスの王太子教育を任された人物はどなたでしょうか?」
陛下は目を泳がせて、ぶつぶつと言い訳をしているが、声が小さ過ぎて、誰も拾えなかった。
「フレグランス公爵とわたくし達で決めたのは、ダマスクローズ侯爵でしたわよね?」
王妃殿下が目で扉に立っていた近衛騎士に合図をするとご高齢なのに色気を感じるイケオジのダマクスローズ侯爵が入って来て、直ぐに胸に手を当てて腰を折った。
「ダマクスローズ侯爵。楽にして下さい。お尋ねしますが、イグニスの王太子教育に携わられましたか?」
侯爵は顔を上げると、正面にいらっしゃる陛下を見つめて応えた。
「私は一度も依頼をされた事はございません。殿下の王太子教育は私の記憶ですと、ラ・レーヌ・ヴィクトリア夫人が教育係をされていらっしゃったと思いますが。」
陛下は床に視線を落とした。
「その方は、先日ヴィクトリア家から離縁された方ですわね。」
王妃殿下は扇子を広げて、口元を隠して鋭い視線を陛下に向けた。
「そうですな。国家転覆の重罪人として、昨日牢に捕えました。捕える前に、ヴィクトリア家に罪状を記した書類をお見せした所、ヴィクトリア家より離縁され、ヴィクトリア家を出た所で捕えました。」
「あら、まぁ、どんな事をされたのかしら?」
王妃殿下は、首を傾げながら質問した。
「夫の使いだと王宮へ来て陛下を誑かし、イグニス殿下の教育係を乗っ取り、殿下には王太子教育を施さなかった事です。」
「成程。陛下は政略結婚相手のわたくしがお嫌いだったのかしら?」
陛下は勢いよく頭を上げて王妃殿下のドレスにしがみいて首を横にブンブンと振った。
「ち、違う。私はずっと君一筋だから!」
その言葉に、王妃殿下の視線はブリザード光線を出すのではないだろうか?と思う程に冷気を纏った。
「浮気をした挙句に、息子をダメ人間にするなんて。バカなの?貴方自身が帝王学がしっかりと身に着いて居ない阿呆なの?今まで何を学んで来たの?」
陛下はドレスの裾を掴みながら、
「ごめんなさい。ごめんなさい。お願いだから。捨てないで。」
と何度も呟いている。先程の廃嫡宣言をした威厳は微塵も無い。
王妃殿下は、大きな溜息を吐いてダマクスローズ侯爵と向かい合い扇子を閉じて横にして両手で持つと腰を折って頭を下げた。
「ダマクスローズ侯爵。申し訳ありませんがマゼランと一緒に陛下も再教育をお願い致します。」
陛下も再教育かぁ。と遠い目をしながら王妃殿下の裾にまだしがみつく陛下をじっと見つめた。
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