第4話 証人
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「母上はリリーを嫁と認めて可愛がって下さっているとリリーから聞いております。」
王妃殿下は首を横に傾げて不思議そうにイグニス様に尋ねた。
「何故?可笑しな事を言うのね。アンセリウム嬢には王家から嫁にと請うたのに、何故頑張っているアンセリウム嬢をわたくしが粗末に扱わなければならないの?あり得ないわ。」
イグニス様は困惑し始めて、王妃殿下とリリー様を首を振りながら交互に見た。リリー様はイグニス様の袖を掴んで上目遣いに見る。
その姿は可憐で男性からすれば庇護欲を駆り立てられるのだろう。
王妃殿下は、冷たい視線をイグニス様に向けて淡々と言葉を発した。
「イグニス。もし、貴方が今、リリー嬢を自分が守ってあげなくちゃ。なんてバカな事を考えるているのならば母は貴方を軽蔑しますよ。社交界で生きて来ている貴族女性が男性に守られなければ生きていけない、か弱き存在な訳ないでしょう。あざとく生きてこそ、の世界ですよ。大体リリー嬢の周りに居る男性達は何ですか?揃いも揃って婚約破棄?リリー嬢の言葉だけを信じて?」
イグニス様の顔色は徐々に怒りの赤から青へと変わり青から白へ今は土色に変化している。
「し、しかし、母上が仰った様に証拠をノートに書きました。時間も正確にと仰ってリリーにと、腕時計もプレゼントして下さったではありませんか。」
「違いますよ。わたくしは、正確な日付けと時間を書いて尚且つ、裏付けも取りなさい。と言いましたよ。時計を貸してあげたのは、リリー嬢が持っている物や貴方がたが渡した時計なら、時間がズレていた等と始まると困るからです。だから毎日時間のズレが無いか確認を取らせたでしょう。」
「それは、何かあった時に困るから確認は毎日する様にと母上が…。」
「だから、イグニスの時計のズレも無い様に毎日執事が確認して居たでしょう。イグニスの時計も、リリー嬢の時計も時間のズレは無い筈よね。ほら、今何かあった状況でしょう?あっ、時計は下賜ではないから、この後返して下さいな。」
極上の笑みを浮べながら黒いレースで作られた一点物の扇子を広げて口元を隠された。
イグニス様は見て解る様に狼狽えている。多分王妃殿下は、リリー様の味方だと思っていたのだろう。
「母上、あ、あの、証人とは…。」
「あぁ、出て来て頂戴。」
王妃殿下が扇子をパチンと鳴らして畳むと黒い影が上から7人降って来た。
「わたくしと陛下の影です。先程婚約破棄を言い渡された令嬢方に1人ずつ、アンセリウムに1人、リリー嬢に1人、イグニスに1人付けて居ました。公平にする為にイグニスとリリー嬢には陛下の影を付けましたよ。さぁ、何から聞きたい?あぁ、せっかくですものリリー嬢の日常から報告させましょう。リリー嬢担当の者。」
「ま、待って下さい。ご、誤解ですわ。イグニスと、アンセリウム様は、そ、そう、元々合わなかったのです。そうですよね。ねっ、イグニス?」
王妃殿下は目を細めて、口元にまた扇子を広げた。
「誤解?リリー嬢の為に、リリー嬢が彼女達から迫害を受けリリー嬢の為に婚約破棄をしようとしているのに、誤解、ですか?」
王妃殿下は一言一言を区切りながら解りやすくはっきりとした口調で述べた。リリー様の目が泳いでいる。影からこの場で報告をされたら何かしら困る事になるのだろう。
「報告を。」
冷たく発した王妃殿下の声がホールに響き渡る。静まり返るホールの中で、1度咳払いの声がした後男性の声がホールに響く
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