第2話 企み
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私の父親はフローラル王国で宰相を務めているサンダース・フレグランス。先先代の国王陛下の弟が爵位を貰いフレグランス公爵となった。現国王陛下であるミラダス・フローラル様と王妃のカサブランカ・フローラル様には2人のお子様がいらっしゃる。
第一王子であられるイグニス・フローラル様と第二王子であられるマゼラン・フローラル様。
私アンセリウム・フレグランスは、10歳の時に王家から請われて第一王子のイグニス様と婚約をした。婚約と同時にイグニス様は立太子されて王太子となられた。
普通とはまた異なる妃教育があるが、私の妃教育は王妃殿下が
「王太子妃教育は、間違いがあっては困るので、わたくし自ら致します。」
とかって出て下さった。
妃教育は本当に些細な間違いも許されず、初めの頃は王宮庭園内の薔薇園で声を殺して泣いていた。
偶に廊下ですれ違うイグニス様は笑顔で
「頑張って。」
と声を掛けてくれて、努力の原動力になってくれた。彼が私の為に恥をかかない様に頑張らないと。
人と会う時には笑顔を心がけて本心は決して晒す事なく、学園に上がる頃には
「素晴らしい未来の王太子妃だ。」
と言われる様になっていた。黒髪にアメジストの瞳は、微笑みを絶やしてしまえば、キツイ女性にしか見えない。だから王妃殿下から
「貴女は笑顔を絶やしてはいけない。貴女の素晴らしさを殺さない様に常に笑顔でいなさい。」
と言われ守っていた。周りとのコミュニケーションに気を配り過ぎて、イグニス様との交流は、初めの頃は1週間に1度あったものが、段々と減っていき、学園に上がった頃は2ヶ月に1度が、卒業の今3年生では1度も無くなっていた。
その間に色々な人から伯爵家の私生児であるリリー・フラワーが、王太子殿下と裏庭で2人きりで毎日会っている。
と、忠告めいた事を言って来る様になった。
私自身嘘だと思いながら、聞いた場所へ向かってみると、2人は抱き合った状態でキスをしていた。
淑女は謹み深く、公の場所では、互いを尊重し合い、淫らな行為は謹む事。
私が王妃殿下から学んだ絶対に忘れてはならない事項だった。当然イグニス様も学んでいる筈。
ただ、
裏庭で人は見えない。だから公の場ではない。
と言う言い訳も出来てしまう。
私は2人に気が付かれない様に蹌踉めく足を叱咤しながらその場を後にした。
イグニス様は彼女を側室になさるのかしら?でも、それでは婚約時の約束が反故とされてしまう。
私とイグニス様との婚約は色々と条件が付けられていた。
(イグニス様は忘れてしまったのだろうか。)
そんな事を考えていたら、卒業式前日となっていた。卒業式後にはプロムがある。舞踏会や夜会等はイグニス様と衣装を合わせる為にいつもなら、王室からイグニス様名義でドレスやアクセサリーが送られて来る。今回は送られて来て居ない。せめてイグニス様と合わせる為に彼を探していて、空き部屋で睦合う2人を見つけてしまった。
私は、目を疑った。流石に未婚の2人が何をしているのか。妃教育で知ってしまった私は理解してしまった。
「ドレスは受け取ったか?」
「はい。明日、いよいよですね。イグニス。私信じているから。」
「あぁ。大丈夫だ。母上も味方だ。お前に嫌がらせをしたアンセリウムを筆頭にあ奴らを懲らしめてやる。アイツらも準備は出来たと言っていた。安心しろ。」
「嬉しい。イグニス。イブセインはどうするの?」
「卒業プロムには証人として出ると言っていた。」
「頼りになるわね。」
「余り他の奴らとは仲良くするなよ。こういう行為は特にだ。解っているよな?」
「こんな事するのはイグニスだけよ。」
お互いを引き寄せ合い行為に耽る2人に吐き気を覚えながらその場を後にした。そして別の部屋へと向かった。
ドアを開けて入ると4人の女性達が待っていた。
私は口元を抑えていたハンカチを下ろして、彼女達に
「決行は明日のプロムだそうです。皆様今迄のお返しを致しましょう。」
と告げた。理解した彼女達は頷い持っていたノートを取り出して、私も含めて最終打ち合わせを行った。
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