私の断罪式で、主人公が変わりました
朝霞
第1話 此処は何処?
小さな弁護士事務所に採用されて3年。仕事の殆どは離婚裁判。一番多いのは相手側の浮気。浮気調査を提携先の探偵事務所に依頼をして結果は1週間もあれば充分過ぎる程に出て来る。
今抱えている案件も奥様が携帯課金ゲームで逆ハーレムを作るものにハマりそこのオフ会で知り合った複数の男性と恋に落ちたと宣った結果、誰の子か解らない。
だからご主人は離婚したいのに誰の子か解らないからご主人の子としたい。
ご主人とは1年以上子作りをしていないと言うのに。
日本語が通じないのは本当に疲れる。駅から自宅迄の道中にあるコンビニに寄って、缶ビールを1本購入した。
最近疲れ過ぎてまともに眠れていない。診察を受けて睡眠導入剤を処方して欲しくても、時間がない。
ビールのアルコールに期待をして、玄関からリビングへと入った。
リビングでは、妹がゲームをしていた。
「やったぁ。王太子ゲット!後は公爵の息子と隠しキャラでコンプだぁー。」
私は、妹が座るソファの下に初任給で購入したブランドバッグを置いて、横に座って画面を見た。
キラキラした、イケメンキャラが笑顔で此方を見ている。
「何これ。」
「今人気のゲームフローラル国の恋人達。5人のイケメン達を次々に攻略して好きにさせていくゲーム。これ、CVにメチャお金掛けていて、今大人気の声優ばっかり起用していて、コンプすると1人1人から甘い愛の囁きを聴く事が出来るんだよ。しかも、ちゃんと登録した名前で。だから皆んな自分の名前でプレイするの。もう推しからのメッセージなんてサイコーでしょ。」
「逆ハーレムってやつ?」
「あー。そうだね。」
「俺が護ってやらなきゃとか言うあざとい女擁護する感じか。」
「それを言ったら身も蓋もないじゃん。ゲームのヒロインなんて皆んなそんなモンでしょう。」
私は缶ビールを取り出してプルタブを起こし蓋を開けて口内に流し込んだ。
「現実にこんな女いたらイタイよね。私は大っ嫌い。」
「また、離婚裁判だったの?そんなんばっかで結婚しない。とか言い出さないでよ。」
「何とも言えないね。さてと、私部屋に行くからね。あんたも早く寝なさいよ。」
「はーい。お姉ちゃん最近疲れてるっぽいからゆっくり休んでね。」
缶ビールを左手に持ち、右肩にバッグを掛けて、妹に背を向けて歩きながら右手を挙げて返事をした。
部屋に入り、机に缶ビールを置いて、椅子に座って、バッグから資料を出して読み始める。疲れのせいか、目が文字を上手く追えない。資料を机に置いて、缶ビールをグビグビと飲み下した。
少しすると、心臓に激痛が走り、手に持っていたビールが落ちて音を立てて溢れ出す。
心臓の激痛に耐えきれず、目を閉じて床に転がった。
眩しい光に目を擦りながら開くと見た事もない豪奢な家具がぼんやりと映る。
「ここは、何処?」
窓の側に立つ人影が目に入る。髪をシニヨンにしたロングスカートの女性。誰だろう。
「おはようございます。お嬢様。早くベッドから降りてくださいませ。今日は忙しいですよ。なんて言っても王太子様とのご婚約日ですから。」
女性に促されて、ドレッサーの前に座った。ブロンドヘアが光に当たるとピンク色に見える。目がパッチリとしていて愛らしい唇。誰これ。
「さぁ、フローラル王国の一番美少女を見せつける日ですよ。このピンクブロンドの髪は、お嬢様の特徴ですから。特にキレイに結いましょうね。」
何処かで聞いた事がある言葉を髪を梳かされながら耳にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます