三日後…… 電撃復活ライモnTV!!
ハロウィンの特別企画以降、ライモンTVは更新しなくなった。ライモンを知らない人間であれば些細なことだが、彼女のチャンネルの登録者は驚愕している。あの恐怖的な生配信は途中で停止、それから三日も更新がない。三年間毎日二、三本欠かさず投稿を続けてきたライモンだ。何かが起きたに違いないと騒然している。
あれは絶対放送事故!?
骨が人骨だった説
スタッフとの仲間割れ説濃厚。
ただの機材トラブルでは……
もしかして企画なのでは? 新企画準備とか
ていうかただの話題作りだろ、底辺なんだから
↑と底辺が申しております。 ザコ乙
多分警察沙汰ではないかと ヒント 不法侵入
BANはありえる話だな あれ普通に犯罪
他多数の書き込みがネット界隈を騒がせていた。そんな折、一人の配信者の動画が話題になった。炎の方で。
彼女は残響院サラという名前で活動している、迷惑系の配信者で世を騒がせた有名人や立ち入り禁止の場所に突撃し、自身の動画を炎上させる厄介なタイプだ。
現在は逮捕されているサラだが、最後の動画では例の遊園地を訪れており、非常線が貼られており、政府と思われるスーツ姿の人間が複数人、調査と思わしき作業をしているところが撮影されていた。それらの動画が出回ると、世間を騒がせた! あの場所には何かがあると。
そして、翌日ライモンTVが更新された、およそ三日ぶりに。11月3日に配信された動画の視聴者数はわずか一時間で20万人を超えた。そして登録者も。
動画の最初は砂嵐が吹き荒れ、はっきりとした音声と映像が確認できない。
「……………… 々々……… rrrrrrrrrrrrrrr………も、………… に……… い………… あ………… い………… し…………々………… せて」
この辺くらいから、音声が聞こえ始める、そして映像も明るくなり始める。
「……………… うぅ、頭が痛い。もう帰ろうかな…… 」
いつもテンションが高く、元気なライモンにしては考えられないほど落ち込んでいる。周りは薄暗い、地下道のような場所が映し出されている。崩れかけた煉瓦の壁、紫色の蔦が這っているためこの世のものとは思えない風景、それがさらに異様さを醸し出している。
ライモンたん大丈夫そう!?
帰っていいのよ 心配!
演技うますぎww
場所怖っ!? 緊急速報!?ライモン生存
声聞けて良かった
「………… あれ、私…… 何を…… して…………
ヤッバ!! 配信中じゃん。あ、みんなーごめんね!ちょっと休憩してましたー、ハロウィンはこれからだからね! えっーと、決めた。これからアタシがこの地下道、なしなし、ダンジョンを攻略するところを生配信しまーす!! ダンジョンの生配信は世界初じゃねってことで! リスナーのみんな遠慮なくバズらせちゃって!! 」
声色はいつものライモンだ、だが目は異様に虚で見たことがない色をしていた。明らかに異常、でも彼女は配信し続ける普段通りに。
「んで、さっきここの管理人? さんに言われたんだけど、やっぱりダンジョン攻略には目的があった方がいいらしくてね、確かにアタシもそおもうわけよ。ほら、なんかお宝とか財宝とかテンションアゲアゲな訳! でねこの奥になんか大っきい宝石があるんですって…… 見たい、知りたい、触りたーいっというわけで、そこをダンジョンのゴールにして、そこまで行ったら帰ることになりました。いやぁrrrこういうのってホントにあるんだねー」
ライモンは振り返ることなく、ダンジョンを進む、駒が進まされているように。
勇気ありすぎ
帰りなよホントに!! 心配です。
崩落とかは大丈夫なのかね
宝石気になりまする
クオリティ高っ!
つくりものなのか……?
自演
「なんか、装備とかないのかなー 武器欲しい!
………… 待ってあれ何? おぉぉっ、アレって剣。ちょっと拾っちゃいまーす。よいしょっとお、意外と軽っ!てか見てこれカッコよくない、イケてる、これもう天空のライモンっしょ、約束された勝利じゃん、見て見てみて!」
彼女はダンジョンの隅に立て掛けてある、黒い剣を拾うと右手で握りしめた、剣自体がその手に絡みつくように。
ちょ、それ呪…………
確かに格好いいけど
エクス…………
ダークソウ?
「ちょっ…… 待って何アレ? あの赤のゼリーの塊、苺ゼリー? …….わかった…… あれだっけ、えっとスライムそうそれ! うわっホントにいるん、だ気持ち悪いな意外と、跳ねてるけどさ、ほとんど生肉じゃん…… ねぇアレってさ倒したら……レベルアップするかな? ちょっとこの剣で切ってみようか」
彼女は剣を、赤い塊めがけて振り下ろした。スライムは弾け散った。黒い剣の鍔に少し光が灯った。
……うわ、スライムいた!!
倒しちゃ すごい!!
スライム赤なんだ
水色もいるかな?
可哀想に生き物を笑顔で殺すとかクズ
↑スライムって生き物ちゃうで
つまんないこと言うやつがいる
「てれれってってってー、ライモンレベルアップ!! なんか強くなってきた気がする。このままどんどん進みまーす。また、スライムちゃんだ…… くらえーうりゃ、はっはーまたレベルアップ!!強くなってきたーー。
…… さて先に進もう。もうスライムは飽きちゃった、なんか他のモンスターいないかな? 10体くらい倒したからもういいかな、ドラゴンとかいないこの剣あれば、なんとかなりそう!!あれ、アタシって強いの?イエーイ、一回休憩しまーす、ちょっと待っててねみんな!」
今回の成果 黒い剣(rrrrrrrrrrrr)
スライム14体
ここは何処—— 私は何をやってるの、配信は終わったの? いや、肩と顔のカメラとマイクの電源はついている。だからまだ途中のはず…… ドアを開けて地下への階段を降りて、そこまでしか記憶がない。激しい頭痛に襲われたあと…… あとはどうしたんだろう、私は。もう、帰ろうこれじゃあ、命に関わる。さっきの声は…… わからない、わからない何も。でも、ここまでの体験は配信してるわけだ。だったらもう十分撮れてるでしょ。早く出たいここから…… この右手の剣は…… 離れない、手から。なんで、なんで、なんで外れないの。ベトベトしてるこの赤いのはまさか…… 私の。外さないと
この、このっ、くっ、うぅぅまた声が頭が、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いよ、帰りたい、帰りたい、帰りたい、かえ……か………… ま ……許し…… 。
「ハァーイ、みんなおっ待たせー!!ダンジョン攻略続けまーす。楽しいね、楽しい、た、楽しいなぁ、気に入ってきたな、気に入って、きた本当に!! 絶対人気出るでしょこの動画、さぁ、奥へ向かって出発っ!! 」
表情と声色が一致していない、気味が悪い動画だ。
『さぁ、来い、』
頭の中の声に従って先に進んでいるらしい、本人の意志とは無関係に。奥で待ち構えるもののために。
そして道中立ちすくんでいる、スライムを斬り裂き、踏みつぶしながら。
「んー、スライムだけか、まぁいいか、スライムも世界初だし。おっとそろそろかなっ?なんか部屋の様子が変わってきたみたいだよーー、いいねぇダンジョンはこうじゃなくちゃ。さぁて、お邪魔しまーす、ゴーゴーゴー」
いよいよボス戦!?
なんかやっぱり様子おかしい
体調悪そう 目が!!
何を見せられてるんだ
死なないよね……
一際、広い部屋…… 地下にしては豪勢で所々に煌びやかな金文字が浮き上がっている。先程までの蝕まれた地下道から神が祀られるような黒い神殿に行き着いたようだ。黒い甲冑を身につけ、黒い剣を右手に持った彫像や黒い水晶玉が部屋中に配置されている。そして部屋の奥には水槽があり中に、大きな石がある。赤く光を発しているその宝石は水の中で揺ら揺らと妖しく輝く。
「おぉ、きましたこれはスバラシー。ざぁーて、宝石は…… あった、あったよみんな。やった、これでかえ…… これで……? これでダンジョンクリア!! いた…… 楽しかった! えっ?宝石に触れないとダメ? 持って帰っていいのかな? 大金持ちになれそー!! えっーと、これねじゃぁ、失礼しまーす。てかこの水大丈夫なやて?」
彼女は左手で水槽の中に手を入れると、赤い宝石を掴んだ。鼓動のように放たれる光は一層強くなっていく。
「こ、これなんか、動いて……………… もう、いや帰らし…… おもしろ …………離して、私をはな………… アタシに飾っちゃおうかな!!アタシに似合………… rrrrrrrrrrrrrrrr……々…… =¥%#$€%………これでいい、これでいいぞ! お前は終わりだと…… rrrr…… 消え…… 」
彼女の心臓部に赤い光が走ると、そのを中心として彼女の体は渦を巻くように、飲み込まれていく、そして完全に姿が見えなくなると赤い宝石が水槽の中に戻った。
………………ヤバ
………CG、だよね
そこで動画は終わった、ぶつ切りにされたように。この不可解な映像以降、当局と協力してライモン本名を内藤久美を捜索したが、彼女の行方はわからない。また、例の遊園地を入念に調べたが、地下階段は存在せず、空間や通路などは発見されていない。あの配信者の仕組んだ悪戯だと言うものもいるが、説明のつかないこともある。
内藤久美がまだ存在することを祈りたいが、もし配信動画内容を事実と捉えるならば、彼女の生存の確率は極めて低い。
もし仮に生存していても異世界にいる可能性があるだろう。
高水
(短編)世界で初めてダンジョン配信したらバズるのは当たり前 湯ヶ崎 @yugasakiX
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