第10ゲーム 攻略ラビリンス②
「白の次は黒、ですか。目がチカチカして気持ち悪いですね」
銀葉は、本当にこの先に進んでもいいのか、疑問を持ちながら白と黒の部屋を見比べた
そりゃぁそんなことをしていたらそうなる。
誉は軽く彼女の頭を叩き、先へと足を踏み入れた
「ただ、この通路が正解だと言う確信はない。またこの通路も色が違うのか、それともそれとは別なのか…」
「でも、迷ってる時間なんてありませんよ、師匠。いざとなったら壊しますので」
「さっきもそうですけど、ブランカお姉さんは何か格闘技でもしていたんですか?」
「していません。ただ、をういうプロ…」
「あー!先生!先生!この通路全部色が違いますよ!本当に薄らですが!」
銀葉が急に叫び出した。
なんなら完全に今の話を遮ってきて。
だが今回は誉でもその話に乗ってきた
「…4色だね。他の壁も同じ色だけど…色がバラバラだ。どれかが正解なんだろう…だがノーヒントか。さっきみたいに僕みたいな絵描きだからこそってのは無理だろうね…何かヒントがあればいいんだけど…」
それらしきものはどこにもない。
まぁ、これはゲームなんだし、そう言うわけにもいかないだろう。
先ほどのように言葉にヒントはない。
じゃぁ何がヒントなんだろうか…
「…誉お兄さん、これってそれぞれなんて色?」
急にそんなことをロレットが聞いてきた。
何かわかるのだろうか?誉はもう一度壁を見て、それぞれの色を答え始めた
「ちょうどいい。この四つの壁。左から、ランプブラック、濡れ羽色、漆黒、暗黒色だ。微妙に違うんだけど、わかる?」
「うーん、分かんない。私頭悪いから…ゲームでしか物事考えられないんですよね…」
「…ならちょうどいいじゃないか。これはゲームなんだ。この色達の法則性と答えを見抜くだけの簡単なゲーム…そう考えてみなよ」
「そっか…なら…」
そう呟いて、ロレットは動き出した
漆黒、ランプブラック、濡れ羽、暗黒色…いろんなパターンのその並び順をボソボソと呟きながら言う。
多分、周りが見えていない。完全に集中し切っている。この状況はまるで…
「絵の構図が完成した時の師匠みたいですね」
「それはなんだい。全く話を聞かなくなると言う嫌味かい?」
「いえ。凄い集中力だなと感心しているだけです」
「そうですね!話を聞かなくなってご飯も食べなくなるところは困ったものですけどねー」
「…やっぱり嫌味じゃないか」
そりゃぁ嫌味も出てくるだろう。
ゲームをしていて言うことを聞かない子供のように、一度ハマり出してそう簡単に沼から出られないように、誉は絵の構造が決まったり、インスピレーションが湧いたりすると全く話を聞かなくなる。納得がいくまで食事もしない。好きな甘味も取らない。その場から一切出ない。もし邪魔をしようものなら…その時は…
「…まぁ、あんなことがあったんです。邪魔しないように、としか言いようがありませんね」
「そうですね。あんなことをしたんですから…私も銀葉さんから聞いて驚きました」
「そんなに強調しないでくれ。あれは本当に後悔してるんだから…」
それは数年前の出来事。
ブランカとまだ出会っていない時の話だ。
ストゥービドという国があった。
その国はまぁ治安が悪く、言ってしまえば荒くれ者の街。国の形がボウルのようだからと言って人々はその街を『荒くれ者のサラダ』なんて言ったりする。
いつの頃だっただろうか誉はそこで絵を描いた。描きたい絵があったから。勿論それもオークションで値切られたのだが…まぁ、終始酷いもので、数人の荒くれどもが絵を描いている最中の誉にちょっかいを出したのだ。それも一番最悪な邪魔の仕方。キャンバスに穴を開けたのだ。それに完全にキレてしまい誉は…その街ごと錬金術で変形させてしまったのだ。まるで…荒くれ者どもが注がれたサラダのボウルが急にひっくり返ったように、そこに山ができてしまったのだ。幸いにも死者は出なかったものの、銀葉がそれを知った時、顔を青ざめさせて失神したと影冥は語った。その後、国ごと消滅したため、誉が絵を描くときは誰にも邪魔されないように銀葉もブランカも務めている。
あれは本当に嫌な事件だったと、銀葉は涙を流しながら笑った。
「だから、後悔してるし反省もしてるさ。はぁ、もうそれを掘り起こさないでくれ」
どうやらそれには誉も参っているようだ。
すると
「分かった…分かったよ!誉お兄さん!」
ぱぁぁっと明るい笑顔になったロレットが誉に近づいてきた。
その頭を撫でながら、誉は聞いた
「ほぉ?じゃぁ、まずは君の考え通りに進んでいこう。説明はその後だ。もう時間もなさそうだしね。馬鹿みたいに曲がりくねったこの迷路、ぱっぱと抜け出そうか」
「うん!じゃぁ、ついてきてくださいね!」
そう言って走り出すロレットの背中を追いかけて、誉達もその足を前に踏み込んで走り出した
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