第6ゲーム 夜更かしの始まり

「誉お兄さん!ブランカお姉さん!銀葉お姉さん!私とゲームをしよ!」


 コンコンコンと扉がなり、誰かと思ったらロレットが部屋に訪れた。

 キラキラと目を輝かせてニコニコ笑いながら。


「…?誉お兄さんどうしたんですか?そんな部屋の隅っこで壁に向かって…」

「あぁ…放っておいてあげて下さい。アレはしょうがないです」

「??」


 前回、『ルフラン』のオーナーであるネックロースとオセロで対決し、勝ったのに結局3人で泊まることになり、1人男という罪悪感と言葉勝負で勝てなかった敗北感で誉は部屋の隅でブツブツと何か独り言を話しながら鉛筆を削っていた。それも延々と。さっきまで新品だった鉛筆がいつに何か小さくなっている。それをもうすでに5回はやっていた。


「あらら…おじさんも酷いなぁ。そりゃぁ誉お兄さんからすれば困った話だもん。さ!それより一緒にゲームしようよ!色々持ってきたんだ!デジタルタイプじゃ人数制限されてるのが多いから、アナログタイプのゲームをいっぱい持ってきたよ!どうする?何からやる?」


 そう言って彼女は腰にぶら下げていた小さいサイズのマジックバックから雪崩の如くボードゲームやカードゲームなどを出した。


「わぁ!本当にいっぱい持ってきましたね。先生があんな調子ですし、今日はこのままホテルでゲームでもしましょうか」

「そうですね。アナログなら銀葉さんが触れても問題ないですし…」

「あっ、あっはははは…」

「…そう言えば、ロリットさんは?」


 そう言われるとロレットの片割れがいない。

 ロリットは3人を部屋に案内してロレットに会いにいくと言って出て行った。

 今頃合流しているはずだが…現実はロレット1人でここに来ていた。


「うーん?すれ違いかなぁ…でもそんなこと…ある」

「あるんだぁ…」

「うん、あるよ。お姉さん達はエレベーターでここまで来たでしょ?このホテルにはエレベーターがアレしかないの。だからすれ違いなんておこらないーって思うんだけど…私とならすれ違うことはあるの」

「…魔術関連」


 ブランカがそういうとそれに頷いた。

 この世界には魔術がある。

 炎、水、風、光、闇の五属性があり、1人一つは必ず持ってきて生まれる。

 例えばブランカは光属性が主属性で風属性が副属性。と言ったように主属性と副属性というパターンがあり、また、銀葉のような炎属性だけという単体属性のパターンもある。殆どが単体属性で、何かきっかけがあり副属性が生まれることもある。

 だが残念ながらとてもレアケースが存在するということを銀葉は誉に出会って知る。

 瑞花誉という人物は本当に謎大きい人物だ。

 誉は、魔力を持たない。世界で唯一と言っても過言ではない存在である。

 実際に魔術を使ってみろと言っても全く出てこない。


 それをロレットに伝えてみると、望んでいた反応通り、目を丸くした。


「本当にそんな人がいるんだね…世界は広いなぁ。あ、えっと、私は風属性単体なんだけど、何年か前に出会った人が『風霊シルフの魔女』で、ちょっとの間魔術を教えてもらってたの。それで会得したのが瞬間移動なの」

「では、それを使ってここに来たため、ロリットさんとは出会わなかったというわけですか」

「そういうこと!」


 それなら納得がいった。

 彼女は本当に『風霊シルフの魔女』に出会ったのかは定かではないが、その魔女は有名だからだ。


『5大魔女』と呼ばれる魔女がいる。

 彼女らは単体属性でありながらそれを極めた人物でどの国でも彼女らの名は通用するほど。魔女や魔術師には二つ名があり、その中でも

炎霊サラマンダーの魔女』

水霊ウンディーネの魔女』

風霊シルフの魔女』

光霊ウィルの魔女』

闇霊シェイドの魔女』

と呼ばれる人物たちはその属性を極めた魔女たちで、多くの魔法使いから憧れの目線を向けられている。


「『風霊シルフの魔女』ですか…確か蛙生さんが「アイツは変人や」って言ってましたよ」

「そうなの?んー、確かに不思議な人だったけど…まぁそんなこといいよ!早くゲームしましょう!手始めにトランプ系からやりますか?いろんなお話も聞きたいし!」

「良いですよ。試しにババ抜きからやりましょうか」

「あれ?それってブランカさん強いんじゃぁ…」

「何か言いましたか?」

「あ…大丈夫です…始めましょうか!」

「うんうん!ゲームはみんなで楽しく!ね!」


 そうやって笑顔でロレットは言った。

 そしてこれから彼女の生き生きとしたペースと、ブランカの学習し続ける才能が、銀葉の頭をパンクさせ、ゲームは真夜中まで続いていくのを、3人はまだ知らなかったのでした。



 誉はそのまま動かず、珍しく糖分も取らないで、気づいたら眠りについていたのでした。

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